【Kaabil】 |
出演:リティク・ローシャン、ヤーミー・ゴウタム、ローニト・ローイ、ウルワシー・ラウテーラー(アイテム・ソング出演)
トレイラー
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ストーリー
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生まれつき目が見えないローハン(リティク・ローシャン)は快活で親切な青年。優れた聴覚を持ち合わせ、いくつもの声色を使い分ける声優として生活している。ローハンは知人の紹介でやはり目が見えない女性スプリヤー(ヤーミー・ゴウタム)と出会い、恋に落ちる。そして2人は、目が見えない同士の結婚生活への不安を克服して結婚する。
新婚生活を満喫する2人だったが、近所に住む政治家マーダヴラーオ(ローニト・ローイ)の息子アミト(ローヒト・ローイ)がスプリヤーに目を付けたことから、ローハンとアミトの間に諍いが生じる。そして、それがローハンとスプリヤーに大きな悲劇をもたらすことになる。復讐を誓うローハン。だが、目が見えないローハンに復習を遂げることはできるのか?!
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リティク・ローシャン主演作。視覚障害者のリティクが愛する人のために復讐の鬼になるというストーリー。やはり視覚障害者というヒロインには【Vicky Donor】(2012)、【Badlapur】(2015)のヤーミー・ゴウタム。監督は【Shootout at Wadala】(2013)、【Jazbaa】(2015)のサンジャイ・グプター。
序盤は視覚障害者同士のラブストーリー。2人とも目が見えないことによるアクシデントも負けず、愛を育んでいきます。ショッピングモールで人込みに押されてはぐれてしまうエピソードなどはいかにもインド映画っぽいです。また、挿入歌「Mon Amour」のような2人によるダンス・シーンもあります。「暗闇と暗闇じゃあ光にならないわ」「でも、暗闇でも誰かと一緒にいれば、暗闇も少なく感じられるだろ?」という印象的なセリフもあります。
途中から強烈な復讐劇に変わっていきます。復讐そのものよりも、復讐のきっかけになる事件がかなりどぎついです。悲劇はとことん悲劇的に悪役はとことん悪役になっており、復讐劇としての設定は単純そのもの。そのへん同じくリティク主演の復讐劇【Agneepath】(2012)のようなドラマとしての深みはなく、【Badlapur】(2015)のように復讐そのものの意味を問うこともありません。
しかし、設定が単純な分、リティクは光っていました。最初の幸福感から苦悩、そして復讐へと転じる感情の変化を巧みに演じています。ヒーロー物のリティクもいいですが、こうした人間臭い役も同じくらい良く演じられるところはさすがにトップ・スターです。
とことん悪い奴をやっつける復讐劇というドラマ部分は十分(すぎ)ながら、「視覚障害者による復讐劇」という技術的な部分はやや面白みに欠けました。視覚障害者による犯罪(復讐も法的には犯罪のことが多いです)物は、著しい困難が伴う反面、実行しても犯罪の立証が難しいという点に立脚しており、ボリウッドではかつて視覚障害者のチームによる銀行強盗を描いた【Aankhen】(2002)があります。
視覚障害者が目が見える敵を相手に戦うという設定では、本来不利なはずの戦いを対等にするためのさまざまなアイディアを盛り込むことになります。【Kaabil】でもローハンはいろいろな工夫を凝らしていましたが物足りません。それは、さまざまな仕掛けをするだけではなく、それが思わぬ誤算によって崩れて主人公がピンチに陥るかというところまでなくてはならず、【Kaabil】ではその点が弱かったと思います。かつてオードリー・ヘップバーン演じる視覚障害者の女性が室内で殺人者と戦う『暗くなるまで待って』(1967)(Wait Until Dark)ではその「誤算」に息を飲んだものです。もっとも、昔は普通の人が持つ明かりはマッチかライターくらいでしたが、現代の人はみんなアレを持っているという時代の違いもありますが。
リティクがスーパー・ヒーローではない分、逆にリティクの演技や存在感を楽しむ作品でした。
音楽
音楽はリティクの叔父ラジェーシュ・ローシャン。
「Kaabil Hoon」
タイトル・ソング
「Mon Amour」
「Haseeno Ka Deewana」
ウルワシー・ラウテーラーのアイテム・ソング。【Yaarana】(1981)「Sara Zamana Haseeno Ka Deewana」のカバー。
【Yaarana】(1981)「Sara Zamana Haseeno Ka Deewana」
アミターブ・バッチャンとニートゥ・シン(ランビール・カプールの母)。アミターブが【Sholay】(1975)で宿敵ガッバル・シンを演じたアムジャド・カーンと大の親友同士になるという作品。
リティク・ローシャン ローハン役
満を持して公開された【Mohenjo Daro】(2015)が大コケでしたが、さすがはスーパースター、しっかりと持ち直してきました。【Kaabil】は作品としては詰めが甘いのですが、リティク仕様の作品だけあって、リティクの良さがよく出ていました。
ヤーミー・ゴウタム スプリヤー役
華やかな美人にもかかわらず、どういうわけか「あのころは良かった」という薄幸な役ばかり。今回のリティクとの共演も出世ではありますが、どちらかというと役柄でキャストされた感じです。リティク仕様の作品で「使われて」しまった印象。
ローニト・ローイ マーダヴラーオ役
ハイパーな悪役か頑固な父親[【Udaan】(2010)、【2 States】(2014)] が多いローニト。本作はそれらを両方いっぺんに。「悪役はとことん悪に」とコンセプトには合致。
視覚障害者のダンスで思い出したのはこれ。
【Lafangey Parindey】(2010)
「Man Lafanga」
インド映画ファンの元ネタさがし好きによると、【Kaabil】の元ネタはハリウッド映画【Blind Fury】(ルドガー・ハウアー主演『ブラインド・フューリー』、1989年)(視覚障害者のアクション)と韓国映画【Broken】(2014)(復讐)だそう。前者は御存じ座頭市のハリウッド版。後者は東野圭吾の小説『さまよう刃』が原作。元ネタをさらにたどっていくとどちらも日本にたどり着きます。
【Kaabil】
リティク・ローシャンのファンの人、薄幸なヒロインが好物という人、極悪親子を見たい人、おすすめです。