【Happy New Year】 |
監督:ファラー・カーン Farah Khan 出演:シャールク・カーン、ディーピカー・パードゥコーン、アビシェーク・バッチャン、ソーヌー・スード、ボーマン・イラーニー、ヴィヴァーン・シャー、ジャッキー・シュロフ
トレイラー
ストーリー
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チャーリー(シャールク・カーン)は成績優秀で大学を出たものの、ある出来事をきっかけに賭けボクサーに身を落とした「敗者」だった。チャーリーはテレビで、今年のクリスマス、30億ルピー相当のダイヤモンドがドバイに輸送され、たった一晩だけホテルの地下にある大金庫「シャリマー」に納められるというニュースを聞いた。これこそがチャーリーが待ちに待ったニュースだった。「シャリマー」の所有者で、ダイヤの警備を担当するのはチャラン・グローヴァー(ジャッキー・シュロフ)。そして彼はチャーリーの父の仇だった。
チャーリーは父の知り合いで爆薬の専門家ジャグ(ソーヌー・スード)、金庫破りのタミー(ボーマン・イラーニー)らに声をかけ、金庫からダイヤを強奪し、チャラン・グローヴァーに復讐を果たすことを決意する。作戦にはハッカーのローハン(ヴィヴァーン・シャー)やナンドゥ(アビシェーク・バッチャン)も加わる。
作戦はドバイでクリスマスに開幕する世界ダンス選手権にインド代表として出場し、それを利用して大金庫に忍び込むというものだった。だが、この作戦には明らかな問題点があった。彼らはダンスができないのだ。そもそもインド予選を突破しなければ世界大会に出場できない。人気投票の結果はローハンがハッキングで操作できるにしても、なんとか形になるくらいは踊れないといけない。彼らはナンドゥの知り合いでダンサーのモーヒニー(ディーピカー・パードゥコーン)にダンスを習うことにした。彼女も、ダンス学校を開く夢を持ちながらも今はしがないバー・ダンサー。チャーリーたちはモーヒニーの下でダンスの特訓を開始する。彼らは踊れるようになれるのか?そしてダイヤの強奪は?
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ファラー・カーン監督、シャールク、ディーピカーの【Om Shanti Om】(2007)(『恋する輪廻』)トリオが再び手を組みました。ファラー・カーン監督はデビュー作の【Main Hoon Na】(2004)、次の【Om Shanti Om】がいずれもシャールク主演作で大ヒットとなりました。ところが3作目でシャールクが出なかった(アクシャイ・クマール主演)【Tees Maar Khan】(2010)が大不評。再びシャールク主演作で名誉挽回なるかどうか。
シャールク・カーンはファラー・カーン監督、ディーピカーとの共演作ともに3本目。ディーピカーは同監督作品は(ヒンディー映画)デビュー作の【Om Shanti Om】が(ヒンディー映画)以来ですが、その間に押しも押されぬトップ女優に上り詰めています。脇役陣はアビシェーク・バッチャン、ボーマン・イラーニー、ソーヌー・スードの豪華メンバーに、今作が2作目ながら実力がありそうなヴィヴァーン・シャー(ナスィールッディーン・シャーの息子)。敵役にジャッキー・シュロフ。
テーマはダンスと泥棒。一見奇妙に見えますが、ファラー・カーン監督としては納得の組み合わせ。コレオグラファー出身の監督にとってはダンスが前面に出るのは当然ですし、泥棒は作品としては失敗しましたが【Tees Maar Khan】で試みるなど好きなテーマのようです。普通には有り得ない組み合わせが作品の面白味になっています。
作品はファラー監督らしく、ドラマ、アクション、ロマンス、コメディ、ダンスをすべて押し込んだ作品。バイオレンスがないので普通の意味でマサーラー映画とは言えませんが、ある意味非常に「マサーラー」な作品です。特に前半、おバカな小エピソードが多数あり、ちょっとコメディに傾き過ぎという気もしますが、全体を通して均してみるとさほどでもありません。
アクション・シーンは【Main Hoon Na】にあったようなファラー流アクションですが、意外に魅せます。別の作品でも使われたドバイの高層ビルの屋上にあるヘリポートでの格闘シーンはジャッキー・チェン風(名前が言及されています)で、高所恐怖症の人にはちょっときつそう。ダイヤモンド強奪作戦は、作戦の大枠(ダンス大会出場で泥棒)とは裏腹に、金庫破りそのものは意外と緻密で、緊迫感も出ていました。
