【Nakshatra】 |
来週がディワーリーで大作の公開が控えており、こう言ってはなんですが、今週は完全に谷間の週です。
監督:モーハン・サヴァルカル Mohan Savalkar 出演:シュブ・ムケルジー、サビーナ・シーマ、アヌパム・ケール、ミリンド・ソーマン
モーハン・サヴァルカルは初監督です。
トレイラー
ストーリー(ネタバレはありません)
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映画の脚本家を目指すアジャイ(シュブ・ムケルジー)。しかし、書いた脚本はなかなか受け入れてもらえず落ち込む日々。次の作品に着手する気も起きずテレビゲームに逃避し、コンピューター・エンジニアの恋人ジヤ(サビーナ・シーマ)にも愛想をつかされる寸前。そんなとき、ジヤのつてでアジャイに仕事の話が来る。プロデューサーを名乗るグループはアジャイに銀行強盗をテーマにした脚本を依頼する。アジャイは実際に博物館に展示中のダイヤの首飾り「星座」を盗み出すという脚本を書き上げる。防犯装置のパスワードを破る方法までリアルに描いた力作だった。
大きな仕事を終え、ジヤとの婚約も決まったアジャイ。だが、ダイヤの首飾りがアジャイの脚本どおりの方法で盗み出され、アジャイは警察に追われる身となる。身の証しを立てるべく真犯人を追う。だが、犯人グループのメンバーにアジャイが辿りつくたび、何者かに殺害されるのだった。
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ほとんど見どころのない平凡なスリラーでした。緩慢なストーリー展開、舞台設定やトリックの現実味の無さ、意外性の乏しい結末と、作品をつまらなくする要素が揃っています。
まず、なかなか事件が起きません。脚本家を目指す主人公が騙されて強盗のプランを書いてしまうというだけで、前半のほとんどが費やされます。前半は無駄といってもいいでしょう。せめて(古典的な手法ですが)冒頭に追われるシーンを持ってきて、脚本を書くまでを回想にするなどしてくれないと、観客は普通の青年の日常を延々と見させられることになります。
タイトルの【Nakshatra】は星、星座、占星術に使われる星図などを意味します。インドの占星術では天空をそれぞれの星に代表される27のNakshatraに区分します。ここから『ダヴィンチ・コード』のような謎解きがあるのかと思いきや、本編との関係はほとんど無し。ただ、盗まれる首飾りの名が「星座」で、(ネタバレでないので言いますが)その防犯装置のパスワードが「Nakshatra」というだけ。銀行のキャッシュカードですら誕生日などの分かりやすいパスワードは避けましょうといっているくらいなのに、このパスワード設定はありえません。
逃亡中のアジャイが犯人の目星を付けるきっかけを作るため、いろいろ伏線が張ってありますが、どれも無理がありました。しかし、もっと悪いのは、何かを思い出すと(なぜか簡単に会うことができる)恋人のジヤに頼んで検索(またはハッキング)してもらい、簡単に見つけてしまうことです。まったく現実味がないうえ、緊迫感を削ぐことにもなっています。
主人公役の二人は全く知りませんでした。
シュブ・ムケルジー (自分の書いた脚本のため警察に追われるアジャイ役)
作品が作品だけに仕方ない面もありますが、どこといって特徴のない若手俳優といった感じでした。シュブ・ムケルジー、デビューは【Aasma – The sky is the limit】(2009)(【Shadow】(2009)のローヒット・ナッヤル監督)で、今回が2作目。ここからいきなり飛躍は望めそうもないので、どこかの脇役で経験を積むしかないでしょう。
サビーナ・シーマ (アジャイの恋人ジヤ役)
こちらも輪をかけてどこにでもいそうな感じ。【Fast Forward】(2009)(若者が大勢出てくるタイプの作品)でデビュー。今回が2作目。たぶん、次に見ても顔を覚えていないのではないかと思います。
アヌパム・ケール (サビーナの家の友人シャラッド役)
やはり出てくると一人だけ空気が違います。しかし、もちろん作品の出来を左右するほどの役ではありません。
ミリンド・ソーマン (事件を追うグプテ刑事役)
モデル出身。もう10年くらいいろいろと出演していますが、やはり限界があります。「ハンサムなんだけどねえ」俳優。あまり深い演技を要求されないアクション作品などがちょうど良いでしょう。アクションを独り占めの今回はまあまあと言ったところ。
作品中の会話で、アジャイがジヤの友人に「ヒンディー語で星座 (constellation)を何ていうか分かる?」と質問して、彼女が答えられないという場面がありました。最近の英語混じりのヒンディーを聞いていると、難しいヒンディーの単語はどんどん使われなくなっていくのではないかと心配してしまいます。
【Nakshatra】
他に何も観るものがない人、いちおう結末(真犯人)は知りたいという人、「Nakshatra」という単語を覚えたい人、お勧めです。