【Jazbaa】 |
監督:サンジャイ・グプター Sanjay Gupta
出演:アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン、イルファーン・カーン、シャバーナー・アーズミー、チャンダン・ローイ・サニヤール、ジャッキー・シュロフ
トレイラー
ストーリー
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アヌラダー・ヴァルマ(アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン)は請け負った事件でいまだ負けたことがない凄腕の弁護士で、娘のサナーヤ(サラー・アルジュン)を育てるシングルマザー。ある日、娘の運動会に参加した直後、サナーヤが何者かに誘拐された。
犯人はアヌラダーに、強姦と殺人で起訴されているミヤーズ・シャイフ(チャンダン・ローイ・サニヤール)の裁判を引き受け、無罪を勝ち取ることを求め、できない場合は娘を殺害すると告げる。事件に取り掛かるアヌラダーだが、証拠からはミヤーズが真犯人であることは明白で、さらにミヤーズも弁護に非協力的。状況は絶望的だ。
アヌラダーは友人で刑事のヨーハン(イルファーン・カーン)に助けを求める。ヨーハンは誘拐犯を探しながら、アヌラダーはなんとか裁判に活路を見出すべく奔走する。裁判の行方は?そして誘拐犯の正体は?
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アイシュワリヤー・ラーイの結婚、出産後の復帰作。この前の公開作は【Guzarish】(2010)ですからずいぶんと長いブランクとなりました。そのためか復帰作にはずいぶんと力が入っています。キム・ユンジン主演の韓国映画『セブンデイズ』(2007)を【Shoot At Lokhandwala】(2007)、【Shoot At Wadala】(2013)などで知られるサンジャイ・グプター監督がリメイク。共演にイルファーン・カーン、シャバーナー・アーズミー、チャンダン・ローイ・サニヤールら、演技派俳優、ベテラン俳優を揃えました。
アイシュワリヤーの役は、娘を誘拐され、凶悪犯の弁護を強要されるシングルマザーの弁護士。以前のアイシュにはあまりなかった役ですが、実生活で母親になったこともあり、まずは無難な役選びです。
ストーリーは外国映画のリメイクらしく、ちょっと意外性のある(でも意外すぎない)結末も含め堅実。スリラーとしての構造は圧倒的に不利な裁判を戦いながら(防御)、誘拐犯を探す(攻撃)という同時進行型。その両者がかみ合っておらず、前者(裁判)が良く出来ているのに対し、後者(誘拐犯探し)は面白くありません。
もっとも、【Jazbaa】の最大の欠点はストーリーではなく、いくつかのシーンの明らかな演出過剰。娘がいなくなっていることに気づくシーンや、あと一歩で犯人に接触しそこねたシーンなど、アイシュワリヤーが激しく感情を表す箇所では。スローモーションやエコーの掛け過ぎで、かえって現実味を失っていました。そこはアイシュワリヤーの演技でしっかり見せたほうが良かったのではないかと思います。
【Jazbaa】は、復帰のアイシュが主役として十分にできるのを見せるという点では、復帰作は十分にその役割を果たしていました。演技も美貌も戻っています。ただ、「真面目でスキがない」、「常に気負っている」という結婚前のアイシュの女優としての欠点を変えるには至っていませんでした。【Jazbaa】では、母としての強さという新たな側面を見せたのはプラスですが、結婚直前の作品【Guzarish】(2010)でその片鱗が出ていた大人の女性としての余裕のようなものは残念ながら鳴りをひそめていました。
スリラーとしての作品を楽しむというよりは、アイシュの復帰を確かめる、あるいは個性的な脇役陣を楽しむといった見方をしたほうがいいかもしれません。
音楽
復帰のアイシュを見せる目的には十分ですが、音楽自体は平凡。
「Badeyaa」
廃工場ロケで女性雑誌のグラビア風。
「Kahaaniya」
出産からここまで絞れましたというのを見せるための映像です。
アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン 弁護士アヌラダー・ヴァルマ役
まったくブランクを感じさせないというわけにはいかないにしても、5年ぶりの映画出演とは思えません。もっとも、この5年の間に、世界一の美女に加えてバッチャン家の嫁という称号が加わり、女優としてはますます制約が多くなりました。本作はこれで十分だと思いますが、今後どこかでそうした制約を打ち破るような大胆な役が必要でしょう。
イルファーン・カーン 停職中の刑事ヨーハン役
世界のイルファーンですが、さすがに本作ではアイシュワリヤーを立てる役割に徹して、役を無難にこなしたという感じです。
チャンダン・ローイ・サニヤール 凶悪犯ミヤーズ・シャイフ役
本当に有罪であるのかは伏せますが、いずれにしても人でなしであることに変わりはないというくらいひどい男の役です。しかし、演技の虫のチャンダンですから、きっとこの役は気に入っているのではないか勝手に想像しています。
シャバーナー・アーズミー 被害者の母親役
大ベテラン女優で、格でいえば出演者中で最高のはず。しかし、この役?これが何か意味を持ってくるのでしょうか。
【Jazbaa】
アイシュの復帰を歓迎したい人、オリジナルの韓国映画と比較してみたい人、渋めの共演者たちを楽しみたい人、おすすめです