2018年 08月 29日
【Gold】 |
監督:リーマー・カーグティ Reema Kagti
出演:アクシャイ・クマール、モウニー・ローイ、クナール・カプール、ヴィニート・クマール・シン、アミト・サード
トレイラー
ストーリー
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1936年、ヒトラーが支配するドイツで開催されたベルリン・オリンピック。ホッケーのインド代表チームはキャプテンのサムラート(クナール・カプール)やイムティヤーズ(ヴィニート・クマール・シン)の活躍で優勝、オリンピック3大会連続制覇の偉業を達成した。それにもかかわらず、チームのマネージャーを務めるタパン・ダース(アクシャイ・クマール)の顔色は冴えない。イギリスの植民地支配下にあったインドはオリンピックには「英領インド」としての参加であり、優勝して掲げらる国旗はイギリス国旗だったからだ。いつかは独立インドとしてオリンピックの金メダル獲得を夢見るタパンだったが、直後に第二次世界大戦が勃発して次のオリンピックは中止、タパンもチームを離れる。戦争が終わって世界に平和が戻ると、1948年にロンドンでオリンピックが開催されることが発表された。同じころ、イギリスはインドの独立を認めると宣言した。「独立インドとしての金メダル」というタパンの夢が実現する条件が整ったのだった。だが、最後のオリンピックから10年以上が過ぎ、インドからはパキスタンが離れ、もはやかつての代表チームは残っていなかった。タパンは新チームのメンバーを探すべく、インド中を奔走する。
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最近のインドで圧倒的に人気のスポーツはクリケットですが、国技とされるのはフィールド・ホッケー。国技の名にふさわしくオリンピックのホッケー競技では初参加である1928年のアムステルダム大会から1956年のメルボルン大会まで6大会連続で金メダル。団体競技の連続金メダルではいまだに破られていない記録です。記録が途切れた1960年のローマ大会も銀メダルで負けた相手はパキスタン。さらに次の東京大会ではまた金メダルで、実質的には8連覇といえます。
しかし、この6連覇の最初の3大会はまだインドがイギリスの植民地支配下にあった時期で、大会には「英領インド」としての出場です。【Gold】は1947年に独立することになり、はじめて「英領」が付かない「インド」としてオリンピックの金メダルを目指す人々の物語です。
【Gold】はホッケーをテーマとしたスポーツ映画であるとともに、スポーツを通してインドの独立を描く歴史映画でもあります。もちろん、歴史的事実として現代におけるようなナショナリズムとスポーツの密接な結びつきが当時から存在したのかはわかりませんが、少なくとも現代における映画作品のテーマとしては十分に魅力的です。
スポーツ映画と歴史映画の両方の特徴を出すために、独立前(1936年ベルリン五輪)と独立後(1948年ロンドン五輪)の二大会を描き、インド代表も新旧両方のチームを重ねる形を取った構成は見事です。旧チームの主力2人(サムラートとイムティヤーズ)は1948年五輪のインド代表チームにはおらず、新チームの主力2人は1936年五輪のときはまだ子供だったという設定で時の流れを感じさせます。それと同時に「独立インドとしての金メダル」という夢が世代を越えて引き継がれていくのを見るようで、大河ドラマのようなスケールの大きさがありました。
独立がインド代表チームに与えた影響がしっかりと描かれていたのには非常に興味を引かれました。戦争の影響による2大会の開催中止で旧チームでもすでに年長だったサムラートが引退してしまうのは仕方ないとして、イムティヤーズはロンドン・オリンピックに出場しますがパキスタン代表としての出場です。旧チームにはインド在住のイギリス人も所属していたらしく、独立に伴い彼らもチームを離れます。
【Gold】は歴史ドラマとしての魅力は十分なのに、特に後半のスポーツ映画としての部分の出来がいま一つなのが残念でした。試合のシーンは同じようなプレー映像をつなげただけで、スポーツの一試合にもあるドラマ性が出ていませんでした。またオリンピックの大会に出場するチームの話としても作りが甘い気がします。確かにチーム内の不和という危機が起きて、それを乗り越えていくという形はあるものの、肝心の不和の原因がよくわかりません。地域や階級に基づく選手同士の争いなのか、チームの戦術や選手起用が問題なのか?そもそも監督がいないチームという設定は史実なのでしょうか(調べてませんが)。
じっくりと大作を楽しむには適した作品ですが、ふつうのスポーツ映画としての盛り上がりを期待すると外れます。正統派のドラマ作品として観るのがおすすめです。
音楽
音楽はサチン=ジガル。アクシャイがパーティーで踊る曲はストーリー上でも意味を持ちますが、2曲あるのでダブりの感じがあります。
「Ghar Layenge Gold」
アクシャイ・クマール タパン・ダース役
チームのマネージャー(日本語の意味で)という「裏方」が作品の主人公なのは面白い設定だし、それをやるアクシャイも面白い。【Lagaan】(2001)のアーミルのように名選手でもなければ、【Chak De India!】(2007)のシャールクのような監督でもありませんが、それでも確かに主役であり続けるのはさすがにアクシャイ。庶民風ですが、ときおり非常にかっこいいところを見せるのも最近のパターン。
クナール・カプール サムラート役
旧チームのキャプテンで上流階級出身のサムラート。ハンサムで知られるクナール・カプールにはよく似合っていました。
ヴィニート・クマール・シン イムティヤーズ・アリー・シャー役
旧チームの主力選手ですが、独立後はパキスタンの代表選手になるイムティヤーズ役。ヴィニートは【Mukkabaaz】(2017)でのボクシング選手役から続けてのスポーツ映画です。本作は登場時間は限られていますが、しっかりした演技で優れた俳優だとわかります。
アミト・サード プラタープ役
【Kai Po Che】(2013)の主役3人(他はスシャーント・シン・ラージプート、ラージクマール・ラーオ)では「遅れてきた男」ですが、【Sultan】(2016)、【Sarkar 3】(2017)など着実に出演しています。本作では貴族出身の選手で一人よがりのプレーぶりというクセの強い役ですが、こういう役は上手いです。
サニー・コウシャル ヒンマト・シン役
新チームでの庶民出身選手。インディーズ映画に1作出演がありますが、大作は本作がデビュー。まったく知りませんでしたが、なんと最近ボリウッドでスター街道まっしぐらのヴィッキー・コウシャルの弟だそうです。
モウニー・ローイ モーノービーナー役
テレビで10年以上のキャリアがありますが、ヒンディー映画は本作がデビュー。テレビでどういう役をやっていたのかは知りませんが、映画的にはヒロインをいじめる役が似合いそうな顔なのでどうかと思いましたが、なかなか良かったです。画面映えするというか、存在感が十分。これからも期待できそうです。とりあえず、次作にはランビール・カプール、アーリヤー・バットの【Brahmastra】への出演が決まっています(監督のアヤーン・ムカルジーと付き合っているという話も)。
【Gold】
インド独立の別の側面を見てみたい人、スケールの大きな話が好きな人、アクシャイの庶民路線が好きな人、モウニー・ローイをチェックしたい人、おすすめです。
by madanaibolly
| 2018-08-29 00:13
| レビュー