【Chef】 |
出演:サイフ・アリー・カーン、パドマプリヤー、スヴァル・カンブレー(子役)、チャンダン・ローイ・サニヤール、ミリンド・ソーマン
トレイラー
ストーリー
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ニューヨークのレストランで働く一流シェフのローシャン(サイフ・アリー・カーン)は、料理に文句をつけた客を殴って解雇される。ローシャンは次の仕事を探す間を利用して、別れた妻ラーダー(パドマプリヤー)と息子アマーン(スヴァル・カンブレ)が住むコチに行くことにする。
息子との再会を楽しむローシャンだが、やはり元妻ラーダーとの間はぎこちない。そんなとき、ラーダーが親しくしている実業家ビジュー(ミリンド・ソーマン)が古い二階建てバスを譲るので、移動食堂を始めてはどうかと勧めてきた。一流シェフとしてプライドや元妻の恋人からの申し出であることなどからローシャンは迷うが、結局申し出を受け入れる。
息子のアマーンとともに古いバスを改装して立派な移動レストランに仕立て上げ、ニューヨークで同僚だったヌズルーン(チャンダン・ローイ・サニヤール)も加わり、いまや準備万端。移動レストランはニューデリーに向けて出発する。
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ハリウッド映画【Chef】(2014)のリメイク作品で、監督は大ヒットになった【Airlift】(2016)のラージャ・クリシュナ・メーノーン。出演はサイフ・アリー・カーン、共演に舞台となるケーララに合わせてか、マラヤーラム映画出身のパドマプリヤー、脇役で変幻自在の演技力を見せるチャンダン・ローイ・サニヤール。
ニューヨークのレストランをクビになった一流シェフがインドに戻り、息子と一緒に移動食堂をやることで、親子の絆を取り戻すというファミリー・ドラマでした。ハリウッド作品が原作であってストーリーがしっかりしているうえに、料理シーンやケーララやゴア、デリー下町の風景を上手く取り入れた映像も綺麗でした。出演者の演技も自然で、良くできたファミリー・ドラマに仕上がっていました。
しかし、ハリウッド映画のリメイク感が残っており、それがインド映画として観るとやや違和感がある原因になっています。特にそれが感じられたのは、ローシャンとラーダーの元夫婦という設定でした。いくら息子がいるとはいえ、海外帰りで元妻のところに滞在するとか、元妻とダンスするとか、元妻の恋人っぽい男と仕事の話をするなど、そもそも離婚が珍しく、離婚したカップルが両方登場するのはさらに珍しいインド映画ではよほど丁寧に説明しなければいけないはずですが、意外とあっさりと、さも当たり前のように描かれていました。
これを観て思い出したのは米映画【Stepmom】(1998)(邦題『グッドナイト・ムーン』)をカラン・ジョーハルのプロデュースでリメイクした【We Are Family】(2010)。やはり元妻と現恋人の女性2人が登場する話で、カージョールとカリーナー・カプールを共演させる豪華キャストながら、やはり違和感を感じたのを覚えています。リメイクの際にどこまで設定をいじるのかは難しい問題ですが、(元)夫婦関係などは大胆に変更を加えたほうがいいのかもしれません。
料理と旅もテーマの作品だったので、もう少し料理を強調したほうが特色を出せた気もします。はっきりと登場するのはデリーで食べるチョーレー・バトゥーレーくらい。せっかくなのでケーララやゴアのご当地料理を料理番組のように並べてみせればよかったかもしれません。
作りは悪くなく、よくまとまった作品。残念ながらインドの観客には受けなかったようですが、むしろ日本人のほうが楽しめる作品かもしれません。
音楽
良く作品の雰囲気が現れた曲です。
「Tere Mere」
「Banjara」
「Shugal Laga Le」
サイフ・アリー・カーン ローシャン・カイラ役
実生活では長らく父親であり、【Ta Ra Rum Pum】(2007)で父親役をやっているサイフですが、独身貴族的な役が圧倒的に多かったのも事実です。そのおかげかどうか、本作の「これまで父親業をおろそかにしてきた父親」という役がよくハマっていました。どちらかというと元妻との間が元夫婦に見えませんでした。もっともこれは設定のせいもあるかもしれません。
スヴァル・カンブレー アマーン役
最近は子役といってもしっかりした役で、しっかりと演技ができる子を使うようになりました。本作ではもちろん重要な役。
パドマプリヤー ラーダー・メーノーン役
バラタナーティヤムのダンサーでマラヤーラム映画出身の女優で、ケーララが舞台ということでのキャストです。ヒンディー映画は南のシッダールトがヒンディー映画に主演した【Striker】(2010)以来の2作目です。とても落ち着いた美しさを見せましたが、父子関係がストーリーの中心になる作品なので、役としてはさほど活躍の余地はありませんでした。
このほか、【Jab Harry Met Sejal】(2017)では悪役だったチャンダン・ローイ・サニヤールがローシャンの同僚で移動レストランを手伝うコック役。ミリンド・ソーマンがラーダーの恋人かも(はっきりとは語られませんが)という役。
【Chef】はヒンディー映画ではまだ珍しいケーララ・ロケ。最近で記憶にあるところでは【Karthik Callin Karthik】(2010)で主人公の逃亡先として、南インド映画のリメイク【Ek Deewana Tha】(2012)ではオリジナルのロケ地そのままで、【Waiting】(2015)では夫が旅行先の事故で入院する病院の所在地としてケーララが登場します。いずれも「遠いところ」のイメージ。実際ヒンディー語圏から見ると遠いです。
【Chef】
ケーララの風景を見たい人、食べ物映画に目がない人、サイフの父親役がサマになっているかチェックしたい人、おすすめです。