2015年 07月 21日
【Bajrangi Bhaijaan】 |

監督:カビール・カーン Kabir Khan
出演:サルマーン・カーン、ハルシャーリー・マルホートラ(子役)、カリーナー・カプール、ナワーズッディーン・シッディーキー、シャーラト・サクセーナ、オーム・プリー(特別出演)
トレイラー
ストーリー
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パキスタン・カシミール。山奥の村に住む少女シャヒーダー(ハルシャーリー・マルホートラ)は事故で口がきけなくなってしまう。母親は少女をインド・デリーのニザームッディーン廟に連れていき、声の回復を祈願することにする。聖者廟へのお参りは無事に済み、母娘はパキスタンに戻る列車に乗り込んだ。途中、一時停止中の列車からふと降りたシャヒーダー。列車は突然発車し、シャヒーダーは一人インドに残されてしまう。
貨物列車に乗ってシャヒーダーがたどり着いたのはクルクシェートラの町。そこでシャヒーダーは祭りで踊るバジュランギことパワンと出会う。何も言わずについてくる少女にパワンは最初は戸惑うが、さりとて見捨てるわけにもいかず、とりあえず自分の家に連れていく。
恋人ラシカー(カリーナー・カプール)と一緒に少女がどこから来たのか知ろうとするが、インドの町の名前をいくら言っても反応しない。やがて、少女はパキスタンから来たことがわかる。パワンは少女をパキスタン大使館に連れていくが、パスポートも持たない少女がパキスタン人であることを信じてもらえない。とうとうパワンは、ハヌマーン神に誓って、少女を故郷の家に連れていくことを決心する。
だが、パスポートもパキスタンのビザも持たない二人。はたして少女の家にたどり着けるのか?
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サルマーン・カーンの新作です。監督はやはりサルマーン主演で大ヒットした【Ek Tha Tiger】(2012)のカビール・カーン。共演には、サルマーンとは【Bodyguard】(2011)以来のカリーナー・カプール、優れた演技力で活躍中のナワーズッディーン・シッディーキー。
難しいことは抜きにして、とにかく面白い作品でした。サルマーン演じるハヌマーン信者の男がインドで迷子になったパキスタンの少女を実家に送り届けるというストーリー。タイトル「Bajrangi Bhaijann」は、Bajrangiがハヌマーン神の別名(「ダイヤモンドの肉体を持つ強き者」ほどの意)、Bhaijaanは「兄貴」で、「ハヌマーン兄貴」というな意味。
サルマーン演じる主人公パワンはハヌマーン信徒で、自らもバジュランギ(ハヌマーン)と呼ばれますが、これは主人公の性格を示しています。ハヌマーンといえばインドの猿神で、インドの古代叙事詩『ラーマーヤナ』ではラーマを助けて大活躍します。ハヌマーンの特徴といえば強さとラーマに対する忠実さです。
ハヌマーン

サルマーンのバジュランギも強く、心優しく、少女にも神への誓いにも忠実(ときに忠実過ぎ)です。確かに強いのですが、少女を無事に故郷に連れていくこと、その際に悪事をしたり嘘をついたりしないことをハヌマーンに誓っているというハンディを負っています。そのためパキスタンに入ってからも嘘をつけず、警察に「インド人か?」と問われると「はい」と答えてしまいます(そのときの少女の「ダメ!」というしぐさがかわいい)。相手を殴るのは少女を守るのに必要なときだけで、基本は殴られっぱなしです。いつものサルマーンと比べるとずいぶんと大人しい役ですが、無敵ではない分ストーリーとしては面白くなっています。f
インドとは基本的に関係の良くないパキスタンおよびパキスタン人はインド映画では多くの場合に悪として描かれます。その際にイスラム教と関連付けれられることもしばしばです。ところが【Bajrangi Bhaijaan】で描かれるパキスタン、パキスタン人はそれらとはまったく異なります。
【Bajrangi Bhaijaan】の後半の舞台はパキスタンですが、そこで描かれるパキスタンの人々はそんな「悪のパキスタン」とはかけ離れています。シャヒーダーの両親は純粋に娘を愛するどこにでもいる親であり、ナワーズッディーン・シッディーキーが演じるテレビ・レポーターは仕事を投げ打ってバジュランギたちを助けます。
バジュランギたちをモスクに匿うオーム・プリー演じるモウラーナー(イスラム教の先生)をはじめとして、バジュランギがパキスタンで出会うイスラム教徒は決して狂信的ではなく、非常に柔軟。むしろ、宗教的な事柄に関してはガチガチのヒンドゥー教徒であるバジュランギのほうが頑固という具合です。バジュランギは道中、イスラム教的なことは頑なに避け続けます。この対照的な関係はエンディングで意味を持ってきます。お楽しみに)
【Bajrangi Bhaijaan】からは、国としては関係が良くないインドとパキスタンの人々も、宗教や国籍を越えて人間同士として理解しあえるという監督のメッセージがシンプルな形で伝わってきます。そして体を張ってこのメッセージを伝える強くて心優しい「兄貴」ができるのはサルマーンしかいないでしょう。
【Bajrangi Bhaijaan】はサルマーンのためにあり、サルマーンは【Bajrangi Bhaijaan】のためにいる、というくらいハマり役でした。面白くないわけがありません。そしてサルマーンがハマると、こんなに楽しい作品ができあがります。
音楽
「Selfie Le Le Re」
少女はこれで踊るサルマーンを見て、頼りになりそうだと思ったようです。
「Bhar Do Jholi Meri」
パキスタンのダルガー(聖者廟)でのシーン
「Zindagi Kuch Toh Bata」
警察や情報局に追われる道中ですが、こんなのどかな風景も。
サルマーン・カーン バジュランギことパワン役

