2010年 09月 11日
【We Are Family】 |

制作:カラン・ジョーハル、監督:シッダールタ・マルホートラ Siddharth Malhotra. 出演:カージョル、カリーナー・カプール、アルジュン・ランパル
シッダールタ・マルホートラは今作が監督デビューです。
トレイラー
ストーリー
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ファッション・フォトグラファーのアーマン(アルジュン・ランパル)は妻のマヤ(カージョル)と離婚したが、子供たちのためマヤとは連絡を取り続けている。子供たちはマヤと一緒に暮らし、アーマンには恋人でデザイナーのシュレヤ(カリーナー・カプール)がいる。アーマンは将来のことを考えてシュレヤを子供たちに会わせるが、シュレヤは子供たちから猛反発を食らう。
そんなとき、マヤは医師から末期ガンと宣告される。マヤは自分が死んだあとも子供たちに母親が必要だと考え、シュレヤを家に住まわせることにする。マヤとアーマン、シュレヤと子供たち、奇妙な生活が始まるが・・・。
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ジュリア・ロバーツ、スーザン・サランドンが出演した《Stepmom》(1998)(邦題『グッドナイト・ムーン』)のリメイクということで、メロドラマであるとは予想していましたが、予想以上でした。原作のほうの細かい内容はよく覚えていないのですが、原作よりもずっとメロドラマ性が強かったと思います。いかにもお涙頂戴的というのが苦手な人にはまったくダメでしょう。しかし、観客を見ると結構大泣きしている人もいたので、この手のジャンルが好きな人にはいいのかもしれません。
リメイクという性質上ストーリーの大きな変更はできないにしても、登場人物の性格設定や感情の変化の描写が甘く、ストーリー展開に追いついていっていない印象です。シュレヤと子供たちが当初の軋轢から次第に打ち解けていくこと、自分の死を覚悟したマヤがシュレヤに後を任せようと決心すること、シュレヤが子供たちの母としての役割を受け入れていくことなどがストーリー展開上の「出来事」としては生じても、登場人物の感情の変化として組み入れられていません。このため、観終わったあとで、どことなく作品の浅さを感じてしまいます。
作品の出来としてはそれほどでもありませんでしたが、一歩下がって見てみると、いくつかの面白い点が浮かび上がってきます。まずは、リメイクのために登場した、「離婚した元夫婦と元夫の新たな恋人」という三角関係。インドにも離婚はありますが、それでもまだまだ珍しいというお国柄で、離婚率はアメリカの何十分の一。離婚した後も子供のために連絡は取り合うというアメリカでは普通の光景も、インド映画に出てくるとなんとなく不思議な感じがあります。継母が子供の気持ちを勝ち取るために奮闘するという場合、妻に先立たれた男の後妻(または恋人)というのがほとんど(最初は「後妻」でも「恋人」ではないですが、【Thoda Pyaar Thoda Magic】(2008)などはこのパターン)。【We Are Family】のプロデューサーであるカラン・ジョーハルは監督作【Kabhi Alvida Naa Kehna】(2006)ではシャールクたちに不倫させたうえ、離婚までさせました。インドにとっては「進んだ」家族関係をいとも簡単に取り入れてしまうあたりは、やはりカラン・ジョーハルということでしょうか。
《Stepmom》でジュリア・ロバーツに反発する子供を観て、「離婚が多いアメリカでもこうなのか」と思った記憶がありますが、逆に【We Are Family】では意外にあっさりと子供たちがシュレヤになついてしまったという気がしました。【We Are Family】では、逆にあまりに子供たちとシュレヤが上手くいっているため、マヤのほうが嫉妬を感じるという話になっています(これが原作にあったかどうかは覚えていません)。これはこれで面白い展開だと思いましたが、そこから十分に掘り下げられていきませんでした。
《Stepmom》を観ての一番の感想は「話はともかく、さすがにスーザン・サランドンとジュリア・ロバーツ」というものでした。今回【We Are Family】も同じ感想です。必ずしもしっかりと描かれたキャラクターではないものの、カージョルとカリーナーはさすがにしっかりと演じ切っていました。ちょっと心配していたアルジュンも控えめな感じで悪くなかったと思います。
結局、【We Are Family】の一番の見どころはカージョルとカリーナーの共演。二人の共演は【Kabhi Khusi Kabhi Gham】(2001)以来ですが、今回は二人の直接対決。そこで思ったのが、最近はギャラ高騰のせいなのかなんなのか、トップ女優の共演が少なくなったこと。ラーニーとプリティは4度も共演しているし、マードゥリーとカリシュマーをぶつけた【Dil To Pagal Hai】(1997)は大ヒット。シュリーデーヴィーとジャヤープラダーはライバル同士と言われながら何度も共演しています。もちろんカージョルが結婚引退、復帰を経ているからこそ実現したのかもしれませんが、やはり観客としては大物同士の共演は楽しみの一つです。作品中唯一のダンスシーンである「Jail House Rock」(プレスリーのカバー)では一緒に踊っています。もう二度と見られないかもしれません。
「Dil Khol Ke – Jail House Rock」
この曲以外にダンスシーンはなく、エシャーン=シャンカル=ローイの音楽にしては、全体として印象的ではありませんでした。
カージョル 不治の病に冒されるマヤ役

カージョルを好きでないという人がその理由としてよく挙げるのが「なにをやってもカージョルだから」。【We Are Family】では、カリーナーが演じるシュレヤから「パーフェクト・ママ」と言われるくらいの母親役。それを、それこそ【DDLJ】とそれほど変わらない雰囲気で演じられるカージョルという女優、好き嫌いは別にして、やはり特別です。
カリーナー・カプール 子供たちの継母になるシュレヤ役

《Stepmom》ではジュリア・ロバーツがやっていた役です。子供たちが多少甘いというのはありますが、子供たちに媚びたりせず、それでいて子供たちの気持ちを勝ち取るところなど、カリーナーらしくて良かったと思います。個人的には後半のようなメロドラマのカリーナーは好みではありません。
アルジュン・ランパル 二人の女性の板ばさみになるアーマン役

原作ではエド・ハリスがやっていた役(実は誰がやっていたか、記憶から欠落していました)。こちらのほうがだいぶハンサムです。二人の女性の間に挟まれつつも、出るべきところではちゃんと出る、なかなかおいしい役でした。いっぽう、出ないでいいところではあくまで控えめに。あくまで女優二人が中心の作品ですが、悪くありませんでした。
【We Are Family】
カージョルとカリーナーの(最後かもしれない)対決を見ておきたい人、メロドラマOKだという人、《Stepmom》と比較してみたい人、お勧めです。
おまけ
長女役アレヤ役の子役(Aanchal Munjal)。この手の作品の子役にしてはえらく美少女ですが、体つきは典型的なインドの女の子のぽっちゃり。このくらいが標準です。ちょっと安心しました。



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by madanaibolly
| 2010-09-11 06:50
| レビュー
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Comments(3)

はじめまして。最近、インド映画にハマってしまい、こちらにもよくお邪魔させていただいております。
ちょっとお問い合わせさせていただければと思うのですが、こちらの映画の監督さんが「Student of the year」のアビ役で出演されていた方と同じ名前のようですが、同一人物でしょうか?
ちょっとお問い合わせさせていただければと思うのですが、こちらの映画の監督さんが「Student of the year」のアビ役で出演されていた方と同じ名前のようですが、同一人物でしょうか?
アリーさん 別人です。もう1人のシッダールトが出てきてからだと思いますが、監督のほうは「シッダールト・P・マルホートラ」と名乗っているようです。それにしても、2人ともカラン・ジョーハルによって世に出ました。

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