2011年 05月 02日
旧作探訪《Teesri Manzil》(1966) |
制作:ナスィール・フサイン 監督:ヴィジャイ・アーナンド 出演:シャンミー・カプール、アーシャー・パーレーク、ヘレン、プレーム・チョープラー、イフテカル、ナズィマー、サリム・カーン
ストーリー
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スニタ(アーシャー・パーレーク)は両親が止めるのも聞かず、北インド、デーラ・ドゥーンに向かっていた。そこからさらに先のムスーリーにあるホテルで、姉のルーパが飛び降りて死んだのだ。姉からの手紙によると、ある男に捨てられたのが原因で自殺したらしい。男についてはそのホテルのバーで演奏する「ロッキー」というドラマーであることしかわからない。スニタは男を探し出し、復讐するつもりだった。
スニタは列車で遊び人風のアニル(シャンミー・カプール)と出会う。こともあろうに、アニルこそスニタが探す「ロッキー」だった。アニルは素性を隠し、スニタとともに「ロッキー」を探すふりをする。やがて2人は恋に落ちるが、アニルは自分が「ロッキー」であることやルーパの死とは無関係であることを言い出せない。
その頃、現地の警察はルーパの死は自殺ではなく、何者かによって突き落とされた殺人事件であることを突き止めていた。また、現場から犯人の物と思われる高級なボタンを回収していた。ルーパの婚約者だったラメーシュ(プレーム・チョープラー)、アニルに言い寄っていたダンサーのルビー(ヘレン)など、容疑者はいるものの決定的な証拠がない。やがて、アニルとスニタの前に意外な真実が。
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【Yaadon Ki Baaraat】(1973)や【Hum Kissi Se Kum Nahin】(1977)などの監督作で知られるナスィール・フサインが制作、デーヴ・アーナンド出演作品の監督が多いヴィジャイ・アーナンドが監督したスリラー作品。
【Teesri Manzil】とは、建物の3階の意。女性が飛び降りた(突き落とされた)のがホテルの3階だから。
スリラー作品っぽいオープニングだが・・・
謎の死を遂げた女性、その死の謎を追う彼女の妹、最初に彼女に疑われるものの、その後は一緒に事件を追うことになる主人公、複数の容疑者。ヒッチコック風のスリラーの要素が揃っています。しかし、結末も含めて純粋なスリラーとして【Teesri Manzil】を見た場合、いかにもそのストーリーの弱さが目立ちます。手に汗握る場面は全体のほんの一部。結末もさほど意外ではありません(あらすじにはいちおう「意外な真実」と書きましたが・・・)。
それでも【Teesri Manzil】がヒット作となったのは、その音楽シーンのため。R.D.バルマンの音楽で、シャンミー・カプールがアーシャー・パーレークやヘレンと踊るシーンはとても楽しいです。多数のヒット曲を生み出しました。特にシャンミーのキレ具合は見もの。
アーシャー・パーレークとは、
「O Mere Sona Re Sona Re」
「Aaja Aaja Main Hoon Pyar Tera」
この曲は【Rab Ne Bana Di Jodi】の「Phir Milenge Chalte Chalte」の間奏に使われてます。この曲のシャンミーはかなりイっちゃってます。
ヘレンとは、
「O Haseena Zulfon Wali」
逆に、これだけの曲を入れて、シリアスなスリラーであることは不可能なのかもしれません。
そんなこともあって、当時、【Teesri Manzil】はミステリー作品にも関わらず、リピーターが続出し、大ヒットになったそうです。ミステリーとしては喜んでいいのかどうか。
シャンミー・カプール Shammi Kapoor
ボリウッドの俳優家系であるカプール家の始祖プリトヴィラージ・カプールの息子3兄弟の次男。ジェントルマン・タイプの兄ラージや、典型的二枚目タイプの弟シャシとは異なり、シャンミーを一言で表すならば「プレイボーイ」。普通に労働している姿は似合わない、すごいハンサムなわけでもないのに女性にモテる、などボリウッド史上で一番のプレイボーイ役が似合うのではないかと思います。そして、トレードマークのボサボサ、バクハツ髪型はこの作品では特に目立ちます。
カプール家 家系図(ポポッポーの別荘 - 工事中)
http://www.geocities.jp/indoeiga_popopoo/bollywoodfamily/kapoorfamily/kapoorfamily.html
アーシャー・パーレーク Asha Parekh
日本では【Love in Tokyo】のヒロインとして有名なアーシャー。【Teesri Manzil】は【Love in Tokyo】と公開が同年の作品です。顔のパーツ(目、鼻、口)がいずれも大作りで、場合によってはちょっと怖い顔にも見えますが、普段はとても愛嬌のある顔です。
プレーム・チョープラー Prem Chopra
まったく、どれくらいたくさんの作品に出ているのでしょうか?死んだ女性の婚約者で、動機十分の男の役といえば、当時真っ先にキャスティングされるのはこの人だったのでしょう。
ヘレン Helen
元祖アイテム・ガールのヘレン。しかし、アイテム・ガールといっても、音楽シーンのみではなく、台詞のある役で登場することもあったのですが、その場合には悪女の役がもっぱらでした。今回もアニルに言い寄っているダンサーで、容疑者の一人。共演のシャンミ・カプールとは、今でいうところのケミストリー。【Rab Ne Bana Di Jodi】の「Phir Milenge Chalte Chalte」でも取り上げられています(ヘレン役はララ・ダッタ)。シャンミー・カプールとはほかに、【Janglee】(1961)、【China Town】(1962)、【Prince】(1969)などがあります。
【Prince】(1969)から「Muqabala Humse Naa Karo」(インド古典舞踊の名手ヴィジャヤンティマラーとの東西ダンス対決!)
サルマーン・カーンの父、サリム・カーンがチョイ役で出演しています。どれくらいチョイ役かというと、「アニルが自分がロッキーであることをスニタに知られたくないために、偽ロッキーに仕立てあげる、バンドのメンバー」です。サリム・カーンは【Teesri Manzil】に出演のヘレンと後に結婚することになります。
サリム・カーン
映画の序盤、デーラドゥーンに向かってスニタがニューデリー駅から出発する場面。駅の看板は40年以上も昔なのに、デザインが今と変わっていないのがわかります。
《Teesri Manzil》
ミュージカル・ミステリー(?)を楽しみたい人、ヘンな顔もなぜかサマになるシャンミー・カプールを観たい人、「manzil=階」というヒンディー語の単語がなかなか覚えられない人(それは私)、お勧めです。
by madanaibolly
| 2011-05-02 19:41
| 旧作探訪