【Rukh】 |
出演:アダルシュ・ゴウラヴ、スミター・ターンベー、マノージュ・バージパーイー(特別出演)
トレイラー
ストーリー
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実家を離れ学校の寮に住む18歳のドゥルヴ(アダルシュ・ゴウラヴ)は父(マノージュ・バージパーイー)が交通事故で死んだことを翌朝になるまで知らなかった。自分でもよくわからない感情に苛まれながら事故現場を訪れたドゥルヴは父の死に不審を抱き、事故を調べ始める。父の知人を訪ねるうち、ドゥルヴは父が経理を務める工場がある不正に関与していたことを知る。果たして父の死は単なる事故だったのか?やがてドゥルヴは驚くべき真相に突き当たる。
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【Ankhon Dekhi】(2014)(フィルムフェア賞最優秀脚本賞)、【Masaan】(2015)(カンヌ映画祭「ある視点」部門国際映画批評家連盟賞)、【Dhanak】(2016)(ベルリン国際映画祭子供審査員賞)、【Newton】(米アカデミー賞外国語映画部門インド代表作)など、内外の映画祭で受賞する作品を次々と送り出している制作会社ドゥリシュヤム・フィルムズ(Drishyam Films)の新作。
監督のアタヌ・ムカルジーは本作がデビュー。出演は子役出身のアダルシュ・ゴウラヴ。特別出演でマノージュ・バージパーイー。
父の死因に疑いを持った息子が真相を探るうちに思いがけない真実に出くわして、という設定ですが、【Rukh】はなんとも説明の難しい独特の雰囲気を持った作品でした。設定だけを聞くと肉親の死の真相を探す一種の素人探偵物とも言えますが、作風はまったく異なります。むしろアヌラーグ・カシュヤプ監督が得意とするフィルム・ノワールとも言えるし、さらには【Uddan】(2010)ような青春映画の要素も備えています。
父親(夫)の死から始まるにしては、異様に静かな語り口で物語が進みます。主人公は家を出て寮生活をしているため父の死を遅れて知らされて後から事故現場に行き、父の死は事故ではないと考えるようになります。とはいっても、なぜ事故ではないと思うのかはおそらく主人公自身にもわかっていないという設定です(のちに尾行されていることで確信します)。主人公のドゥルヴがなんとも印象的。なぜ父の死の真相を知りたいのか?父への想いか、それとも父を死なせた(殺した?)者への怒りなのか?無理に事故だと思い込もうとしている母への反発?それらすべてであると同時にどれでもない、よくわからない衝動にも見えます。
【Rukh】は事件の究明という形をとっていますが、結局のところ少年だったドゥルヴが父の死を経て大人になっていく「カミング・オブ・エイジ」青春映画というのがふさわしいのではないかと思います。
微妙な感情の動きを捉えつつ、次第に明らかになる真相の展開は緻密です。そしてあっと驚く結末。大げさな表現は避け、淡々とした表現が続きますが、非常に巧みに作られている印象です。キャストを含めてやや全体に地味なため、一般受けはしないかもしれませんが、実力のある監督による佳作です。
音楽
音楽はアミト・トリヴェーディーですが、目立ち過ぎないようにうまく背景に収まっています。
「Khidki」
「Hai Baaki」
アダルシュ・ゴウラヴ ドゥルヴ役
【My Name Is Khan】(2010)でシャールク・カーン演じるリズヴァーンの子供時代をやった子役だそうです。最近では【M.O.M.】(2017)で不良少年グループの一番年下の役でした。自分の中のもやもやを表現できずにいる少年の役が上手いです。
マノージュ・バージパーイーはクレジットには特別出演とありましたが、かなり登場時間はありました。母親役のスミター・ターンベーはマラーティー映画の女優。
【Rukh】
地味でも優れた作品が観たいという人、【My Name Is Khan】の子役の顔を思い出せる人、信頼のプロダクション「ドリシュヤム・フィルムズ」作品ならという人、おすすめです。