2018年 01月 25日
【Kaalakaandi】 |
出演:サイフ・アリー・カーン、ソービター・ドゥリパーラー、イシャー・タルワール、クナール・ローイ・カプール、アクシャイ・オベロイ、ディーパク・ドーブリヤール、ヴィジャイ・ラーズ、アミラー・ダスドゥール
トレイラー
ストーリー
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ムンバイ。ある一夜に展開される三つのストーリー。末期ガンを宣告された男(サイフ・アリー・カーン)はなかば自暴自棄から口にしたドラッグで、未知の世界を体験する。アメリカ留学のため空港に向かう途中の女性(ソービター・ドゥリパーラー)はひき逃げをしてしまい、後悔にさいなまれる。大物ギャングの使い走りをしているチンピラ2人(ヴィジャイ・ラーズ、ディーパク・ドーブリヤール)は成り上がる計画を立てるがまだお互いを信用できず、夜の街をドライブしながら腹の探り合いをしている。
三つのストーリーは当事者が知らないところで少しずつ絡み合い、それぞれの結末を迎える。
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おそろしく下品ながら高いセンスを感じさせたカルト的ヒット作【Delhi Belly】(2011)(タイトルはインド旅行者が到着直後にかかる下痢のこと)。その脚本を担当したアクシャト・ヴァルマが監督した作品。主演にサイフ・アリー・カーン。これにヴィジャイ・ラーズ、ディーパク・ドーブリヤールなどの名脇役俳優ほか、ある程度名が知られた俳優を多数出演させています。
タイトルの「Kaalakaandi」は意味がわかりませんでしたが、マラーティー語のスラングで「物事がすべてひどく悪いほうに行く」のような意味とのこと。
【Kaalakaandi】も【Delhi Belly】と同じくナンセンスを含みながら突き進んでいくストーリーを構想していたと思われますが、残念ながらストーリーにおいても、コメディのセンスにおいても【Delhi Belly】を再現することはできませんでした。もっとも、【Kaalakaandi】弁護するならば、むしろ【Delhi Belly】のブラックなユーモアとストーリーの面白さとのバランスこそが奇跡的に絶妙なわけで、後の作品が簡単に真似できるものではないのでしょう。
突然余命いくばくもないことを告げられた男の話、ドラッグで見える幻覚の世界、ひき逃げをしてしまった女性の良心の痛み、下っ端ギャングの野心など、設定としては悪くありませんが、3つのストーリーに分割されたことで1つの話の掘り下げは不十分になってしまいました。たとえば、ドラッグによる幻覚の世界は全体でいえば十分の一程度で、ただCGを使いたかっただけなのかと思ってしまいます。
俳優の演技は悪くありません。特にサイフ・アリー・カーンは余命宣告の落胆とドラッグによるハイな状態の演じ分けは絶妙で、さすがの貫禄です。ひき逃げをした女性役のソービター・ドゥリパーラーもキャリア3作目にしてはまずまずでした。
こうしたブラック・ユーモア作品はもしかすると秀作を狙っても必ずしも上手くいかないものなのかもしれません。【Kaalakaandi】はそうした「狙ったが外した」感の強い作品でした。
音楽
「Kaala Doreya」
「Swagpur Ka Chaudhary」
プロモ用ソングですが、出演者総出でなかなか楽しいです。
出演者が多すぎて全員は紹介できないのでほんの一部だけ。
サイフ・アリー・カーン 末期ガンを宣告された男性役
どうも作品に恵まれない状況が続いています。【Rangoon】(2017)、【Chef】(2017)でもサイフの演技はいいし、作品もひどく悪いわけではありませんが、何か少し欠けている感じでヒットになりません。まあ、いずれは好転のきっかけに作品が出てくるとは思います。
ソービター・ドゥリパーラー ひき逃げを悔やむ女性役
(写真はこの作品のものではありません)
2013年の準ミス・インディア(ミス・インディア・アース)ですが、映画デビューはサイコ・スリラー【Raman Raghav 2.0】(2016)で、次がサイフ・アリー・カーン主演の【Chef】(2017)と、ミスコン出身者とは思えない渋い役選び。本作でも、もう少し深めないと良いキャラにはなりえない役でしたが、なかなかの好演。サイフ・アリー・カーンとは【Chef】から2作連続の共演。
イーシャー・タルワール カメラマンのラキー役
ムンバイ生まれですが、長らくマラヤーラム映画に出演していました。どういう経緯なのかサルマーン・カーン主演【Tubelight】(2017)に脇役で出演し、目立っていました。清純派タイプの美人ですが、ヒンディー映画に本格的に進出するにはそれ以外の役もできないといけませんが、いずれにしても今後に注目です。
『カンフー・ヨガ』に出演のアミラー・ダストゥールが特別出演。「ギャング編」のディーパク・ドーブリヤール、ヴィジャイ・ラーズは使い方がちょっともったいない気がしました。
【Kaalakaandi】
異質さを感じさせる作品が好きな人、アミラー・ダストゥールを見たい人、夜のムンバイで異世界体験をしたい人、おすすめです。
by madanaibolly
| 2018-01-25 00:21
| レビュー