【OK Jaanu】 |
出演:シュラッダー・カプール、アーディティヤ・ローイ・カプール、ナスィールッディーン・シャー、リーラー・サムソン
トレイラー
ストーリー
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ゲーム・デザイナーのアディ(アーディティヤ・ローイ・カプール)は駅のホームで不思議な出会いをしたターラー(シュラッダー・カプール)と友人の結婚式で再会する。ターラーは建築家になるためパリで勉強したいと考えており、アディはアメリカに行って成功したいと思っている。
2人はやがて恋に落ちるが、2人ともキャリアを捨てて結婚するつもりはない。そこで2人が思いついたのは同棲。驚き反対するアディの家主ゴーピー(ナスィールッディーン・シャー)を説き伏せ、ターラーはアディの部屋に転がり込む。こうして始まった2人の同棲生活、結末はいかに?
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【Dil Se】(1998)などで知られるマニラトナム監督のタミル映画【O Kadhal Kanmani】(2015)のリメイクです。
オリジナル【O Kadhal Kammani】(2015)トレイラー
今回マニラトナム監督はカラン・ジョーハルらと共に制作に回り、監督はアビシェーク、ラーニー主演のヒット作【Bunty Aur Babli】(2005)で知られるシャード・アリーが務めています。シャード・アリー監督は【Dil Se】や【Guru】(2007)などマニラトナム作品で助監督を務め、また【Saathiya】(2002)のように同監督作品のリメイクの監督をしたこともあり、マニラトナム監督の弟子といえます。
主演はアーディティヤ・ローイ・カプールとシュラッダー・カプールの【Aashiqui 2】(2013)の2人。2人にとってブレイク作品になった同作。それ以来の共演です。オリジナルではプラカーシュ・ラージが演じて印象的だった家主役にはこちらも名優ナスィールッディーン・シャー。家主の妻を演じるリーラー・サムソンはただ一人、オリジナルとの両方に同じ役で出演しています。
【OK Jaanu】はオリジナルの非常に忠実なリメイクで、設定もストーリーもほぼオリジナルを再現しています。ですので以下はオリジナルを観たときの感想も混じっています。
オリジナルの公開時から新しい男女関係としての同棲がテーマと言われていましたが、実際に観てみると同棲は作品のテーマのほんの一部でしかありません。同棲生活を場面として扱うところもほんのわずかでした。
前半のみどころは主人公の2人が出会い、愛を深めていくプロセス。ちょっと変わった出会い(2回あります)のシーン、デート・シーン、旅先でのハプニング。それから同棲が始まり、またそれに伴うエピソードが展開していきます。この過程で次第に2人の結婚観(正確には結婚否定観)が明らかになっていきます。ターラーの場合、建築家志望というキャリアの問題に加え、別の問題も彼女の結婚観に影響していることもわかってきます。
後半になるとその2人の結婚観が揺れ始めます。もちろん、突如結婚したくなったというような単純なものではなく、2人がそれぞれキャリアを追及し、かつ2人の愛が成就する方法として今のやり方でいいのかという迷いのようなものだと思います。そして、最後にそうした迷いを捨て、2人が将来について決定するきっかけとなるエピソードが起こります。
タミル版がヒットした要因が題材の斬新さだったのかどうかわかりませんが、タミル版を観ているときから「ヒンディー映画ではさほど斬新には見えないテーマだろうな」と思っていました。【OK Jaanu】を新しい男女関係を提示する作品として期待して観ると、特に終盤の問題の解決には不満を持つ人もいるかもしれません。しかし、最近の作品にありがちな、「新しい男女関係の形を提示しながら、ストーリーにオチが付かない」という失敗には陥っていません。最終盤の展開はドラマチックで、ストーリーを無難に、あるいはそれ以上にまとめています。
作品の作りが同じであるため、オリジナルとの比較ではどうしても出演者の比較になってしまいます。リメイクのキャストを聞いたとき、オリジナルのキャスト(デュルケル・サルマーン、ニティヤー・メーナン)に比べると分が悪いかなと思ってしましました。確かに【Aashiqui 2】の相性が良い2人ではあるものの、オリジナルに比べるとちょっと若すぎる印象でした。実年齢ではなく作品中での印象です。別の言い方をするとオリジナルほどアクが強くありませんでした。
もっとも、2人の演技自体はさほど悪いとは思いません。むしろ、差が出たのはオリジナルのプラカーシュ・ラージが凄みのある演技だったの比べ、リメイクのほうは名優ながらナスィールッディーンは無難にまとめた感じだったことでしょうか。
【OK Jaanu】を観る際には、オリジナルのタミル版との比較や作品のメッセージ性にこだわらないほうがいいでしょう。相性のいいボリウッドの若手2人によるフレッシュなラブストーリーとして楽しめると思います。
音楽
音楽はオリジナルと同じくA.R.ラフマーン。オリジナルのカバー曲もあれば、似た曲調ながら異なる曲もあります。全体としては聴きやすいいい曲が揃っています。
「OK Jaanu」
タイトル・ソング。
「Kaara Fankaara」
「The Humma Song」
「Enna Sona」
さすがのアリジート・シンのスロー・バラード。
シュラッダー・カプール ターラー役
本作のヒロイン役がシュラッダーにとって適役だったのかどうかわかりませんが、都会派ラブストーリーのヒロイン役には必ず候補に挙がるくらいにはなっていると思います。次の【Half Girlfriend】はチェータン・バガトの小説の映画化で、本作と同系の役になりそうです。
アーディティヤ・ローイ・カプール アディ役
【Aashiqui 2】(2013)でのブレイク以降、【Yeh Jawaani Hai Deewani】(2013)の脇役を挟んで【Dawaat-e-Ishq】(2014)、【Fitoor】(2015)と主役として出演し続けていますがなかなかヒットに結び付きません。演技や相手役との相性が悪いわけではないため、今は辛抱のしどころでしょうか。
ナスィールッディーン・シャー ゴーピー役
俳優の格としてはオリジナルのプラカーシュ・ラージに負けていないどころ、上回るかもしれないので期待したのですが、さほどでもありませんでした。もちろん、オリジナルのプラカーシュ・ラージの出来が良すぎたということなのかもしれません。
本作のオリジナルのタミル映画【O Kadhal Kammani】(2015)は元々はリメイクのタイトルの形と同じ「OK Kanmani」だったそうです。しかし、タミルナードゥ州ではタイトルを純タミル語にしなければならない(しないと税制上の優遇措置を受けられないとか)ということでこのタイトルになったということです。
【OK Jaanu】でアディとターラーの同棲生活が描かれますが、ボリウッドではすでに同棲が描かれた作品があります。まずはインド国外で同棲するパターンで、【Salaam Namaste】(2005)がその典型。その流れは【Cocktail】(2012)に引き継がれます。また、厳密には同棲ではなありませんが、成り行きで共同生活をするパターンには【Wake Up Sid】(2009)などがあります。
インドでは同棲のことを「Live-in relationship」と言いますが、2010年前後に同棲に関する裁判所の判決が相次ぎ、同棲のパートナー(特に女性)にも結婚相手と同様の権利を付与すべきという流れが生まれました。ボリウッドでもその頃からときどき同棲カップルが登場するようになりました。
同棲をテーマとした作品の代表としては【Shuddh Desi Romance】(2013)があります。
「Tere Mere Beech Mein」
同棲生活ソング。なかなか生活感あふれてます。
【OK Jaanu】
果して正統派ラブストーリーなのか非正統なのか確かめたい人、【Aashiqui 2】カップルの再共演を見たい人、おすすめです。