【Tubelight】 |
出演:サルマーン・カーン、ソーヘル・カーン、朱珠(Zhu Zhu)、オーム・プリー、シャールク・カーン(特別出演)、モハンマド・ズィーシャーン・アユーブ、イーシャー・タルワール
トレイラー
ストーリー
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1960年代、北インドの町に住むラクスマン(サルマーン・カーン)はやや知恵遅れのところがあるため、子供の頃から「チューブライト(蛍光灯)」と呼ばれていじめられてきた。しかし、そんなラクスマンを助けたのはしっかり者の弟バラト(ソーヘル・カーン)だった。
やがてインドと中国の国境付近で緊張が高まり、バラトは軍に入隊し中国の国境に向かう。バラトの軍が国境についたちょうどその時、中国軍の攻勢により中印国境紛争が勃発し、バラトは行方不明になる。
そのころラクスマンが住む町はずれの家に中国系の母子が引っ越してくる。母のリー(朱珠)、息子のグともにインド生まれだが、中国系ということで町の人たちから敵視される。ラクスマンは兄弟の教師的存在であるバンネー・チャーチャー(オーム・プリー)の教えに従い、彼らの友人になることを決意する。
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イード(イスラム教の断食明けの祭日)に合わせたイード公開。過去2年のイード公開作【Bajrangi Bhaijaan】(2015)、【Sultan】(2016)がいずれも大ヒットになり、いまやサルマーン・カーンの定位置といえる場所になっています。
今年のイードもサルマーン主演作。監督はカビール・カーンで【Bajrangi Bhaijaan】と同じ組み合わせです。共演はサルマーンの実弟ソーヘル・カーン、今年1月に亡くなった名優オーム・プリー、中国人女優の朱珠(Zhu Zhu)。そして公開前から話題になったのが、サルマーンとは長い間不仲だったシャールク・カーンの特別出演でした。
北インドの山々に囲まれた小さな町を舞台に、サルマーン・カーンが少し頭は弱いが純粋な心を持つ「チューブライト」ラクスマンを演じる感動作です。カビール・カーン監督作品らしくメッセージ性もあり、よくまとまっていました。1962年の中印国境紛争を背景にして、国同士の戦争が人々の心に暗い影を落とす状況にあっても国籍や人種を越えた愛情や友情を忘れるべきではないと訴えています。中国との戦争のさなかに町に引っ越してくる中国系の家族(当然町の人々からは敵視されます)と主人公の友情のエピソードは昨今現実世界での中国とインドの緊張の高まりもあって非常にタイムリーです。
しかし、【Tubelight】は直接の内容や出来とは異なる以下の二点のために、全体としてはすんなりと受け入れられませんでした。
ひとつはあまりに【Bajrangi Bhaijaan】と似ていることです。作品の主な舞台は北インド、ヒマラヤ山中の田舎町。パキスタン・カシミールから始まった【Bajrangi】と雰囲気が似ており、冒頭のクレジット・シーンが高峰の空撮なのも同じ。サルマーン・カーンが純粋な善人キャラを演じるところも共通しています。もちろん監督が同じなので同様の作風になっても不思議ではないのですが、やはり「二匹目のドジョウ」狙いは明らかです。
もうひとつは過去のサルマーン主演作でも批判があったサルマーン・ファミリーの「内輪ウケ」。最近のサルマーン主演作では唯一の失敗作とされる【Jai Ho】(2014)のプロデューサーだった実弟のソーヘル。今回は作中でラクスマン(サルマーン)の弟役です。今回特に演技が悪かったわけではありませんが、俳優としての実績を考えるとやはり「実弟だから」という印象が強くなります。これらはサルマーンの作品に関するニュースや過去作品を知らず、予備知識なしに観る人であれば気にならないかもしれません。
サルマーンの演技もわざとらしさが目立ちました。完全に役を自分のモノにしていた【Bajrangi】とは異なるところでしょう。
良心的な感動作ですが、「良心的な感動作」を狙ったところが見えすぎてしまっているのが残念です。もちろん、ふつうに観るには十分な出来だと思います。
音楽
音楽はプリータム。「Radio」は印象に残るいい曲ですが、その他は平凡。
「Radio」
「Naach Meri Jaan」
「Main Agar」
サルマーン・カーン ラクスマン「チューブライト」役
サルマーンはどんな役をやってもサルマーンで、それが長所でもあるのですが、今回に関してはサルマーンの個性と「子供の心を持つ大人」という役が衝突してしまった感じです。どうしても「ラクスマン=サルマーン」に思えてきませんでした。
ソーヘル・カーン バラト役
うまい俳優とは言い難いですが、それでも本作は特に戦場でのシーンはいいところを見せていました。しかし、どうしてもスター性に欠けるところが否めません。「ソーヘルが絡むとサルマーン作品が冴えなくなる」という妙なジンクスにならなければいいのですが。
朱珠 リー役
インド生まれにもかかわらず中国系ゆえに村人から敵視されるものの、ラクスマンとの間には次第に友情が芽生えていくという重要な役でした。挿入歌「Radio」ではダンスにも参加するなど大活躍でした。
オーム・プリー
【Tubelight】は名優オーム・プリーの遺作の一つです。小規模作品で今後も公開されるものがあるかもしれませんが、大作では間違いなく本作が最後の登場です。涙なしには見られません。
このほか、ほんの脇役ですがマラヤーラム映画などに出演しているイーシャー・タルワールがヒンディー映画初出演(子役除く)。
シャールク・カーンの特別出演が話題になりましたが、それもそのはず、挿入歌での共演は【Om Shanti Om】(2007) 以来、特別出演での共演では【Kuch Kuch Hota Hai】(1998)以来となります。それ以前には【Karan Arjun】(1995)での共演があるだけです。さてシャールクの役は・・・。見てのお楽しみですが、意外とサルマーンとの絡みもありました。
【Tubelight】
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