2017年 02月 01日
【Haraamkhor】 |
出演:ナワーズッディーン・シッディーキー、シュウェター・トリパティー
トレイラー
ストーリー
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風の強いグジャラート州のとある農村。その村の平凡な学校教師シャム(ナワーズッディーン・シッディーキー)は副業として自宅に子供たちを集めて勉強を教えている。あるときシャムはそこに通ってくる女子生徒のサンディヤー(シュウェター・トリパティー)がなんとなく気になり始めていた。
サンディヤーは警察官の父と2人暮らし。日頃から父の行動を怪しんでいたが、ある日、父の車に隠れて父の後をつけ、父に愛人がいることを知る。情緒不安定になったサンディヤーは、とうとうシャムと関係を持ってしまう。
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トレイラーを見るとなにやら楽しげで、【Stanley Ka Dabba】(2011)(『スタンリーのお弁当箱』)のような子供映画を想像していました。しかし、実際の内容は学校教師と15歳の生徒との禁断の恋の話。冒頭には「つねに危険に晒されている多数の女子生徒の状況について警告を発する作品」だという説明文が表示されます。
教師役にナワーズッディーン・シッディーキー。生徒役には【Masaan】(2015)のシュウェター・トリパティー。若くて(かっこいい)男性教師に女子生徒が憧れるというのはよくある話ですが、今回ナワーズッディーン・シッディーキーが演じるのはどこからどうみても平凡な中年男。それが15歳の生徒と恋愛関係に陥ります(もちろん、若ければ生徒と関係を持っていいという意味ではありません)。
2人の関係については特に批判的に描くというわけではなく、ごく自然なストーリーとして展開します。主演の2人が演じる登場人物はいずれもどこにでもいそうな教師と生徒。起きる出来事もどこでも起きそうな出来事ばかり。こうして作品は、現実では社会的には許されない教師と生徒の恋愛関係でも条件さえ揃えば起きても不思議ではないと感じさせます。
【Haraamkhor】ではその条件は2つ。1つはインドではよくあることですが、シャムは放課後に希望する生徒を自宅に集めて勉強を教えています。これがサンディヤーとの物理的な近さを生みます。そして、2人の関係のきっかけになったのは、サンディヤーがある事情からシャムの家に泊まることになった時でした。
もう1つはサンディヤーの家庭事情。父子家庭だったところに父に隠れた愛人がいることが発覚しました。サンディヤーにとってはこれが精神的なきっかけになったといえます。ちなみに、この愛人はこうした話では珍しく良い人で、ストーリー上でも重要な役割を果たします。
なかなか取り扱いの難しい題材かと思いますが、【Haraamkhor】は2人の関係を軽々しくでもなく、かといって説教じみもせず、淡々と描いていきます。2人の関係について微妙な葛藤を感じているのは先生のシャムのほうですが、そのへんはナワーズッディーン・シッディーキーが非常に上手く演じています。
ただ1つの難点は、サンディヤー役のシュウェター・トリパティーがどうしても15歳には見えないこと。なかなかかわいらしいのですが、さすがに実年齢を考えるとしかたないでしょう。内容的に本当の15歳の女優を使うわけにいかなかったのだと推測します。
結末だけは少しギョッとします。それまでのストーリー展開の結末としてこれでいいのかどうかは多少疑問を持ちました。ただ、それまで役割がはっきりしていなかったサンディヤーのクラスメートの男の子2人の役割がここで生きてきます。
教師と生徒の恋愛という非情に扱いの難しいテーマを落ち着いた語り口で形にした作品です。
音楽
【Khoobsurat】(2014)の「Preet」で映画音楽デビューし、その後【Shivaay】(2016)の「Raatein」や【Dear Zindagi】(2016)タイトルソングなど、いま非常に活躍している女性シンガー、ジャスリーン・ローヤルが音楽監督も手掛けています。
「Kidre Jaawan」
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ナワーズッディーン・シッディーキー 教師のシャム役
ナワーズッディーンは本作品への出演をギャラ1ルピー(実質タダ)で引き受けたそうです。俳優ナワーズッディーンにとって魅力的な役だったということでしょうか。どこから見ても平凡な教師で平凡な男の役を非凡に演じています。
シュウェター・トリパティー 生徒のサンディヤー役
【Masaan】(2015)がデビューですが、それまでもテレビ・ドラマやCMなどに出演している実力のある女優です。さすがに外見的に15歳には見えませんでしたが、家庭の問題から教師と関係を持ってしまう少女の役としてはしっかりと演じていました。
本作はグジャラートの農村でわずか16日間で撮影されたそうです。典型的なインドの農村の風景ですが、ただ風力発電の風車があるシーンはどこか超現実的な雰囲気を漂わせます。2人が肉体関係になってしまうのもそこでのこと。
【Haraamkhor】は最初、中央映画認証委員会(検閲局)から上映禁止とされましたが、上訴機関である映画認証上訴委員会(FCAT)は同作品を社会的に責任あるものと認め、上映を認める逆転判決を出しました。
【Haraamkhor】
教師と生徒の恋愛がテーマなら観たいという人、その教師がナワーズッディーンなら観たいという人、おすすめです。
by madanaibolly
| 2017-02-01 02:21
| レビュー