【Toilet - Ek Prem Katha】 |
出演:アクシャイ・クマール、ブーミ・ペードネーカル、アヌパム・ケール、ディヴイェーンドゥ・シャルマー、アヌパム・ケール
トレイラー
ストーリー
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農村に住むケーシャヴ(アクシャイ・クマール)は列車で出会ったジャヤー(ブーミ・ペードネーカル)に一目ぼれ。ジャヤーは隣町に住む女性で、ケーシャヴが経営する自転車屋の配達先が偶然ジャヤーの家だったことで再会し、恋に落ちる。そしていくつかの障害を乗り越えて2人は結婚する。
結婚初夜が空けた翌朝、ジャヤーは驚く。ケーシャヴの村の家にはどこもトイレがないのだった。村の女性たちは毎朝日の出前に集団で村の外まで行って用を足すのだった。ジャヤーは屋外で用を足すことを拒み、ケーシャヴに家にトイレを作ってくれるよう頼むが、保守的な僧侶であるケーシャヴの父の頑強な反対に会う。しばらく2人は様々なな間に合わせのやり方でしのいできたが、やがて上手くいかなくなり、ジャヤーは実家に戻ってしまう。
ジャヤーに戻ってきてもらいたいケーシャヴは家にトイレを作ることを決意するが・・・
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アクシャイ・クマールの新作のテーマはタイトルどおりトイレ。なんだトイレかと言うことなかれ。そこにはインド農村の想像を絶する世界が広がっています。
主演はアクシャイ・クマール。最近は出演作がすべてヒットになる好調ぶりで、公開前から話題になった本作も当然期待されます。共演はブーミ・ペードネーカル。【Dum Laga Ke Haisha】(2015)の太ったお嫁さん役でデビューしましたが、その後のダイエットでまるで別人の変貌ぶり。前作を観ている人は本作でひたすら驚くでしょう。
監督のシュリー・ナーラーヤン・シンは過去にほとんど無名の【Yeh Jo Mohabbat Hai】(2012)を撮っており、本作が2作目。
インドではモディ首相の就任後すぐの2014年10月以来、「スワチ・バーラト・アビヤーン(クリーン・インディア・ミッション)」と呼ばれる政策が行われています。当初は全般的な清潔度向上運動でしたが、次第に主眼が数億人とも言われる屋外排泄の習慣をや止められるようトイレを建設する運動に移ってきました。トイレの建設は現在も続いており、トイレがテーマの【Toilet – Ek Prem Katha】は現代インドでは非常にタイムリーなテーマを扱った作品です。実際、モディ首相は本作のトレイラーを見て絶賛したとの報道もありました。
タイトルの「Toilet – Ek Prem Katha」は「トイレ―ある愛の物語」という意味で、わざとタイトル前半と後半の不釣り合い感を出しています。しかし、その不釣り合い感も含め、本作の内容を的確に表したものと言えるでしょう。また、【Gadar – Ek Prem Katha】(2001)のパロディでもあります。
序盤はケーシャヴとジャヤーの出会いから結婚までの、ごく普通の、やや古典的ともいえるラブストーリー。挿入歌「Hans Mat Pagli」のケーシャヴは完全にストーカーです。ここまで引っ張る必要はないかとも思いますが、出来は悪くないし、インド映画のお決まりということでいいでしょう。
中盤は「ジュガール(jugaad)」編とでも言いましょうか。最近インドについて書かれたものでたまに聞くようになったジュガール。インド人が得意な臨機応変(悪く言えば行き当りばったり)の工夫を言います。ケーシャヴはジャヤーの用足しのために一生懸命ジュガールに励みます。もちろん根本的な解決にはなりません。
そして後半はケーシャヴがトイレを作るために努力します。日本人的な感覚からすると「トイレ作れば済む話でしょ」となりますが、そうはならないちょっと想像を絶する世界が展開し、観客は圧倒されます。
【Toilet】はトイレの問題のほかにもインドの慣習や迷信を扱っていて興味深いところです。ケーシャヴはジャヤーと結婚する前、占いの結果で牝牛と結婚させられており、「結婚しているが独身」です。牛との結婚というテーマはすでに【Miss Tanakpur Haazir Ho】(2016)
で扱われています。また、木と結婚する話は【Philauri】(2017)にありました。また、6本指を吉兆と考えるという話も登場します。リティク・ローシャンがそうであることは有名ですが、それでも映画の中で「リティク、リティク」とか言ってしまっていいんでしょうか。
アクシャイ・クマールは安定の演技。ブーミ・ペードネーカルは言うべきところははっきりと言う現代の女性を好演。彼女の怒りがなければ今回の話はなかったわけで、ほとんど怒ってときたまかわいいさを見せるその比率が絶妙でした。
【Toilet – Ek Prem Katha】は確かにタイムリーな時事ネタを取り上げたものですが、それだけではここまで面白いものにはならかったと思います。やはりトイレの問題を上手くラブストーリーに当てはめたからこそでしょう。アイディアの勝利という作品です。
音楽
音楽は複数の作曲家が担当。
「Hans Mat Pagli」
これだけ見ると立派なストーカーです。
「Bakheda」
「Gori Tu Latth Maar」
ホーリー・ソング。女性がパートナーの男性を叩くしぐさをするものらしいです。
アクシャイ・クマール ケーシャヴ役
庶民の中から現れるヒーローを演じさせたら今アクシャイの右に出る俳優はいません。本作もそうでしたが、ヒンディー語映画で今一番ウケるのがそうしたヒーロー。アクシャイ出演作のヒット連発の秘密はそのへんにありそうです。
ブーミ・ペードネーカル ジャヤー役
デビュー作【Dum Laga Ke Haisha】(2015)以後のすごいダイエットで話題になりましたが、本人によるとあれは役のためにかなり太ったとのことです。しかし、それならそれですごい役作りです。本作ではそんなダイエットの話題など忘れてしまういい演技でした(最初は多少ジロジロ見てしまいましたが)。主人公の男性と対等にわたりあえる女性の役が上手。現代的な女性の役ができる女優として、これからも需要がありそうです。
【Dum Laga Ke Haisha】
そのほか、アヌパム・ケールがジャヤーのおじさん役(髪あり)、【Pyar Ka Punchnama】(2011)、【Chashme Baddoor】(2013)などで主人公の親友役が多いディヴイェーンドゥ・シャルマーがケーシャヴの弟役。
【Toilet – Ek Prem Katha】
インドの屋外排泄問題を考えたい人、社会問題密着型ラブストーリーを観たい人、スリムなブーミ・ペードネーカルを見たい人、おすすめです。