【Rann】 |
ラーム・ゴーパル・ヴァルマ監督の新作です。ヴァルマ監督お得意の社会の裏側を扱った作品で、今回はテレビのニュース・チャンネルを舞台にしています。
監督:ラーム・ゴーパル・ヴァルマ。出演:アミターブ・バッチャン、リテーシュ・デーシュムク、パレシュ・ラワル、モニーシュ・ベール、スディープ、グル・パナグ、ニートゥ・チャンドラ、ラジュパル・ヤーダヴ、シモーネ・シン。
トレーラー
ストーリー
*******************************************************************
インドで最も有名なニュース・チャンネル「インディア24×7」。創始者のヴィジャイ・マリク(アミターブ・バッチャン)はメディア界の大御所。息子のジェイは会社を実務面を担当するが、会社のさらなる拡大の野心を抱いている。そしてヴィジャイ・マリクに憧れ「インディア24×7」に新たに加わったプラブ(リテーシュ・デーシュムク)。
ジェイのもとに義兄(ラジャット・カプール)を通じ、野党政治家のモーハン・パンディーからの相談が持ちかけられる。それは北インドのある町で起きた爆弾事件について、現首相の知り合いと犯人とのつながりを示すニュースを捏造するというものだった。迷ったジェイだが、スクープの誘惑に負け、話に応じてしまう。ニュースを見たプラブは、犯人役の男をあるパーティで見かけていた。不審に思ったプラブは密かに調査を始める。
*******************************************************************
インドでは衛星放送の普及によって急激に多チャンネル化が進んでいます。インドでテレビのチャンネルを回して(実際はもう回しませんが)みると、ニュース専門チャンネルの多さに驚きます。ヒンディー語と英語ニュースのチャンネルだけで、ざっと20チャンネルほどあるでしょうか。この中には、「これってニュース?」と眉をひそめてしまうものもあります。常に「臨時ニュース (breaking news)」という字幕を掲げてニュースを流していたり、警察のいわゆるガサ入れを中継したり、センセーショナリズムに走るチャンネルも多くみられます。さらに最近はテレビが金を受け取ってニュースを流したことが問題になったりと、メディアをめぐる問題は尽きることがありません。【Rann】はそんなメディアのあり方と問う作品です。
作品としては良く作られていますが、ニュースの捏造、センセーショナリズム、政治家のメディア操作、メディアと金の問題など、どこか目新しさを感じさせません。1つにはハリウッドなどではすでに使い古されたテーマだからであり、もう1つには現実に同様の、あるいはそれ以上のことが起きている(少なくとも起きても不思議ではない)からでしょう。また、作品の核となる捏造ニュースが平凡なのが弱点になっています。
いっぽう、俳優たちの熱演が作り出す緊迫感はなかなかのものです。とことん腐敗した人物がいるかと思えば、一時の迷いから誤った道に迷い込む人物、そしてジャーナリストとしての気概を見せる人物もいます。複雑な人間模様を描いたドラマとして、十分に見ごたえがありました。
俳優陣はみな堅実な演技でした。
アミターブ・バッチャン (ニュース・チャンネル「インディア24×7」の創始者ヴィジャイ・マリク役)
全編に出ずっぱりというわけではありませんが、メディア界の重鎮の役ははまり役。まあ、「メディア界の」というところを「インド映画界の」に変えればそのままなんですけど。ラスト近くの放送シーンは迫力がありました。【Paa】もいいですが、こういう役がいいですね。
スディープ (ヴィジャイの息子ジェイ・マリク役)
父が作ったニュース・チャンネルをさらに大きくしようという野心を抱き、誘惑に負けてしまう役です。【Rann】の中心的な役であり、また最も印象的な役でもありました。スディープはヴァルマ監督のホラー【Phoonk】(2008)でデビューしました(観てませんが)。なかなか迫力のある俳優で、ヴァルマ監督好みといえますが、他の作品でも見てみたいです。
リテーシュ・デーシュムク (ジャーナリズムの良心を信じるプラブ役)
コメディでの出演が多いリテーシュですが、今回は信念のジャーナリスト役です。ただ、リテーシュの場合、石の信念というわけではなく、何度も挫けそうになりながらも最後には信念を通すというキャラクターでスーパーヒーローではない分、人間味に溢れています。好演でした。
パレーシュ・ラワル (メディアを利用して権力を握る政治家モーハン・パンディー役)
悪徳政治家。これ以上の配役はありません。
モニーシュ・ベール (ライバル・チャンネルのトップ、アムリシュ・カッカル役)
こちらは徹底して腐敗したジャーナリスト。金のためならジャーナリズムのあり方など問わないという考え方の持ち主。モニーシュ・ベールは往年の大女優ヌタン・ベールの息子で、若いころはヒーロー役などもやってましたが、その脇役として出ています。どうも、こういう小悪党が似合うみたいです。
グル・パナグ (プラブと同棲中の恋人ナンディタ役)
ボリウッドで今一番ミドルクラスの若奥様役(今回はまだ同棲中ですが)が似合う女優ではないかと思っています。衛星放送チャンネルのCMでアーミル・カーンの奥さん役をやっています。今回は役はそれほど大きくないですが、ピッタリとはまっています。ただ、まだセクシー路線にも未練があるのか、またヘンなグラビアで出てきたりしないかと心配です。
グル・パナグ、Tatasky アーミルとのCM
http://www.youtube.com/watch?v=XHgbwrH9SbY
内容的にはシリアス一色ですが、なんといってもRGV作品であり、社会派とかメッセージ性などにこだわらないで楽しむのがいいのではないでしょうか。
【Rann】
内幕物の好きな人、特殊メイクのアミターブはもう十分という人、リテーシュ・ファンの人、お勧めです。
今回は真面目なリテーシュ
悪徳政治家のパレーシュ・ラワル。見るからに悪そうです
スディープ