2010年 08月 08日
【Aisha】 |

アニル・カプールの制作会社であるアニル・カプール・プロダクションがアニルの娘ソナム・カプールを主演に作った作品です。まさに「娘のために」といった作品で、ポスターも女優1人が写っているという珍しいバージョンも作られてました。
監督:ラジュシュリー・オージャ Rajshree Ohja. 出演:アバイ・デオル、ソナム・カプール、イラ・デュベイ、アムリタ・プリー、サイラス・サフカル、アルノダイ・シン、リサ・ヘイドン、アヌラダー・パテルほか
ラジュシュリー・オージャは初の監督作となります。
トレイラー
ストーリー
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裕福な家庭に育ったアイシャ(ソナム・カプール)は叔母(アヌラダー・パテル)とその結婚相手の大佐(ユーリー・スーリー)を出会わせたのが自分であることから、恋の取持ち役になることに夢中になる。そんなアイシャを幼馴染のアルジュン(アバイ・デオル)は批判するが、アイシャは人の役に立つことをしていると意に介さない。
アイシャの次の「プロジェクト」は結婚相手をさがすためデリーに送り出されてきたシェファリ(アムリタ・プリー)と自分を追い回している大手スイーツ・チェーンの冴えない御曹司のランディール(サイラス・サフカル)をくっつけること。しかし、ランディールはなんとアイシャにプロポーズしたり、大佐の息子でハンサムなドゥルヴ(アルノダイ・シン)の登場で、アイシャの「プロジェクト」は当初の意図とは違った方向に!
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軽いタッチのトレンディードラマ風ラブコメながら、古典の名作に基づく脚本を用い、演技のできる脇役を配して手堅く作られています。女性が主人公という、いまだボリウッドでは少ない作品ながら、それほど冒険はしていないという印象でした。欠点という欠点はない一方で、強烈にアピールするところもないため、ソナム・カプールのファン以外でどの程度観客を呼べるかは問題でしょう。
原作は19世紀イギリスの女性作家ジェーン・オースティンの『エマ Emma』。『エマ』は『高慢と偏見 Pride and Prejudice』、『マンスフィールド・パーク Mansfield Park』などとならぶオースティンの代表作です。オースティン作品はこれまで欧米でなんども映画化されており、『高慢と偏見』が最近ではキーラ・ナイトレイ主演で映画化されたほか、タイトルをもじった《Bride and Prejudice》がアイシュワリヤ・ラーイ主演で映画化されています。『エマ』はこれまでに何度も映画化されおり、最近では1996年にグウィネス・パルトロー主演のものがあります。
【Aisha】は主人公のアイシャが恋の仲介役を自認しているところは原作どおりですが、そのほかはゆるやかに原作に沿っているという程度で、翻案というくらい(それよりよく使われる「inspired by ~」がもっと適しているか)。しかし、他人の恋の世話に夢中になるあまり、真の他人への思いやりを見失ってしまうという主人公のキャラクターを中心に組み上げられたストーリーはしっかりしており、大崩れはしないでしょう。
作品全体の雰囲気はトレンディードラマ風ラブコメ。主人公たちのほとんどがお金には困っていない上流社会。男女4対4で相手がどんどん入れ替わる。これだけ聞くと日本でかつて流行ったトレンディードラマを思わせますが、【Aisha】はイギリスの貴族社会を描いた原作に基づいているだけにさらに上を行きます。ここでは「ミドルクラス」は他人を見下すための語。徹底した上流社会が舞台です。その一つが前半に出てくるポロ観戦。デリーにはデリー競馬場に隣接してポロの競技場があり、主に冬のシーズン中にはデリーのセレブが集う社交の場になります。ボリウッドがらみでは、夫がポロのプレイヤーである関係でカリシュマ・カプールが観戦に来ているのが一時期よく報道されていました。
【Aisha】の主人公はアイシャとその友人2人。女性陣を中心に据えており、男性はすべてその相手役といった感じの出演。アバイ・デオル演じるアルジュンですら、アイシャとは「友人であり、敵同士でもある」といった関係で、全体を通して恋愛関係としてはうっすらと描かれているに過ぎません。女性が主人公の作品としては最近ではプリヤンカ・チョープラー主演の【Fashion】(2008)がヒットしましたが、あちらはメインストリームから外れた思い切った冒険作。【Aisha】のようなオーソドックスなコメディ/ロマンスでは果たしてどのように受け入れられるでしょうか?
「Sham」
川辺でのキャンプファイヤー、とても雰囲気のいい曲です。
俳優陣の演技はみなしっかりしていました。
ソナム・カプール (恋の取持ち役を自認するアイシャ役)

