2012年 11月 14日
【Jab Tak Hai Jaan】 |

監督:ヤシュ・チョープラー Yash Chopra 出演:シャールク・カーン、カトリーナ・カイフ、アヌシュカー・シャルマー、リシ・カプール、ニートゥ・カプール、アヌパム・ケール
トレイラー
ストーリー
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サマル・アーナンド(シャールク・カーン)はインド陸軍の爆発物処理班所属の少佐。これまでに多くの爆弾処理を成功させ、「死なない男」として知られている。
ラダック。テレビ局「ディスカヴァリー・チャンネル」で働くアキラ(アヌシュカー・シャルマー)は湖で泳ごうとするが、あまりの水の冷たさにおぼれかけ、近くにいたサマルに助けられる。サマルはアキラに自分の上着を着せたまま、何も言わずに立ち去ってしまう。ホテルの部屋に戻ったアキラは、サマルの上着のポケットに彼の日記を見付け、読み始める。それは若きサマルの愛の物語だった。
2002年、ロンドン。魚市場やレストランで働きながら、歌手として街頭で歌っている。ある日サマルは、裕福な実業家の娘ミーラ(カトリーナ・カイフ)と出会う。いつもは通りがかりを見かけるだけのミーラだったが、サマルにパンジャービー・ソングを教えるよう頼んでくる。間もなく結婚するミーラは、これまで男手一つで育ててくれた父(アヌパム・ケール)に歌をプレゼントしたいというのだ。歌を教えるうち、ミーラは決して婚約者を愛しているわけではなく、親のために結婚することがわかってくる。そして、2人の間に愛が芽生える。やがて、2人は結婚を約束するまでになるが、サマルの交通事故がすべてを変えてしまう。ミーラはサマルと別れることと引き換えに、サマルの命を神に祈ったのだ。祈りが通じたとき、ミーラはサマルのもとを立ち去った。そしてサマルはインドに戻る。
アキラは取材でカシミールに駐屯するインド軍を訪れ、サマルと再会する。寡黙な軍人になっていたサマルは最初アキラを邪魔にしていたが、明るく前向きなアキラと次第に打ち解ける。2人の間にはほのかな恋愛感情も。
アキラの取材の成果が番組になることが決まり、アキラはサマルをロンドンに呼ぶ。だが、そこでサマルは再び交通事故に遭い、前の事故からの記憶をすべて失ってしまう。アキラのことをすべて忘れ、ミーラに会いたがるサマル。医者からミーラこそサマルが記憶を取り戻すカギだと言われ、アキラはミーラに会いにいく。
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10月21日に亡くなったヤシュ・チョープラー監督の遺作となる作品です。監督自身、この作品での監督引退を宣言していたので、最後の作品になることには変わりはなかったのですが、公開まで1カ月もない時期のショッキングな死でした。
ヤシュ・チョープラー監督といえば、ボリウッドの「キング・オブ・ロマンス(恋愛映画の王様)」。【Kabhi Kabhi】(1976)、【Silsila】(1981)、【Chandni】(1989)、【Darr】(1993)、【Dil To Pagal Hai】(1997)、【Veer-Zaara】(2004)など、恋愛映画を作り続けてきました。「三角関係(男1、女2)」の【Silsila】(1981)、【Dil To Pagal Hai】(1997)、「三角関係(男2、女1)」の【Chandni】、「狂気の愛」の【Darr】、「障害を越える愛」の【Veer-Zaara】など描かれる愛の形はさまざまですが、愛の重要性、愛の強さを描く点は一貫しています。
【Jab Tak Hai Jaan】は、「三角関係(男1、女2)」と「障害を越える愛」がミックスされた作品。時を違えて主人公サマルと出会うミーラとアキラ。2つの恋愛関係が途中で交錯します。また、婚約者(おなじみ)、神への約束、流れた歳月や失われた記憶など、愛を妨げる障害が次々に現れます。
大ベテラン監督の晩年の作品らしく、スケールの大きな、そしてやや古典的な作りの作品で、インド恋愛映画の教科書的作品ともいえるでしょう。インド映画、なかでも恋愛映画には独自の文法があり、【Jab Tak Hai Jaan】はその文法に忠実に従っているのだということを理解していないと、ときに「ご都合主義」に見えるところがあるかもしれません。たとえば、(不要な)婚約者の処理方法だとか、都合よく起きる交通事故や記憶喪失、三角関係の解消法などです。さらに、途中には無駄が多すぎ、全体は長すぎるということになるでしょう。しかし、ヤシュ・チョープラー監督自身が形を作ったといってもいいボリウッドの恋愛映画としてみるならば、【Jab Tak Hai Jaan】は極めて完成度の高い大作です。
ヤシュ・チョープラー監督が「恋愛映画の王様」なら、主演のシャールク・カーンは「恋愛映画の皇帝(Badshah)」。【Jab Tak Hai Jaan】では、シャールクが「恋愛映画の皇帝」としての力をいかんなく発揮しています。相性という点では、カトリーナとの組み合わせには少しぎこちなさがあるような気もしますが、それでもこれまでにない熱いラブシーンを演じています。一方、シャールクとの共演者として選ばれ、【Rab Ne Bana Di Jodi】(1998)でデビューしたアヌシュカーなので、相性はばっちりでした。シャールクに呼応するように、2人も熱演でした。
音楽
A.R.ラフマーンの音楽。プロモーション期間を通じて思っていたのが、音楽(ダンス)が弱いのではないかということでした。しかし、作品中で見ると、さほど悪くないのが面白いところです。
「Challa」
歌はラッビー・シャーギル。MTVの「Unplugged」に出演するなど、注目されているパンジャービー・シンガーです。
「Ishq Shava」
これだけ見るといま一つと思ったのですが、前後を合わせてみるとなかなか良いです。
「Heer」 歌:ハルシュディープ・カウル
作中でミーラが歌う曲。いい曲です。
シャールク・カーン サマル・アーナンド役

