2016年 12月 28日
【Befikre】 |
出演:ランヴィール・シン、ヴァーニー・カプール
トレイラー
ストーリー
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刺激ある生活を求めてパリにやってきたダラム(ランヴィール・シン)はフランス生まれのインド人で自由で活発なシャイラ(ヴァーニー・カプール)と出会う。意気投合した2人は、「感情的にも感傷的にもならないおかしく楽しい関係」であることを条件に一緒に暮らすことにするが、1年も経たないうちに喧嘩別れをする。
なんとか仲直りして友達関係となった2人。やがてシャイラはある男から結婚を申し込まれる。返事に迷ったシャイラはダラムに相談する。ダラムは「もちろんOKすべきだ」とシャイラに結婚を勧めるが・・・
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ヤシュ・ラージ・フィルムズの現会長で名作【Dilwale Dulhania Le Jayenge】(DDLJ)(1995)の監督でもあるアーディティヤー・チョープラーの【Rab Ne Bana Di Jodi】(2008)以来となる新作です。プロデューサーとしては多作のアーディティヤですが、監督としては非常に寡作で、DDLJから20年以上で本作が4作目の監督作です(他に【Mohabbatein】(2000))。
【Dilwale Dulhania Le Jayenge】(1995), 【Rab Ne Bana Di Jodi】(2008)
タイトルの「Befikre」は「思慮」「心配」「不安」などを意味する「fikr」に否定辞の「Be」を付けたもので、「むとんちゃく」「気苦労のない」などを意味します。本作では前半のパリを舞台にした主人公2人の自由な関係を表しています。
【Befikre】、外国を舞台に新しい男女の関係を提示するという点では一足先に公開されたカラン・ジョーハル監督の新作【Ae Dil Hai Mushkil】(2016)と同じ意図が見えます。しかし、アーディティヤ・チョープラー監督の場合、新しい関係で話が進んでいっても、最後には古典的とは言わないまでも普遍的な愛が勝利して終わるのだろうと期待します。実際、おおざっぱに言えばそのようになるのですが、新しい男女関係の提示も、それを転換しての結末も、どちらも上手くいっていないように感じました。
前半の「Befikre」な関係の表現は、挿入歌のタイトルソング「Ude Dil Befikre」にあるように(というよりもほぼこれで全部)表面をなぞったものにどどまりました。「面白おかしい、感情的にならない」関係はただの悪ふざけに置き換えられています。
後半に徐々に気持ちが変わっていくプロセスも、ダラム(ランヴィール)についてはまずまず良く描かれていましたが、シャイラ(ヴァーニー)のほうはさっぱりでした。救いは終盤にあるダンス曲くらいでした。結末のテキトウさにいたっては目も当てられません。
ランヴィール・シンは特に前半のチャラ男は貫禄の演技でしたが、後半、本来ならこれも得意なはずのシリアスに転じる演技が十分に生かされてませんでした。ヴァーニー・カプールは表情など全体に固すぎでした。パリ生まれの自由人という前半はともかく、後半の変わり身が出来ていませんでした。
アーディティヤ・チョープラー監督ということで期待した人はもちろん、普通に観賞した人でも物足りなく感じるはず。前作から間隔は空いているものの、練り込み、掘り下げが不足した印象の強い作品でした。監督としての力が落ちたとは信じたくありません。次作での捲土重来を期待します。
音楽
歌の作曲はヴィシャール=シェーカル。バックグラウンド・スコアはニュージーランド・出身の作曲家マイキー・マクレアリー。
「Nashe Si Chadh Gayi」
「Ude Dil Befikre」
タイトルソング。
「You and Me」
ランヴィール・シン ダラム役
約1年ぶりの主演作は、前作【Bajirao Mastani】(2015)とはうって変わった軽い役。デビューが【Band Baaja Baaraat】(2010)だったことからもわかるように、そうした役もできるはずなのですが、【Dil Dhadakne Do】(2015)といい作品に恵まれない印象。次作【Padmavati】は3たびバンサーリー監督で、また重厚(濃厚)路線に戻りそうです。
ヴァーニー・カプール シャイラ役
デビュー作【Shudh Desi Romance】(2013)で見たときには、シャープな顔立ちの美人で、今後活躍するにはde-gram(グラマーさ、ゴージャスさを落とすこと)が必要かと思いました。本作でもやはり全体的に演技が固く、まだセカンド・ヒロインだった前作のほうが柔らかさを出せていました。スタイルもいいし、ダンスも鍛えられています。あとは現実でも作品中でもスターとしての個性を出せるかどうかでしょう。
脇役が活躍しなかった、あるいは脇役が活躍できる役がなかったのも、作品が薄っぺらに見えた原因だと思います。
本作のシネマトグラファーは小野山要さん。フランス在住の日本人映像作家だそうです。ヤシュ・ラージ総帥の監督作のシネマトグラファーとは、並みいるインド人シネマトグラファーもうらやむ大役です。フランス在住で馴染み深い土地なのもあるのか、パリの様々な風景が美しく撮影されていました。
ただし、インド映画の日本人シネマトグラファーでは、米在住の中原圭子さんが【3G】(2013)、プリヤンカー・チョープラー主演のスポーツ伝記物【Mary Kom】(2014)などでシネマトグラファーを務めています。中原さんは2017年公開予定のソーナークシー・シンハー主演【Noor】でもシネマトグラファーを務めています。
【Noor】
【Befikre】
軽いキャラのランヴィール・シンを見たい人、クール・ビューティーのヴァーニーを見たい人、DDLJとRNBDJの監督ということで期待を膨らませすぎていない人、おすすめです。
by madanaibolly
| 2016-12-28 22:32
| レビュー