2010年 09月 01日
《Vinnaithaandi Varuvaayaa》 (2010) |
タミル映画
監督:ゴウタム・メノン Gautam Menon. 出演:シランバラサン(シンブー) Silambarasan (Simbhu)、トリシャー Trisha
トレイラー
ストーリー(インターミッションまで)
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カルティック(シランバラサン)は大学でエンジニアリングを学んだものの、映画監督になる夢を諦めきれず、知り合いの紹介によりある映画監督のもとでアシスタント・ディレクターとして働き始める。カルティックが家族と引っ越した家の2階には大家が住むが、カルティックはその娘ジェニー(トリシャー)に一目惚れ。しかし、カルティックの家族はヒンドゥー教徒、ジェニーの家族はケーララのクリスチャン、ジェニーの両親がカルティックを受け入れる望みはなかった。ジェニーもカルティックのことを好きになるが、両親に逆らってまでカルティックと結婚するつもりはないという。密かに遭い続けていたカルティックとジェニーだが、それを知ったジェニーの両親は急いで同じクリスチャンの男性との結婚話を進めてしまう。
結婚式の日が迫り、カルティックは何のあてもなくケーララに向かう。式場となる教会。カルティックの目の前にはウェディングドレス姿のジェニー、そして愛の誓いの場面に!
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「私のために空を越えて来る?」という意味のタイトル、ケーララ・バックウォーターの美しい風景、 A. R. ラフマーンの音楽とくれば、誰もが当然ロマンチックなラブストーリーを予想するでしょう。《Vinnaithaandi Varuvaayaa》、ロマンチックであることには間違いないのですが、これまでのインド映画のラブストーリーから展開を予想してかかると、ことごとく裏切られます。
主人公カルティックの性格は内向的。いつも自信たっぷりのヒーロー像とはだいぶ違います。ジェニーのほうも美しいけれど、どこか影のある雰囲気。いつものゴージャスなヒロインとも、ただの可愛い女の子役とも違います。
あちらこちらで、典型的なラブストーリーの決まりごとが崩されていきます。
あまり映画は好きではないというジェニーのほうから映画に誘ってくれたにもかかわらず、映画に夢中で話を聞いていないカルティック。まだまだ微妙な二人の関係ですが、デートの帰りがけ、「いつでも君を抱きたいと思ってる」 ふつう、そんなこと言う?
当然、ジェシーは「I Hate You.」
ヒロインの父親に嫌われているヒーローの定番として、まずは母や姉など家族に気に入られるというのがありますが、カルティックはジェニーの兄をぶん殴ってしまいます。
しかも、「世界中が反対しても君と結婚する」とはならず、とうとう結婚式の日。カルティックはジェニーの親類に袋叩きにされるのを覚悟してケーララの教会に向かいます。ウェディングドレス姿で愛の誓いの直前のジェニー、当然予想はハリウッド映画『卒業』の一場面ですが、
ジェニー「私、結婚しません」
逆にカルティックのほうが驚いてしまいます。
こんな調子で後半どうなるんでしょうか。
A. R. ラフマーンのメロディをバックに音楽シーンは格別に美しいです。
「Hosanna」 トリシャーのサリーの色が不思議とヨーロッパの街に似合っています。
「Omana Penne」 現実と妄想が交互に出てきます。
「Mannipaaya」 歌はヒンディー映画でおなじみのシュレヤ・ゴーシャル
全体として音楽の中にストーリーを嵌め込んだかのような作り。それが作品に詩的な雰囲気を醸し出しています。
シランバラサン(シンブー) 映画監督を目指すカルティック役
「リトル・スーパースター」と呼ばれるシンブー(「スーパースター」はもちろんラジニカント)。《Vinnaithaandi Varuvaayaa》 の話題の一つが、シンブーがそれまでのヒーロー役とはは全く違った役をやるということでした。立派に(というよりやり過ぎなくらい?)やり遂げたといえるでしょう。基本的に内向きながら、ときどき爆発したように思い切った行動に出るという役。しっかりした役を一本通じて演じきるというのは難しいもの、しかも、カルティック役のように難しい性格設定ではなおさら。この作品のシンブーの演技の評価が高かったのも頷けます。
ところで、作中のカルティックは映画監督を目指していますが、シンブーはすでに《Vallavan》(2006)で監督デビューを果たしています。
トリシャー 「最も難しい女性」ジェシー役
基本的に童顔のトリシャー、典型的なガール・ネクスト・ドアの役が多かったですが、今回は違います。二階に住んでいるのでネクスト・ドアには間違いないですが、自ら「よりによってどうして私なんか」というくらい恋愛、結婚の相手として「最も難しい女性」の役です。カルティックのことを好きになりながらも自分の境遇から半ば諦めている。しかし、結婚式の場面ではとてつもなく大胆な行動に出るジェニー。そんな複雑な女性の微妙な心境を上手く演じています。ときに憂いを帯びた表情が素敵でした。もっとも、いつもの可愛らしいトリシャーのファンには物足りないかもしれません。
ジェニーはケーララのクリスチャンですが、トリシャー自身はチェンナイ生まれのヒンドゥー教徒。ケーララのクリスチャンといえばアシンが有名です。トリシャーの趣味は「音楽、読書、水泳」となっています。作品中「Omana Penne」で見せる着衣での立ち泳ぎ、かなり泳げるなという感じ。趣味=水泳は伊達ではありません。
新感覚のストーリーと詩的な作りとが巧みにミックスされた味わいのある作品でした。
《Vinnaithaandi Varuvaayaa》、ゴウタム・メノン監督自身によってヒンディー・リメイクされるとのこと。出演はトリシャーにプラテイク・バッバル Prateik Babbar。プラテイク・バッバルは早世した名女優スミタ・パテルの息子で、【Jaane Tu … Ya Jaane Na】での演技が評価されました。舞台を移して今作の微妙な味わいを再現できるのか、今から楽しみです。
プラテイク・バッバル
《Vinnaithaandi Varuvaayaa》(2010)
ちょっと違ったテーストの南インド映画を楽しみたい人、予想を裏切られる快感を味わいたい人、詩的映像と音楽に浸りたい人、お勧めです。
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by madanaibolly
| 2010-09-01 17:13
| ヒンディー以外の映画