ヤシュ・チョープラー監督の晩年の作品【Dar】、【Dil To Pagal Hai】、【Veer-Zaara】から今作まで、4作品連続で出演したことになるシャールク。その間シャールクは【Rab Ne Bana Di Jodi】、【My Name is Khan】(2010)、【Ra One】(2011)などで役者として違った側面を見せていました。それ自体悪くはありませんでしたが、今作では原点回帰といった感じで、そのスター性をストレートに発揮しています。
かつてのヤンチャ時代のシャールクを思わせるロンドンでのエピソード。インド陸軍の爆発物処理班所属になって爆弾処理に向かうときの、ある種狂気の宿った目。いずれもシャールクのエッセンスが出ており素晴らしいですが、やはり「恋愛映画の皇帝」として、カトリーナやアヌシュカーと向き合ったときに注目です。それはそうと、シャールク、今作で長いキャリアでずっと守ってきたあるルールをついに破っています。
カトリーナ・カイフ ミーラ役

「世界一セクシーな女性」で、アイテム・ガールとして引っ張りだこ、すでにトップ・スターの座を得ているカトリーナに唯一欠けていたのが、大監督の大作で主役として演技が認められることでしょう。その意味で、チョープラー監督の【Jab Tak Hai Jaan】への出演はどうしても欲しい勲章だったと思います。演技には多少気負いがあって硬い気がしました。しかし、チョープラー監督のヒロインは、シュリーデーヴィー、ジュヒー、マードゥリー、プリティーということを考えると、気負うなというほうが無理というもの。大作を演じきったことを評価したいです。もちろん、ヒロインとしての美しさは文句ありません。
アヌシュカー・シャルマー アキラ・ラーイ役

思っていたよりは、サブのヒロインといった感じでしたが、おそらくカトリーナよりも難しい役。自ら「新しい世代」に属し、恋愛にもサバけているとは言うものの、サマルに対する感情はそれとは正反対。さらに、記憶喪失で自分のことを覚えていないサマルのために、ミーラに会いに行くアキラ。まだ6作目とは思えない優れた演技を見せました。アヌシュカー、普段見るとそんなにすごい感じはしませんが、演技でもダンスでも、作品に入ると別人のように実力を発揮します。今後は【Matru Ki Bijlee Ka Mandola】でイムラーン・カーン、【Bombay Velvet】でランビール・カプール、若手俳優との共演が待っており、そちらも楽しみです。
このほか、ニートゥ・カプール(シン)(カトリーナの母親役)とリシ・カプール(その結婚相手役)で短い出演ながら印象的。
アヌシュカーの役名は「アキラ(Akira)」。出会ったときサマルが「日本人?」と聞くくらい珍しい名前なのですが、作中で説明はありません。
「恋愛映画の王様」ヤシュ・チョープラー監督が亡くなっても、今後も恋愛映画は作られていくし、息子のアディティヤー・チョープラー(【Rab Ne Bana Di Jodi】)や、イムティヤーズ・アリー(【Love Aaj Kal】)などが後継者になるかもしれません。しかし、当然のことながら、作風は異なるでしょうし、恋愛映画というジャンル自体が変わっていくかもしれません。【Jab Tak Hai Jaan】は、一つの時代の終わりを告げる作品としても必見です。
【Jab Tak Hai Jaan】
シャールク・ファンの人、ヤシュ・チョープラー監督を追悼したい人、スケールの大きな恋愛映画を観たい人、お勧めです。


by madanaibolly
| 2012-11-14 00:03
| レビュー

