2018年 09月 04日
【Satyameva Jayate】 |
トレイラー
ストーリー
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ムンバイで警察官4人が相次いで殺害された。いずれも痛めつけたうえに最後は焼き殺すという残虐な手口で行われ、警察にはさらなる殺害をほのめかす手紙が届く。殺された警察官たちはさまざまな汚職に関わっていたことが共通点だが、個人的なつながりもなく、所属する警察署も異なっていた。犯人の正体はもちろん動機もわからず途方に暮れた警察は、休暇中だった腕利き刑事のシヴァンシュ(マノージュ・バージパーイー)を呼び戻す。シヴァンシュは捜査を進めるうち、犯人の正体はわからないながら、犯行にあるパターンがあることに気づく。
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監督のミラープ・ミラン・ザーヴェーリーはどちらかというと脚本家として有名で、【Hayy Babby】(2007)、【Housefull】(2010)、【Desi Boyz】(2011)、【Ek Villain】(2014)の台本やスクリーンプレイを担当しています。監督としてはサニー・リオーン主演のセックス・コメディ【Mastizaade】(2016)などを撮っています。
ヴィジランテ・ムービーというと、「ヴィジランテ=自警団」の意味から、警察が頼りにならないために市民が治安維持や法の執行を行う様を描く映画ですが、【Satyameva Jayate】はそれをさらに一歩進めて、市民が警察の汚職と対決するという構図の作品です。
オープニング・シーンからもジョンが警察官殺害の犯人であることはわかります。そのうえで、いった彼は何者で、なぜ警察を狙うのかがテーマの一つになっていきます。確かに殺害された警官は、権力をかさに着て弱者をいたぶり、女性とみると慰みものにしようとする腐敗警官の見本みたいな連中なのですが、それにしてもなぜ連続して焼き殺すことにどんな意味があるのか?といったところです。
もう一つのテーマがマノージュ・バージパーイー演じる有能な警察官であるシヴァンシュと警察を狙うジョンとの対決。この線はインターミッションの直前にひねりが加えられていて、それがこの作品のみどころかと思います。
人間関係の設定は面白いと思いましたが、より肝心な一連の殺害の動機や全体のテーマ性はやや表面的でした。動機の説明となる過去のシーンは明らかに不足で、本当にそれで全部なのかと思えてきます。
警察の殺害場面に代表されるバイオレンス・シーンは本作の売りの一つであるので良し悪しは置くとしても、殺害自体の意味は作品の進行とともに薄くなっていきます。確かに焼き殺された警察官は腐った悪徳警官ですが、焼かれたりするのは本人の行いのせいではないという結果になってしまっています。
ジョン・エイブラハムのバイオレントな演技は【Force】(2011)、【Rocky Handsome】(2016)など、個人的にはちょっと飽きてきました。【Parmanu】でのような少し抑えた演技もできるのだから、ここまでしなくてもという感じ。マノージュのほうは相変わらず上手いのですが、役自体にさほど面白味はありません。
個別のエピソードが展開するうちに警察全体の不正への怒りと警察個人への私怨がごちゃまぜになり、愛国的なテーマまで持ち出して訴えようとした社会の不正撲滅という「大きなテーマ」が見失われていました。
音楽
ストーリーとはほとんど関係がありませんが、ノーラー・ファテーヒーが踊る「Dilbar」が大ヒットになりました。
「Dilbar」
ノーラー・ファテーヒーはモロッコ系カナダ人。これまでのインド映画への出演もほとんどがダンス・シーンへのアイテム出演。【Baahubali: The Beginning】(2015)「Manohari」でも踊っています。
「Tere Jaisa」
ジョン・エイブラハム ヴィール役
職業は画家なのですが、なんであんな筋肉で戦闘力も高いのでしょう。ジョンもいつまでもこんな役は続けられないだろうというのは置いておいて、今回驚いたのはジョンの商才。本作では直接プロデューサーに名を連ねていませんが、関わっていたことは間違いありません。普通のヴィジランテ・ムービーを独立記念日に持ってくるところなどは非常に巧みなプロモ戦略です。
マノージュ・バージパーイー シヴァンシュ役
有能な警察官という役で、どうも個性が薄く助演に回った感じです。本来なら対決するジョンの役と対等になるはずで、作品としてもそのほうが面白かったと思いますが、描き足りませんでした。
アーイシャー・シャルマー シカー役
ネーハー・シャルマーの妹。顔はそれほど似ていないと思ったら、曲中でサングラスを掛けたら似てました。ということは目が違うということでしょうか。姉がちょっとエキセントリックな感じがあるのに対し、妹のほうは落ち着いた(図太い)印象。ちなみに姉妹は政治家の娘です。
タイトルの「Satyameva Jayate」はアタルヴァ・ヴェーダを起源とする文句で、サンスクリット語で「真実のみが勝利する」の意味。独立インドは国の標語にしています。アーミル・カーンはこのタイトルで社会問題を扱うテレビ・シリーズを作ったのは有名です。そう考えると今回の【Satyameva Jayate】はややタイトル負けな感じもします。
【Satyameva Jayate】
バイオレンス平気な人、シャルマー姉妹を比べてみたい人、血まみれジョンを見たい人、おすすめです。
by madanaibolly
| 2018-09-04 02:31
| レビュー