【Mirzya】 |
出演:ハルシュヴァルダン・カプール、サーヤミー・ケール、オーム・プリー、アンジャリー・パーティル
トレイラー
ストーリー
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上流家庭出身のスチトラーと一般家庭出身のアーディルは幼馴なじみで同じ学校に通う友達同士。あるとき教室で教師がスチトラーを鞭打つのを見たアーディルは憤り、翌日、家から持ち出した猟銃でその教師を射殺する。こうしてスチトラーとアーディルは離れ離れになってしまう。
時は流れ、美しく成長したスチトラー(サーヤミー・ケール)は海外留学先から久々に故郷に戻って来た。婚約者で同じく上流家庭出身のカラン(アヌジュ・チョウドゥリー)と結婚するためだった。結婚前に乗馬を習いたいというスチトラーをカランは行きつけの乗馬施設に連れていき、厩務員の1人をコーチに付ける。スチトラーはやがて、そのコーチが成長したアーディル(ハルシュヴァルダン・カプール)だと知る。時を経て、2人の間に燃え上がる愛。だが、2人の関係をカランに知られてしまう。
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【Rang De Basanti】(2006)、【Bhaag Milkha Bhaag】(2013)のラケーシュ・オームプラカーシュ・メヘラー監督の新作。パンジャーブ四大悲恋の1つ『ミルザー・サーヒバーン』に基づいた作品とされています。
主演はハルシュヴァルダン・カプール。アニル・カプールの息子でソーナム・カプールの弟、本作がデビューになります。共演はサーヤミー・ケール。【Bajrao Mastani】(2015)の鬼母役タンヴィー・アーズミーの姪でモデル出身。テルグ映画【Rey】(2015)に出演していますが、ヒンディー映画は本作がデビュー。
幼馴染の男女が愛し合うも家の都合で引き裂かれれる悲恋はシェークスピアの『ロミオとジュリエット』をはじめ多くありますが、『ミルザー・サーヒバーン』もそうした「引き裂かれ」型のラブストーリーです。メヘラー監督は【Mirzya】を現代の状況に再現し、かつ、戦闘シーンを中心に過去の物語を平行して語るという手法をとっています。
物語のミルザーが馬と弓の名手だったとされるのを、現代のアーディルは乗馬施設の厩務員にしたり、序盤で幼いスチトラーが教師に鞭打たれるシーンなどは『ミルザー・サーヒバーン』を現代のシーンに移しています。一方、周囲に結ばれることを止められた二人の行く末は、現代のシーンと伝説の場面の両方で描かれます。これにより、観客はアーディルとスチトラーが現代のミルザーとサーヒバーンであることを知ります。
映像は非常に美しい。現代のシーンは貴族の屋敷や牧場がきれいに撮られています。伝説のシーンは幻想的な映像。CGを用いてアニメーション風に仕上げられています。
しかし、このような手の込んだ構成や映像にも関わらず、作品はどこか平板な感じがしました。1つには、アーディルとスチトラーの愛の理由も描写も不十分なためです。幼い頃に別れたきり会っていない2人が再会したとき、なぜあのようになるのか?監督は、「運命の愛」であり「伝説に語られた愛」であるから説明不要と考えたのかもしれませんが、どうにも納得できません。それでも、俳優の演技で激しい愛が表現できていれば問題なかったのかもしれませんが、新人2人には荷が重すぎたようです。
デビューのハルシュヴァルダンは極端にセリフが少ない役なこともあり、存在感が薄かったです。顔も濃いヒゲで半分隠れており、いろいろな意味で「素顔」が見えませんでした。むしろ目立っていたのはサーヤミー・ケールのほう。演技も新人にしてはまずまずで、顔も映画向きの美人です。
原作物の難しさがまともに出てしまった印象です。人物描写があいまいで、観たあとに残るのは美しい映像の断片とおぼろげな印象ばかり。そんな作品でした。
音楽
音楽はシャンカル=エーサーン=ローイ。目立ったヒット性の曲はないものの、映画音楽として聴くと優れています。
「Mirzya」
タイトル・ソング。
「Aave Re Hitchki」
「Hota Hai」
ハルシュヴァルダン・カプール アーディル/ミルザー役
アニル・カプールの息子、ソーナム・カプールの弟。以前からソーナムがSNSにアップする家族写真などで知る人ぞ知るといった感じでした。大物監督の作品でのデビューでしたが、あまりに寡黙な役。プロモのときは、しゃべれない役なんじゃないかと思ったほどでした。いかにハンサムでも現代風若者役がこなせないとこれから先苦しいでしょう。次作でどんな役を選ぶか注目です。
サーヤミー・ケール スチトラー/サーヒバーン役
祖母が50~60年代に活躍した女優ウシャー・キラン。母は1982年のミス・インディア、叔母にタンヴィー・アーズミー、姉は舞台女優。その他親戚にシャバーナー・アーズミーやタッブーがいる俳優家系。モデルとして活動し、「キングフィッシャー・カレンダー」にも登場したことがあります。
このほか、【Finding Fanny】(2014)でファニー役だったアンジャリー・パーティルがアーディルの結婚相手役で出演。
大物監督が新人俳優を使って作った(そして失敗した)作品というと、サンジャイ・リーラー・バンサーリー監督の【Saawariya】(2007)が思い浮かびます。奇しくも今回主演のハルシュヴァルダン・カプールの姉ソーナム・カプールとランビール・カプールのデビュー作です。監督が出演者を気にせずに好きなことをやりたいときに新人俳優が使われるのかもしれず、そのため監督の思い込み(悪く言うと独りよがり)を反映した作品になってしまうということなのかもしれません。
【Saawariya】(2007)
「Saawariya (Reprise)」
【Mirzya】
ハルシュヴァルダン・カプールの顔を(ヒゲで隠れてますが)見ておきたい人、悲恋物が好きな人、おすすめです。