2010年 11月 06日
【Action Replayy】 |
監督:ヴィプル・シャー Vipul Shah 出演:アクシャイ・クマール、アイシュワリヤー・ラーイ、ネハー・デュピヤー、アディティヤー・ローイ・カプール、ランヴィジャイ・シン、オム・プリー、キロン・ケール、ランディール・カプール
監督のヴィプル・シャーは今回と同じアクシャイ・クマール主演の【Namastey London】(2007)の監督です。アクシャイ・クマールとアイシュワリヤーの共演は【Khakee】(2004)以来ですが、恋愛モノでは初めてになります。
トレイラー
ストーリー
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バンティ(アディティヤー・ローイ・カプール)は結婚不信。ガールフレンドのタニヤ(スディーパ・シン)が結婚を迫っても耳を貸そうとしない。というのも、父キッシャン(アクシャイ・クマール)と母マーラー(アイシュワリヤー・ラーイ)の結婚生活がうまくいっていないためである。結婚35年記念パーティの夜、またしても二人は些細なことから言い争い、いよいよ離婚の危機に。
たまりかねたバンティはタニヤの祖父で科学者のアンソニー・ゴンザレス(ランディール・カプール)を訪ねる。二人の不仲の原因が結婚時にあると考えたバンティは、彼が開発したタイムマシンで両親の結婚の年である1975年に飛ぶことにしたのだった。
人々の装いも現代と異なる1975年に到着したバンティは若き日の両親を探すが、待っていたのは冴えない風采のダサ男キッシャンと勝気で男勝りのマーラーだった!キッシャンはマーラーを怖がっており、マーラーはキッシャンのことなど眼中にない。このままでは自分の存在が危うい。バンティは二人をくっつけることができるのか?
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面白いコメディを作ること、または演じることは特殊な才能か?こんなことを考えたのは、一つには今年のディワーリー公開が【Action Replayy】と【Golmaal 3】というコメディ2本の対決となったこと、もう一つは【Action Replayy】が監督ヴィプル・シャーと主演のアイシュワリヤーがそれぞれの「コメディ初挑戦」となったためです。
【Action Replayy】を観て、コメディは特殊かどうかはともかく難しいものであると思いました。後に書くようにいろいろと見るべきところも多いのですが、コメディ要素が他の部分となじんでおらず、全体としていびつな印象を受けました。
「コメディ初挑戦」の二人に共通するのは、コメディにしよう、面白くしようという気負いが見えてしまっていること。肩に力が入っているのが明らかで、見ているほうも思い切り笑うというわけにはいきませんでした。
ヴィプル・シャー監督は【Namastey London】、そして興業的には不成功でしたが【London Dreams】(2009)のように、登場人物の感情の動きをきっちりと描くのを得意とする監督で、【Action Replayy】ではコメディ・タッチでそれをやろうとしたようです。しかし、作品を「コメディ」にしようと【Golmaal】シリーズのようなスラップスティック的も入れざるを得なかったようで、結局それが浮いている感じでした。また、1975年のキッシャンとバンティの二人に重点が分散してしまい、監督の得意の「きっちりと感情の動きをたどる」ことができなかったのも残念でした。キッシャン(アクシャイ)のキャラクターもストーリー重視のコメディにしては演出過剰でした。
アイシュワリヤーのコメディについては、見る側の先入観が2割くらいはあるにせよ、やはり上手くありませんでした。美人の宿命か、見る側がかしこまってしまうようではコメディになりません。ただ、音楽シーンはコメディ風のものも含め、非常に魅力的でした。
アクシャイのダサ男になかなか乗り切れない前半で、アクシャイが(当時基準で)カッコよく変身する後半にようやく勢いが出てきます。しかし、終盤はドタバタに流れてなんとなく盛り上がらないまま終わってしまいました。
【Action Replayy】の見どころはその視覚効果、「見て楽しい」ところです。作品に出てくる1975年のボンベイは必ずしも現実の再現ではなく、むしろ「レトロ」とか「ノスタルジー」といった心象風景の再現で、セットやファッションなど原色中心の色彩が作品中に溢れています。ベルボトム、サングラス、ポルカドットの服、オープンカーなどのファッションも雰囲気たっぷりです。
