2009年 10月 07日
【Blue】 |
【Blue】、観てきました。かなり大掛かりな海洋アクション映画ということで、かなり前から話題にはなっていましたが、出来ばえは果たしてどうでしょうか?
制作:ディリン・メータ Dillin Mehta. 【Golmaal】(2006)、【Jab We Met】(2007)とほどほどの規模の作品を大ヒットにした経歴のあるプロデューサーですが、今回は最初からの超大作です。監督:アンソニー・デスーザ Anthony D'Souza. 今回が初監督です。出演:サンジャイ・ダット、アクシャイ・クマール、ララ・ダッタ、ザイード・カーン、ラフール・デーヴ。特別出演でカトリーナ・カイフ、カイリー・ミノーグ。
「Aaj Dil Gustakh Hai」
ストーリー(重要なネタバレはありません)
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カリブ海、バハマ。サガル(サンジャイ・ダット)は優れたダイバーで、四六時中考えているのは海のこと、魚のこと。恋人のモナ(ララ・ダッタ)との仲もうまくいっている。サガルは海を中心にした穏やかな暮らしに満足しているようだったが、友人でクルーザーの持ち主であるアーラヴ(アクシャイ・クマール)はもっと野心的。彼には密かに狙っているものがあった。それはバハマの海に眠る財宝、インド独立時にイギリスが植民地期に獲得した財宝の一部をインドに返還するための船「レディー・イン・ブルー」だったが、嵐に遭い、財宝を載せたまま海に沈んだのだった。父もダイバーだったサガルは財宝について何か知っているようだが、どうしても口を開こうとしない。
そのころバンコクではサガルの弟サム(ザイード・カーン)は苦境に陥っていた。高額の報酬を餌にマフィアのグルシャン(ラフール・デーヴ)から引き受けた仕事に失敗し、警察とグルシャンの手下の両方から追われる身となったのだ。窮したあげく、サムは兄を頼ってバハマへ。そして、それを追うグルシャンたちも。
グルシャンたちはモナを人質にとり、サムに金の返還を迫る。サガルたちには「レディー・イン・ブルー」の財宝しか道は残されていない。アーラヴは渋るサガルを説得し、財宝探しの海へと向かう。
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ある程度そんな予感はあったのですが、アクションにかまけて、ストーリーがなおざりになった印象の作品でした。登場人物の描写も浅く、ストーリー展開も部分的に唐突すぎたり、部分的にありきたりすぎたりと、全体としてまとまりを欠いていました。ストーリーの中にアクションがあるのではなく、先にアクションありで、その隙間でなんとかストーリーを進行させていくといった感じだからでしょうか。
サガルと彼から情報を得ようとして接近するアーラヴの関係も、微妙な関係だからもっと描写が必要と思われるのに、変なボクシング・シーンでお茶を濁したり。また、5万ドルの報酬の仕事をサムが失敗したからといって、5000万(単位を聞いてなかった!まさかドルではないですよね)を要求するほうがどうかしてると思うのですが。そんな違和感を抱えたまま、なかなか財宝探しを始めないのも、イライラしました。
そして肝心のアクションですが、水中アクションの部分については目新しさと見た目の美しさも手伝ってまずまずでした。しかし、その他のアクション(オートバイ・レース、銃撃戦など)はやや平凡で、ストーリーを押し退けてまで入れる必要があったのかと思うシーンも。車が吹っ飛ぶシーンだけなら、【Acid Factory】のほうが上でしょう。いつも思っていることですが、アクションというアクションはすでにハリウッドで使い尽くされています。ですから、アクションが生きるためにはそれがいかにボリウッド的なストーリーの中に適合するかどうかで決まるのではないでしょうか。【Dhoom 2】がボリウッド1のアクション映画の傑作と言われているのは、アクションだけが良かったからではないはずです。
「ストーリーを押し退けて」といえば、カイリー・ミノーグがゲスト出演する歌のシーンは余計以外の何物でもないです。宣伝用の歌と考えても、ララが水着になる歌のほうがよほど宣伝になってたのではないでしょうか。安易です。
見所はといえば、カリブ海の美しい風景でしょうか。ただ、こうした普段とは違う風景が際立つ作品だけに、セリフの安っぽさなどが目立ってしまいます。海や街の風景、美しい海中、そしてララの水着姿と、【Blue】はひたすら「眺める」ための映画になっています。まさに観賞用です。あ、それから、サメの名演技もです。
俳優たちが悪いかというとそうでもないのですが、全員、妙な違和感から抜け出せません。
サンジャイ・ダット (財宝の秘密を抱えて生きているサガル役)
どちらかというと内向きの役です。財宝のことで悩みがあるのはわかりますが、そのことによるアーラヴやサムへの態度など、それほど葛藤を表現できている感じはしませんでした。ただ、ララ・ダッタとのカップルは意外と(笑)似合ってました。
アクシャイ・クマール (財宝を狙ってサガルに接近するアーラヴ役)
前作の【8×10 Tasveer】、そして今回【Blue】と、アクシャイは新しい方向性を模索しているような気がします。今回は財宝を狙う野心的な男の役ですが、腹に一物も二物も抱えていそうな感じはでていました。その意気は買えますが、まだこの手の役を消化しきれている感じではありませんでした。
ララ・ダッタ (サガルの恋人モナ役)
水着姿が話題となりましたが、残念ながら、それ以上の役ではありませんでした。恋人サガルとの関係も展開に深く関わるものではないし、なんといっても途中で人質として連れて行かれてしまいます。ただ、水着シーンが映画前半の華になっていたことは間違いありません。なかなか優等生のイメージが抜けないララですが(【Jhoom Barabar Jhoom】ではコールガール役までやっても)、今回が突破口になるでしょうか。
ザイード・カーン (マフィアに追われ、バハマに逃れてくるサム役)
相変わらずですねえ。粋がって暮らしていたところを鼻っ柱を折られて・・・という役。ザイードには「不屈」の役か、逆にとことんの「堕落」「ダメ男」の役が必要でしょう。
ラフール・デーヴ (サムを追うマフィアのグルシャン役)
最近ボリウッドの悪役としてかなり売れています。今回も好演でした。確かに凄みのある顔をしていますが、今回【Blue】で気づいたのは、ラフール・デーヴ、バンコクやバハマにいても似合う!ということです。昔の悪役、アムリッシュ・プリがバハマにいたら似合わないだろうなあ、などと考えていました。ボリウッドの悪役も旅慣れてきたんでしょうか。
カトリーナ・カイフ
ゲスト出演でした。最初のワル風扮装は結構いけて良かったのですが、あとはふつうでした。
【Blue】
カリブ海の風景を眺めたい人、水着姿もそうでなくともララ・ダッタを眺めたい人、潜るのが好きな人、「ボリウッド初」ならとりあえずチェックという人、お勧めです。
(写真)
この映画唯一のカップル。いちゃついています。
ララが脱ぐなら、俺も
名演技のサメたち
by madanaibolly
| 2009-10-07 00:08
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