ひき逃げ事件の裁判などなにかとお騒がせなサルマーン。裁判の直前まで撮影していたのは本作のカシミールでのシーンです。本作のバジュランギ役で、【Dabangg】(2010)(あるいは【Wanted】(2009))から続いていた南インド映画風のヒーロー・キャラに一区切りをつけたような気がしました。熱心なサルマーン・ファンにはちょっと物足りないかもしれませんが、【Bajrangi Bhaijaan】のサルマーンは、これまでサルマーンはちょっと苦手と感じている人にも受け入れやすいのではないかと思います。
ナワーズッディーン・シッディーキー テレビ・レポーターのチャンド・ナワーブ役

登場はサルマーンがパキスタンに入る後半からですが、登場からいきなり笑いを取ります。しかし、バジュランギの行動に感銘を受け、同行してバジュランギを助けます。今回はアクの強さは抑えていますが、いつもながらの好サポートでした。ところで、パキスタンにはチャンド・ナワーブという有名レポーターが実在するそうです。
カリーナー・カプール ラシカー役

サルマーンとは【Bodyguard】(2012)以来の共演。登場時間が少ないため、カリーナーを見たいという人には物足りないかもしれません。それでも大物主演の大作でヒロインとしてぴたりとハマるところはさすがにカリーナーで、前半にある「ニワトリ・ダンス」などは、サルマーンとの息もぴったりで、他の女優ではなかなかできないと思います。
ハルシャーリー・マルホートラ インドで迷子になるシャヒーダー(ムンニ)役

本作の演技賞はこの子で間違いありません。とにかくかわいいのですが、それだけではなく演技もしっかりしていて、口がきけない子になりきっています。作中のバジュランギはもちろん、本作の観客のほとんどはこの子に心をわしづかみにされることでしょう。これまでテレビ・ドラマに出たことがあるだけのようですが、今後人気がでそうです。
インド映画の主人公にとってパキスタンは敵地。そんなところに飛び込んだらロクなことにならないというのが、これまでの作品でした。
【Gadar - Ek Prem Katha】(2001)
サニー・デーオール演じる主人公が嫁をパキスタンからインドに連れ帰る話。パキスタンは完全な悪役で、敵中突破行になります。
【Filmistaan】(2013)
映画好きの主人公がテロリストに誤って誘拐され、パキスタンに連れられていってしまう作品。
http://popoppoo.exblog.jp/22521885/
【Welcome 2 Karachi】(2015)
主人公はアメリカに向かうはずのヨットが難破し、パキスタンに流れ着いてしまいます。
http://popoppoo.exblog.jp/24129453/
少女シャヒーダーの名前はパキスタンのクリケット選手シャヒード・アフリディから。女の子なので女性名のシャヒーダーになりました。【Filmistaan】でもパキスタンのテロリストはインドのサチン・テーンドゥルカルよりもアフリディのほうがいい選手だと主張するくらい、近年のパキスタン・クリケットの代表的選手です。
シャヒード・アフリディ

サルマーンが好きな人はもちろんそうでない人も絶対に楽しめる作品です。
【Bajrangi Bhaijaan】
サルマーン・ファンの人、かわいい子役が見たい人、美しいカシミールの風景を見たい人、誠実なつくりの感動作が観たい人、印パがいがみ合わない映画が観たい人、おすすめです。


by madanaibolly
| 2015-07-21 21:05
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