2010年 08月 02日
【Once Upon A Time In Mumbaai】 |

監督:ミラン・ルトゥリア Milan Luthuria. 出演:アジャイ・デーヴガン、イムラーン・ハーシュミー、カングナー・ラーナーウト、プラーチー・デサイ、ランディープ・フーダー、ゴーハル・カーン
トレイラー
ストーリー
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1970年代のボンベイ。そのアンダーワールドを牛耳る男スルタン・ミルザー(アジャイ・デーヴガン)。しかし、彼はボンベイを愛し、街を汚す行動を嫌っていた。ボリウッド女優のレハナ(カングナー・ラーナーウト)を恋人とし、一般庶民にも人気があった。しかし、スルタンの配下でのし上がってくる男がいた。ショエーブ・カーン(イムラーン・ハーシュミー)。彼の野心にとってはスルタンでさえ最終的には征服すべき目標にすぎなかった。一方、野心家の刑事アグネル(ランディープ・フーダー)もスルタンたちの権力を抑えようと機会を窺っていた。ボンベイの支配者となるのはいったい誰か?
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力強いキャラクターと細かいところまで目を配った演出で、良く出来た作品だと思います。大いに楽しみました。インド裏社会の下克上を扱った作品はラーム・ゴーパル・ヴァルマの【Company】(2002)などがあり初めてではありませんが、ボンベイの権力の座を争うことになる2人(刑事のアグネルを入れると3人)のキャラクターが強烈です。現在のドンであるスルタンは裏社会を仕切り、高級品の密輸などを手がけるいっぽうで、「街を汚す」アルコールやドラッグは扱わず、他人が扱うことも許さないという設定。一種の義賊で庶民には警察や政治家よりも頼られる存在です。その座を狙うショエーブ。警察官の父に育てられた影響で歪んだ権力欲を持ち、一匹狼でスルタンとは対照的な性格です。さらに、野心家で自信家の刑事アグネルが加わった争いは表に裏に熾烈を極めます。
華やかさと過渡期のどこか危うげなところの混じった1970年代ボンベイの雰囲気を上手く再現してある点が本作の最大の長所でしょう。これはまずセピア色がかった映像を作ったシネマトグラフィーの功績です。また、女優のレハナは髪型、服装ともにいかにも1970年代という感じ。劇中で上映される映画のなかではメイクや笑顔の作り方まで当時の女優になりきっています。ショエーブの恋人ムムターズの服装もレトロな感じが出ていて作品の雰囲気作りに一役買っています。
ショエーブとムムターズがデートで見に行く映画は【Bobby】(1973). リシ・カプールとディンプル・カパディアが主演したヒット作で、リシ・カプールの事実上のデビュー作です(父ラージ・カプールの【Mera Naam Joker】(1970)に子役として出演)
雰囲気が良く出ているといえば、それもそのはずスルタンをはじめとする登場人物の一部は実在の人物に基づいているといわれています。スルタン・ミルザーはハッジ・ムスタン(ハッジ・マスタン・ミルザー)、ショエーブはダーウッド・イブラーヒーム Dawood Ibrahimがモデルのようです。もちろん、実際には2人の関係も作品のものとは異なります。むしろ、2人ともボリウッド女優と関係したり、メディアを賑わしたりした点がこの作品のインスピレーションとなっているようです。
スルタンの活動の中心は高級品の密輸ですが、密輸といえばボリウッドではアミターブ・バッチャン主演の【Deewaar】(1975)が有名です。そういえば、今回のスルタンの人物像は1970年代にバッチャンがよく演じていたギャングなどの役と重なるところがあります。
【Once Upon A Time In Mumbaai】の面白さはセリフにもあります。特にスルタンのセリフに多いですが、いちいちが決めゼリフであるかのようなセリフが次々に出てきます。また、スルタンのある意味キザな行動。たとえば、初めて会うレハナに贈るグアヴァを買うシーン。大きくても小さくても20パイサだという店主にスルタン、「アダムが食べたのがグアヴァで、それがこれだったらいくらで売る?」、店主「・・・400ルピー(当時だと数万円?)」、スルタン「それで買う」。このへんも1970年代のボリウッド作品に通じるところがあります。今の観客はいちいちセリフに反応したりはしませんが、昔だったら拍手喝采だったかもしれません。
音楽はプリタム。今回は場面に応じてバラエティに富んでおり、曲の入るタイミングも的確です。ショエーブとムムターズのデートシーンが中心の「Pee Loon」(イムラーンがちょっといやらしいですが)、レハナが出演する映画が上映される「Tum Jo Aaye」が素敵です。
「Tum Jo Aaye」
アジャイ・デーヴガン 独自の美学を貫くボンベイのドン、スルタン役

やることなすこと派手でキザですが、それでいて根は真面目なマフィアのドン、スルタン。アジャイの真骨頂です。それでいてその真面目さが命取りになるというのは、【Company】でも同じ。やはりアジャイに似合いの役なのでしょう。最後の最後まで美学を貫くカッコ良さが見られます。
イムラーン・ハーシュミー 強い権力欲を持つショエーブ役

スルタンの配下で頭角を現すにつれ、次第にその歪んだ権力欲が剥き出しになっていく役です。イムラーン・ハーシュミー、キス魔とか言われていますが、【Murder】(2004)、【Jannat】(2008)のように何かにとり憑かれたような役は向いています。もっとも、前半にムムターズといちゃつくところは「いつもの」イムラーンですが。
カングナ・ラーナーウト スルタンの愛を受ける女優レハナ役

ボリウッド女優のなかでは最も現代風の雰囲気と思っていたカングナですが、ここでは70年代風のファッションを着こなして、しっかりと昔風の女優になりきっています。劇中の映画の中で見せるスマイルなど、役作りは上出来。将来これでコメディにも挑戦してほしいと思います。唯一、難点があるとすれば、サリーがあまり似合わないことでしょうか。
プラーチー・デサイ ショエーブの恋人ムムターズ役

【Rock On!】(2008)、【Life Partner】(2009)ではお嬢様風の役でしたが、今回はその雰囲気を残しつつもギャングの恋人役。アブナイ世界に片足を入れているアンバランスさは、倒錯的な感じすらしました。しかし、ショエーブが次第に権力欲に取り憑かれていく過程にはあまり絡まず、後半は消えてしまったかのような印象だったのが残念でした。
ランディープ・フーダー マフィア取締りに情熱を燃やすアグネル刑事役
クレジットでは特別出演になっていましたが、かなり多く登場するするほか、話全体の語り部の役を担っています。自信家の刑事ながら、結局はスルタンやショエーブに翻弄されます。ランディープ・フーダー、それほど器用な俳優ではありませんが、合った役では力を発揮します。今回はなかなか良かったのではないでしょうか。
ゴーハル・カーン ディスコのダンサー役
ディスコのダンスシーンにアイテムガールとして登場します。モデル出身で、【Rocket Singh】(2009)ではちょっと皮肉な受付嬢役という変わったデビューでした。そして今回、一転してセクシーな踊り子役。なかなか個性的な役選びです。曲は【Apna Desh】(1972)の「Duniya Mein Logon Ko」(踊り、ムムターズ)および【Caravaan】の「Piya Tu Ab To Aaja」(踊り、ヘレン)から取られています。
「Parda」
【Apna Desh】(1972) 「Duniya Mein Logon Ko」
【Once Upon A Time In Mumbaai】
硬派ながらボリウッド的なギャング映画が見たい人、70年代レトロ感が好きな人、ボンベイ・アンダーワールドをとことん体験したい人、お勧めです。


by madanaibolly
| 2010-08-02 12:07
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