【Fanney Khan】 |

トレイラー
ラターが憧れるのはトップ・スターのベイビー・シン(アイシュワリヤー・ラーイ)。しかし、表の顔とは異なり、彼女は芸能生活に疲れ切っていた。さらに彼女の周辺では彼女を年齢的に限界とみて引退させようとする企みも動いている。
ある日、プラシャントが工場に行くと、同僚のアーディル(ラージクマール・ラーオ)が血相を変えてやってきて、工場のオーナーが金をすべて持ち出してロンドンに逃げたと伝えた。当然に工場は閉鎖、プラシャントは失業した。幸い知り合いのつてでタクシー運転手として働けることになったが、娘をスターにする夢はさらに遠のくことになった。
プラシャントがタクシーを流していると、突如乗り込んできた女性。なんとそれはマネージャーと喧嘩して飛び出してきたベイビーだった。思いがけない偶然に遭遇したプラシャントは、なんとベイビーを誘拐する!
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最近は脇役が多いアニル・カプールの久々の主演作。昔叶わなかったスターになる夢を娘に託す父親の役で、想いが強すぎるあまり取った突飛な行動を描くコメディ・タッチの人情ドラマになっています。共演はアイシュワリヤー・ラーイ、ラージクマール・ラーオ。
監督は本作がデビューのアトゥル・マンジュレーカルですが、プロデューサーにはアニル・カプール本人や【Bhaag Milkha Bhaag】(2013)の制作・監督のラケーシュ・オームプラカーシュ・メヘラーらが名を連ねています。
序盤は悪くありません。懐メロのリメイクで始まり、主人公「ファンネー・カーン」の昔の姿を描きます。続いての現代のパートは人情長屋モノ(実際に長屋的なアパートに住んでいるという設定)風で、父と娘の葛藤や失業などで話が進んでいきます。
序盤はいいのですが、主人公が大物歌手のベイビー・シンを「誘拐」するところから、なんとなく違和感が増していきます。もちろん、この誘拐こそが話の本筋なのでこれがないとそもそも話が進まないし、フィクションでしかもコメディなのだからそこまでリアリティにこだわる必要もないのですが、やはり何かヘンだという感じがぬぐえません。
この違和感はひとえに主人公プラシャント=ファンネー・カーンのキャラクターに起因します。とにかくキャラクターがバカすぎで見ていられません。ベイビーを誘拐しても、悪事をしているという感じはおろか、重大な事をしているという感じもありません。そして、その後もベイビーは強引に巻き込んだアーディルに任せっきりで、次々に愚行を重ねます。そもそもお人好しで、さらに娘を思うあまりということでしょうが、結果的には娘を危険に晒すことにもなって、完全にやりすぎという感じしかしません。逆にいうと、ここまでの極端なキャラを演じてしまうアニル・カプールは凄いということも言えます。アイシュワリヤー・ラーイとラージクマール・ラーオのキャラクターについてはコメディということで範囲内でしょう。
作品全体に流れるノスタルジックな雰囲気や、家族愛やそのほかの人情、そして主人公のお人好しまで、逆にあざとさを感じてしまいました。いまどきこれでは、よほど素直なインド人観客でも受け入れるのは難しいでしょう。悪い話でも、悪い作りでもないけれど、どうしても乗り切れない作品でした。
音楽
音楽はアミト・トリヴェーディー。過去の有名曲のカバー「Badan Pe Sitare」、アイシュのステージ曲、子役にモーナーリー・タークルが声を当てた2曲など優れた曲が多く、バランスもとれています。
「Badan Pe Sitare」
オリジナル
【Prince】(1969)
「Badan Pe Sitare」 歌:モハンマド・ラフィー
「Mohabbat」
「Fu Bai Fu」
アニル・カプールとアイシュワリヤーが共演していたのは20年ほど前。このときはギリギリでカップルになれました。
【Taal】(1999)「Kahin Aag Lage」
【Fanney Khan】
『三丁目の夕日』が大丈夫な人、セクシーなアイシュとくだけたアイシュの両方をいっぺんに見たい人、トップ歌手の歌を楽しみたい人、おすすめです。


