2009年 06月 16日
旧作探訪《Satyam Shivam Sundaram: Love Sublime》(1978) |

インド映画のDVDというのは、探してもなかなか見つからないのに、ある時ふと見つかったりするもので、これも先日そんな感じでみつけました(お金持っていてよかった)。
監督ラージ・カプール Raj Kapoor、出演:シャシ・カプール Shashi Kapoor、ズィーナト・アマーン Zeenat Aman
「真は神なり、神は美なり」。なんとも深遠なタイトルを持つこの作品はラージ・カプールの監督により1978年に作られました。ラージ・カプールは監督として10本の作品を残しましたが、【Awaara】(1951)、【Shri 420】(1955)など、自ら主演・監督した作品や、【Prem Rog】(1982)、【Ram Teri Ganga Maili】(1985)など数々の映画賞を受賞した後期の作品に比べると、この【Satyam Shivam Sundaram】(1978)はいまひとつ評価の点で劣るようです。しかし、この作品、そのストーリーの意外性、独特の雰囲気などから、ラージ・カプール監督作品のなかでも異彩を放っており、一種のカルト・ムービーといえるかもしれません。
ストーリー
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インドのある農村にあるヒンドゥー教寺院の僧侶の娘ルパ(ズィーナト・アマーン)。彼女の歌声は聴く者すべてを魅了する。しかし、彼女の顔の半面には幼い頃の火傷の傷跡が醜く残っており、見る者が思わず顔を背けてしまうほど。
都会からダム建設のエリート・エンジニア、ランジーヴ(シャシ・カプール)が工事のため、村にやって来る。ある朝、ランジーヴは寺院から響いてくるルパの歌声を耳にし、顔を見ぬままルパに恋してしまう。ルパもランジーヴを好きになるが、顔の傷を見せてランジーヴが離れていくことを怖れ、傷を隠したまま2人は会い続け、愛を深めていく。
しかし、結婚式の当日、ルパの顔の傷のことがランジーヴに分かってしまう。傷を見たランジーヴはルパがあの「美しいルパ」であることを信じようとせず、自分を騙して結婚させた偽の女と思い込んでしまう。その日から2人の結婚生活が始まるが、ランジーヴはルパに構おうとせず、家に閉じ込めたまま、自分は本物の「美しいルパ」を探しに歩く毎日。ランジーヴの愛を取り戻そうと、ルパは自ら「美しいルパ」になり、ランジーヴと逢瀬を重ねる。ルパは「美しいルパ」としてランジーヴと愛を交わし、ランジーヴの子を宿す。ランジーヴはルパが妊娠したのを知ると、ルパが他の男の子を宿したとして非難した挙句、ルパを捨て、出て行っていまう。
ルパの憤りは天の怒りに変わり、天が裂けたかのような大雨となり、ランジーヴのダムに決壊の危機が迫る。
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なんともすごいストーリーです。
ルパ役のズィーナト・アマーンは70年代、80年代の代表的美人女優で、アミターブ・バッチャンを初めとする多くの男優の相手役として数々の作品に出演しました。よく知られているのは、新【Don】(2006)ではプリヤンカがやったロマ役を、

旧【Don】(1978)でやったのがこの人です。

セクシーな役からクール・ビューティまで幅広くこなした美貌のズィーナトがこの映画では・・・

顔の傷といえば、ラージ・カプールの監督デビュー作である【Aag】(1948)も顔に傷を持つ男の話から映画が始まっていました。ラージ・カプールにとって何か特別の思いがあるテーマなのかもしれません。
ランジーヴ役はシャシ・カプール。ラージ・カプールの末の弟。

最近ではクナル・カプールの父と言ったほうがいいかもしれません。兄弟の中では一番の二枚目ですが、ときに冷酷な悪役もでき、今回の非情なランジーヴ役にはぴったりです。
ランジーヴがルパの歌声を初めて聞くシーンは有名です(歌はラタ・マンゲシュカル)
しかし、この後のランジーヴのセリフ、「歌声がこんなに美しいからには、本人はどれほど美しいのだろう?」。そもそもこの発想から間違っているんですけど・・・。
その後デートを続ける2人。どうして傷がバレないのか?

こうやって隠しているんです。インドだとこれが慎み深さだと思われ、怪しまれないのでしょうか?
これだけでもスゴイのに、結婚後に2役だと気づかず、ルパを「美しいルパ」だと思って会い続けるランジーヴ。

よっぽど思い込みが激しい人なのでしょう。子供まで作っているのに・・・
こうしてストーリーだけを追ってしまうと、えらい駄作みたいですが、全然そんなことありません。全編に漂う狂気をはらんだ緊迫感が映画を支えています。顔の傷について打ち明けられないことや、結婚後は2役になっていることに悩むルパのズィーナト、思い込みのあまり狂ってしまうランジーヴのシャシの演技もみものです。ラストの決壊寸前のダムの放水シーンや水没した村のシーン(これはどうやって撮ったのだろうと思います)の映像も迫力があります。また、タイトル曲を初めとして、音楽も素晴らしいです(【Satyam Shivam Sundaram】は一般に音楽が良い映画ということになっています)。
それから、顔に傷を持つルパが、なぜか服装その他でえらく艶かしいんです。

ズィーナトの、最近でもなかなかこれはないだろうというセミヌード・シーンもあったりして(Youtubeにはきっとあるはず、見たい人はさがしてみてください)。
設定の異常性と奇妙な官能性が混じり合い、この映画の独特の雰囲気を生み出しています。しかし、これは当時のインドではなかなか受け入れられなかったようで、当時、センサー・ボード(検閲局、日本でいえば映倫ですね)とかなりモメたそうです。
かなりの異色作。嫌う人には徹底して嫌われそうですが、ちょっと変わったものが見てみたいという人にはいいかもしれません。


by madanaibolly
| 2009-06-16 16:20
| 旧作探訪