プリタムの音楽も当時の雰囲気を出すのに貢献しています。挿入歌もいいですが、いかにも「エレキギター」「ハモンドオルガン」というBGMもなかなかです。プリタムは【Once Upon A Time In Mumbaai】でも70年代風の音楽を手がけており、今回はその使いま・・・いや、予習十分で良いものになっています。
本編にはないのですが、トレイラーの序盤で流れる曲はリシ・カプール主演の【Hum Kisi Se Kum Nahin】の「Kya Hua Tera Wada」
踊りのシーンはどれも良かったと思います。作品全体に合わせた色彩の美しさ、ホーリーのお祭りソング、メーラー(市)・ソング、高原ソングにディスコ・ソングと設定も多彩です。ただ、今どき珍しく、すべてストーリーを止めて挿入されるタイプの踊りシーンなので、やや本編の流れを悪くしている気もしました。
ホーリー・ソング 「Chhan Ke Mohalla」
過去に行き自分の両親を助けるという筋書きはハリウッド映画の【Back To the Future】(1985)。クレジットによると原作はグジャラーティーの同名の演劇ということになっていましたが、それと【Back To the Future】との関係は?まあ、深く突っ込むのはやめておきます。
インドの言語に限らず、卑語には「母親」を使ったものが多いのですが、【Action Replayy】では過去で自分の母に会うという特殊な設定を利用して、そうしたセリフなどをかなり入れてあるのではないかと思われますが、語学力不足で十分に把握できませんでした。そっち方面に詳しければ、もう少し楽しめたのかもしれません。
アクシャイ・クマール 冴えないダサ男キッシャン役
冴えない男役は得意なアクシャイですが、今回はなにもそこまでしなくてもという気がしました。確かにマーラーとの結婚をミッション・インポシブルにするため、また変身を際立たせるという意味はあるのかもしれませんが、あまり魅力的なキャラクター(冴えないけどイイ人)になってませんでした。しかし、変身後の70年代ファッションをあそこまで着こなせる人はアクシャイしかいないでしょう。
アイシュワリヤー・ラーイ 勝気なマーラー役
上でも書いたように、コメディはちょっと肩に力が入りすぎていました。しかし、踊りのシーンはさすがでした。最近の女優さんでソロまたは中心でここまで踊るのは珍しいです。
アディティヤー・ローイ・カプール 両親をくっつけようと苦心するバンティ役
ヴィプル・シャー監督の前作【London Dreams】から、アクシャイ、アイシュワリヤーと並ぶ事実上の主役。大抜擢に応えました。今作の収穫でしょう。音楽チャンネルのVJ出身で、【London Dreams】ではバンドのパキスタン・コンビの一人でした。現代風の長身ハンサムですが、気のいい若者の役が得意そうです。アイシュワリヤーとはサンジャイ・リーラー・バンサーリー監督の【Guzaarish】でも共演します。今後が楽しみです。
ネハー・デュピヤー マーラーの友人モニカ役
ラジャット・カプールらの小規模作品に出演しながら、ときどき大作にも顔を出すというネハー。今回はマーラーの友人役で、未来から来たバンティのことを好きになるという役でした。70年代風の衣装も良く似合っていてなかなか可愛かったのですが、役があまり意味なし。バンティとのエピソードも展開しませんでした。まあ、【Singh Is Kinng】(2008)の女優志望のはずなのに、なぜか秘書みたいな役よりはいくぶんマシですが。もうちょっと評価されてもいい女優さんだと思っていますが。
ほかに、オム・プリーとキロン・ケールがバンティの祖父母役ですが、さほど面白みはなかったです。また、【London Dreams】のコンビのもう一方(アジャイと組むダークなほう)のランヴィジャイ・シンがキッシャンのライバルとなる歌手役でした。
【Action Replayy】
70s、レトロ、ベルボトム、天然色のいずれかが好きな人、アクシャイとアイシュの組合せをみてみたい人、タイムマシンの向かう先が2050年でなければまあ良いという人、お勧めです。
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by madanaibolly
| 2010-11-06 19:17
| レビュー