2016年 03月 27日
【Zubaan】 |
監督:モーゼズ・シン Mozez Singh
出演:ヴィッキー・コウシャル、サラー・ジェーン・ディアス、マニーシュ・チョウドゥリー
トレイラー
ストーリー
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パンジャーブの田舎に生まれたディルシェール(ヴィッキー・コウシャル)は幼いころからのどもりのため無口な青年に育っていった。だが、強い心を持ったディルシェールは鮮血会社を経営するグルチャラン(マニーシュ・チョウドゥリー)に目をかけられ、やがて彼の腹心に取り立てられる。だが、グルチャランの息子スーリヤ(ラーヴガヴ・チャラーナー)やその母(メグナー・マリク)の妬みを買い、執拗な嫌がらせを受けるようになる。
ある日、ディルシェールはミュージシャンのアミラー(サラー・ジェーン・ディアス)と出会う。ディルシェールは音楽家だった父から豊かな音楽の才能を受け継いでいたが、やはり父に関するある記憶のため、これまで音楽を封印してきたのだった。アミラーとの出会いきっかけに、すでにビジネスの世界に嫌気がさしてきていたディルシェールは、自分の前に開けた音楽の道を歩み始める。
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【Masaan】(2015)で火葬場で働く青年を好演したヴィッキー・コウシャルの主演作。パンジャーブの音楽家の家庭に生まれたシクの青年が、最初に飛び込んだビジネスの世界を経て、やがて父と同じ音楽の道を歩むようになるまでの心の旅路を描く作品です。監督のモーゼズ・シンは本作が監督デビュー作。インド公開よりも先に2015年の釜山国際映画祭でオープニング作品として上映されました。
【Zubaan】は青年の「自分探し」映画として優れています。主人公が無口、それでいて内に熱いものを秘めているからでしょうか、設定も舞台も年齢も異なるにもかかわらず、自分探し映画の傑作【Udaan】(2010)を思い起こさせる雰囲気です。【Udaan】の少年が都会に出てからの後日談といってもいいかもしれません。
【Zubaan】は音楽映画でもあります。主人公は音楽家の家庭に生まれ、音楽の才能を持っています。ある事情で音楽から離れていたものの、歌手のアミラーたちとの出会いで再び音楽に目覚めます。主人公の音楽は比較的オーソドックスなパンジャービーですが、アミラーたちはパフォーマンス・アートやトランスなど前衛的です。
内容的には少し欲張りすぎな気がしました。主人公のビジネス界(実際にはグルチャランの家庭内騒動)での境遇とミュージシャンたちとの付き合いという、まるで異なる2つの世界を描いているうえ、さらにディルシェールの少年期の回想シーンもあり、話が複雑になりすぎました。それでいて、ディルシェールの最後の「選択」を説明できていたかどうかには疑問があります。
ヴィッキー・コウシャルは【Masaan】に続いての好演。主人公の心の変化を丁寧に演じており、それを観るだけでも価値があるでしょう。その他の出演者もみないい演技をしています。【Masaan】もそうでしたが、俳優の演技が生きる役柄と役柄を生かす俳優の演技の相乗効果が生まれています。
ストーリー的にはややちぐはぐな感じがするものの、落ち着いたドラマ部分と独特の音楽シーンは両方が合わさって作品に良い雰囲気を与えています。ヴィッキーの好演と合わせてそうした雰囲気を楽しむ作品です。
音楽
音楽が作品の中心テーマだけあって、音楽シーンはパフォーマンス・アート風のもの、トランス風、屋上を舞台にしたライブなど斬新。音楽はパンジャービーの要素を基本にしながらもヴァラエティに富んでいます。
「Music Is My Art」
「Dhruvtara (Dhoop Ki Zubaan)」
「Ajj Saanu O Mileya」
ヴィッキー・コウシャル ディルシェール役
作中でも説明がありましたが、主人公の名前ディルシェールは「心」(ディル)+「ライオン」(シェール)。そんな名前のように熱いハートを持つ主人公を演じたヴィッキー。【Masaan】でもそうでしたが、語らずに内面を表現する演技が上手いです。これからどんな役に挑戦していくのか、今後が楽しみな俳優です。
サラー・ジェーン・ディアス アミラー役
2007年のミス・インディアでアビシェーク・バッチャン主演の【Game】(2011)に出演、その後もおバカ映画【Kyaa Super Kool Hain Hum】(2012)などに出ていましたがまったく目立っておらず、そのうち消えてしまうのかと思っていました。ところがトロント国際映画祭で賞を獲ったパン・ナリン監督【Angry Indian Goddesses】(2015)に出演、そして本作と路線を変えてからいい演技をしています。本作では歌手の役ですが、実際に歌手でもあります。
マニーシュ・チョウドゥリー グルチャラン役
厳格な父親役は、ローニト・ローイ(【Udaan】、【2 States】)か、この人でしょう。最近では【Sanam Teri Kasam】(2016)でもそうした父役でした。本作では父ではありませんが、主人公の父親的な存在です。
【Zubaan】
青年の目覚めのストーリーが好きな人、【Masaan】でヴィッキー・コウシャルに目をつけた人、ターバン好きな人、おすすめです。
by madanaibolly
| 2016-03-27 02:48
| レビュー