キャリア4作目にして主演ですが、特に気負ったところもなく、まずまず無難にこなした感じでした。作中で友人から「自己中心的で、わがまま」と評されるように、必ずしも良い子の役ではありませんが、それほど嫌味にもならず、かわいく演じていました。相変わらずファッション性は高く、次から次へと変わる衣装でソナムのファッション・ショーという感じでもあります。
ヒット作となった【I Hate Luv Storys】に比べるとややコメディ色が強い作品でしたが、コメディも十分できると思います。また、少ないですが、真っ赤なドレスでのラテンダンスやサリーでのバングラなど、踊りも見せてくれました。次はシャーヒドとの【Mausam】がありますが、そこでは踊るのでしょうか?
ただ、どうしても【I Hate Luv Storys】とかぶる感じもします。そろそろ別のタイプの役にもチャレンジしてほしいところ。ジョン・グリシャム作品に出てくるような若手弁護士やジャーナリストなどをやってくれないかと思っています。
アバイ・デオル (アイシャの友人でもあり敵でもあり、のアルジュン役)

アイシャに向かってただ一人批判的なことを言えるという役です。【Manorama Six Feet Under】【Road Movie】、【Dev D】ですっかりアウトサイダー俳優というイメージが定着してしまったアバイですが、ジェネリア、ジョンらと携帯電話のCMに出演したりするなど、メインストリームへの復帰を目指しています。【Aisha】もその一環ですが、やはりややカタい感じです。もっともアイシャへの気持ちを批判という形で表してしまうというカタい役なのでまあちょうどいいでしょうか。
アムリタ・プリー (アイシャによって変身させられるシェファリ役)

ハリヤナの田舎から結婚相手を見つけるためにデリーに出されたシェファリはアイシャにとっては格好の目標。さっそく変身させてとある相手にくっつけようとします。アムリタ・プリー、今回デビューの新人ですが、かなり目立ってました。ところによってはソナムを食うようなところすらありました。見ながら《My Best Friend’s Wedding》でジュリア・ロバーツを完全に食っていたキャメロン・ディアスを思い浮かべました。果たして?印象としてはジェネリアあたりとかぶります。
最初の登場時は【Love Aaj Kal】(2009)でジゼル・モンテイロが演じたハーリーンにそっくり。パンジャービーの田舎娘となるとそういうイメージなんでしょうか?
イラ・デュベイ (アイシャの親友ピンキー役)

アイシャの親友で毒舌のピンキー役。イラ・デュベイ、こちらもヒンディー映画初出演ですが、好演はある程度予測がついていました。あのリレッテ・デュベイの娘です。英語作品の【The President is Coming】(2009)でデビュー。ちょっと棘のある雰囲気は母にそっくりです。姉のネハ・デュベイも女優で【Monsoon Wedding】(2001)に出ていました(現在、女優は休業中だそうです)。脇役タイプかと思いますが、今後活躍しそうな予感がします。
このほか、【Sikandar】(2009)にテロリスト役でデビューしたアルジュン・シンの孫アルノダイ・シンは、アイシャの心がちょっと動くハンサム役。モデルから今作デビューのリサ・ヘイドンはアルジュンの同僚兼ガールフレンド役、【Delhi-6】(2009)でソナムの写真を撮っていたサイラス・サフカルは大手スイーツ・チェーンの御曹司ながら、女性関係はさっぱりという役でした。アショク・クマールの孫のアヌラダー・パテルはアイシャの叔母役。
アドベンチャー・ゲーム風のオフィシャル・サイトはちょっと分かりにくいですが、面白いのでぜひ。
http://aisha.pvrcinemas.com/
【Aisha】
とにもかくにもソナムという人、今後期待できそうな新人女優さんたちを見ておきたい人、原作もしくはハリウッド版『エマ』と比べてみたい人、お勧めです。
おまけ
アイシャたちが買い物に繰り出す高級ブランドが入ったショッピング・モール。私がよく行く映画館があるショッピング・モールに隣接する(笑)モールです。あんなところ、怖くて足を踏み入れられませんが。


by madanaibolly
| 2010-08-08 18:40
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