【Housefull 3】 |
監督;サージド=ファルハド Sajit & Farhad
出演:アクシャイ・クマール、リテーシュ・デーシュムク、アビシェーク・バッチャン、ジャクリーン・フェルナンデス、リサ・ヘイドン、ナルギス・ファクリー、ボーマン・イラーニー、チャンキー・パーンデー
トレイラー
ストーリー
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ロンドンに住む成功した実業家バトゥーク・パーテール(ボーマン・イラーニー)は、グレイシーことガンガー(ジャクリーン・フェルナンデス)、ジェニーことジャムナー(リサ・ヘイドン)、サラーことサラスヴァティー(ナルギス・ファクリー)の3人の娘を大切に育てており、良い縁談もすべて断ってきた。
ところが3人には、父に内緒でそれぞれサンディ(アクシャイ・クマール)、テディ(リテーシュ・デーシュムク)、バンティ(アビシェーク・バッチャン)というボーイフレンドがいた。そしてある日、3人は恋人がいることを父に打ち明ける。慌てるバトゥーク。実はバトゥークには3人の娘を結婚させたくない別の理由があったのだった。バトゥークは知り合いのパースタ(チャンキー・パーンデー)に偽の占いをさせ、娘たちに結婚をさせないようにする。
サンディ、テディ、バンティたちの本当の狙いはパーテール家の財産。必死な彼らは驚くべき方法でパーテール家に入り込み、3人娘との結婚を目指すが・・・
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「満員」というタイトルどおり、マルチ・キャストによるドタバタが売りのコメディ・シリーズの第3弾。続編流行りの昨今のボリウッドでもシリーズ3作目まで行っているのは【Dhoom】、【Golmaal】などわずかな数しかありません。
【Housefull】(2010)
【Housefull 2】(2012)
出演者で1作目からの連続登場はアクシャイ・クマール、リテーシュ・デーシュムク、ボーマン・イラーニー、チャンキー・バーンデー。女優ではジャクリーン・フェルナンデスが1作目のアイテム出演を入れると3作連続出演になります。一方、本作からの出演は、アビシェーク・バッチャン、ナルギス・ファクリー、【Queen】(2014)のリサ・ヘイドン。
監督は1、2作目の監督サージド・カーンから、アクシャイ主演【Entertainment】(2015)が面白かったサージド=ファルハド(サージド・サムジーとファルハーン・サムジーのコンビ。兄弟だと思いますがどこにも書いてません)に交代。サージド・カーンは【Himmatwala】(2013)、【Humshakals】(2014)の不振続きで降ろされたという話もあります。
女優陣は、ディーピカー・パードゥコーンとラーラー・ダッタが出ていた1作目、当時ヒット作に連続出演していたアシンの出演した2作目に比べると格の点でやや落ちますが、セクシー系女優で最近好調の3人を揃えたところはポイントが高いと思います。さらにこの3人、偶然か意図的かわかりませんが、みなインド国籍を持たず、ヒンディー語話者でもありません。インドにはこういう女優たちを「ヒンディー語下手」といってからかう人も多いのですが、本作はそれを逆手に取り、しっかりギャグのネタに使っています。
ストーリーは可もなく不可もなしといった程度。もっとも【Housefull】シリーズは元々優れたストーリーが売りではなく1、2作目も筋は平凡だったので、これ自体は問題ありません。おかしな設定や細かなギャグ、無茶などんでん返しで笑わせるコメディです。
たとえば3人娘は結構笑いのネタになっています。名前のガンガー、ジャムナー、サラスヴァティーはいずれも川の名前で、転じて川の女神の名前です。3人一緒にアミターブ・バッチャン主演のアクション映画【Ganga Jamuna Saraswti】(1988)のタイトルにも使われています。しかも、それらにグレイシー、ジェニー、サラーという西洋風の愛称を付けています。
イギリス育ちでヒンディー語下手という設定の3人娘についてはもう1つ、「英語の慣用句をヒンディー語直訳」という一連のギャグがあります。たとえば、「Ek baar ghadi ke upar」(一度、時間の上に)が「once upon a time」だったり、「Naukri neeche」(仕事を下に)が「calm down」(naukri=kaam [仕事]=calm[同音])。ヒンディー語聞き取りとしては試練ですが、果たしてその場で理解できたところで笑えるのかは不明です。
そしてストーリーの中心をなすネタは、男3人がそれぞれ障害者のフリをするというもの。仮に笑いが取れるとしても、身体の障害を笑いのネタにするのは今どき問題でしょう。さらにインド映画にはよくある黒人蔑視に近いネタもあります。日本や欧米に比べればインドは今のところこういうネタに甘いのかもしれませんが、さすがのインドもおそらく数年後には使えなくなるのではないかと思います。今回に関しては笑えても、もうじき笑えないネタになるでしょう。
ネタの下品は行き過ぎではないかと思うものの、【Housefull 3】はシリーズの特徴であるおおぜいの出演者によるドタバタが醸し出す笑いの雰囲気は出せており、その点ではコメディ作品として成功でしょう。主演男優3人やボーマンの演技、女優3人の華やかさなど、上手く作品の雰囲気に乗れれば楽しめる作品だと思います。
音楽
コミカルや華やかな音楽シーンにはなっているものの、シリーズ前2作におけるような目立つ曲がないのが欠点。
「Pyar Ki」
「Malamaal」
「Fake Ishq」
作品に冒頭に使われる曲は80年代の米ヒット曲、シンディ・ローパーの「Girls Just Wanna Have A Fun」(「ハイスクールはダンステリア」)という懐かしい曲が使われています。
アクシャイ・クマール サンディ役
安定したパフォーマンスで確実に笑いを取ります。しかし、現在の好調のアクシャイとしては、大ヒット・シリーズでなければ降りていてもおかしくない役。まあ、こういう役も含めて出続けるのがアクシャイらしいとも言えます。
リテーシュ・デーシュムク テディ役
このシリーズや【Masti】シリーズ、さらには【Humshakals】(2014)など、3人組のうちの1人、あるいは2人組の片割れの役がやたらと多いリテーシュ。ようやく単独主演作が出てきたので「おバカ・コメディ」は卒業するようですが、【Masti】シリーズと本シリーズはやめられないようです。次は単独主演で本作にも出演のナルギスと共演する【Banjo】に期待しましょう。
アビシェーク・バッチャン バンティ役
脇役俳優ではありませんが、主役俳優でもない。【Housefull 3】はアビシェークの現在の位置をよく示しているような気がしました。これからもこんな感じで行くような気がします。
ジャクリーン・フェルナンデス 「グレイシー」ガンガー役
父はスリランカ人、母がマレーシア系。バーレーン生まれで現在の国籍はスリランカ。サルマーンとの共演【Kick】(2014)以来、メイン・ヒロインをきっちりできるくらいにはなっています。
リサ・ヘイドン 「ジェニー」ジャムナー役
父インド人、母オーストラリア人。インドのチェンナイ生まれ。オーストラリアと米国育ち。実はデビューの【Aisha】(2010)でも良かったのですが、しばらくは役が付かず、目立つようになったのは【Queen】(2014)から。セクシー系女優の中では一番存在感を出せますが、風貌からセクシー系を抜けられる感じがしないのが難点でしょうか。
ナルギス・ファクリー 「サラー」サラスヴァティー役
父パキスタン人、母チェコ人。アメリカ生まれのアメリカ育ち。国籍はアメリカ。デビュー作【Rockstar】(2011)から演技がさほど上手くなった感じはありませんが、この人は独特の美貌を持つ美人などで、これからしばらくは役があるでしょう。
【Housefull 3】は、今年あるいは近年のボリウッドにおけるコメディ不足に助けられた感があるのは否めません。今年前半のボリウッドは最大のヒット【Airlift】をはじめ「実話に基づく」シリアス作品ばかり。リアリティやシリアスさなどはどうでもいいというような作品はほとんどありません(露骨なセックス・コメディはありましたが)。
【Housefull 3】
おバカなコメディに飢えてる人、英語慣用句ヒンディー語直訳ギャグの聞き取りに挑戦したい人、【Housefull 4】が作られるのかを予想したい人、おすすめです。