そしてステージ・シーン。近年、ボリウッドのステージ・シーンの発展は目覚しく、【Rock On!】(2008)、【Rockstar】(2012)、【Aashiqui 2】(2013)、【Dhoom 3】(2014)などが印象に残っています。【Happy New Year】のステージ・シーンも豪華。前半の「Lovely」はディーピカーのソロ・ステージ。ドバイでのパフォーマンスは夜に行われる設定で、ステージの背景の電飾が派手。さらに、きらびやかな夜のドバイそのものがステージの背景を構成しています。そんな中でシャールクたちのインド代表「チーム・ダイヤモンド」が踊ります。ここではコレオグラファーとしてのファラー・カーンが力を発揮しています。
ロマンスはもちろんシャールク=チャーリーとディーピカー=モーヒニー。この2人の相性が良く、いわゆる「ケミストリー」なのは間違いないですが、【Om Shanti Om】でも、前の共演作【Chennai Express】でも、ラブシーンらしいラブシーンはありません。それでも、2人の間にある恋愛感情を表現できてしまうところがこのカップルが本当に相性がいい証拠でしょう。今作でも2人の関係の設定には物足りないと思う人がいるかもしれませんが、それでも似合いのカップルであることに変わりありません。
たしかに余計なものもあるし、おふざけが過ぎるところもあります。話がまとまりに欠けるところ、キャラが一貫しないところもあります。ですから減点方式で観たらかなり低い評価になるのではないかと思います(世の批評は減点方式が多い気がします)。しかし、ますますシリアスに、タイトに、コンパクトに向かいつつあるインド映画のアンチテーゼして、こうした作品やこうした作品を作る監督がいてもいいのではないかと思います。見どころも盛り上がり場所もたくさんあり、娯楽作品として観るならば大いに楽しめると思います。
音楽
音楽はヴィシャール-シェーカル。さすがにファラー・カーン監督、ダンス・シーンは魅せます。
「Lovely」
ディーピカーの役名モーヒニーは、マードゥリー・ディークシトの出世作【Tezaab】(1988)での役名として有名。そして「Lovely」は【Tezaab】の名曲「Ek Do Teen」を彷彿させます。また、ロープを使っての空中ダンスはカトリーナ・カイフが【Dhoom 3】(2013)で披露しましたが、ディーピカーも負けじと挑戦です。
「Manwa Laage」
コミカルなラブソング。
「India Waale」
盛り上がりでは一番かもしれません。
「Satakli」
シャールク・カーン チャンドラモーハン「チャーリー」シャルマー役
年齢がいくに従って、ますます「スタイル」俳優の色を強めつつあるシャールク。ファラー・カーン監督はそうしたシャールクのスタイルをよくわかっており、作品のあちこちで利用しています。観る人は頻繁に「どこかで見た」シャールクに出会うはずです。それは「Dard-e-Disco」だったり、「Chak De!」だったり、「Mitwa」その他だったりします。
ディーピカー・パードゥコーン モーヒニー役
プロモでは「Lovely」の超セクシーが前面に出ていますが、作中のもっと庶民的。そしておそらくこれまでの出演作の中で一番コメディ色が強い役です。多少キャラが一貫していない感じもしますが、なにか本当に楽しそうな雰囲気が伝わってきて良かったです。
アビシェーク・バッチャン ナンドゥ役
今作で一番働いたのではないかと思います。そして作戦中では重要な役割を担います。今作もユニーク・キャラですが、普通に真面目なチーム・リーダー役だったら全然冴えなかっただろうという気がします。アビシェーク、ファラー・カーン監督作品には【Om Shanti Om】のゲスト出演を除くと初めてですが、案外ファラー監督向きの俳優かも。
ボーマン・イラーニー テムフトン「タミー」イラーニー役
ファラー・監督作品では【Main Hoon Na】で校長役で出演しています。ボーマン、今作ではチーム最年長ながら、あれだけ踊らされて大変だったろうなあと思いました。
ソーヌー・スード ジャグモーハン「ジャグ」プラカーシュ役
最初、耳から蒸気なんか出していて、どんなキャラになるのやらと思っていたら、いい人キャラでした。ダンス・シーンでは衣装をびしっと決めてカッコ良かったです。ただの悪役俳優をはるかに超えた俳優であることをまたまた証明しました。
ヴィヴァーン・シャー ローハン・シン役
ナスィールッディーン・シャーの息子。デビューの【7 Khoon Maaf】(2011)ではプリヤンカー・チョープラー相手に新人とは思えない渋い役で注目されました。今作はモテないハッカー役とまったく役柄は違いますが、周りの豪華メンバーに埋もれずにがんばっていました。今後、若手の脇役俳優として活躍しそうです。
このほか、チャーリーの父の仇で敵チャラン・グローヴァーにジャッキー・シュロフ、タミーの母にデイジー・イラーニー。ダンス世界選手権の司会者にディノ・モレア。ドバイのホテル勤務の女性にサラー・ジェーン・ディアス。
ドバイでの主なロケ地は巨大な豪華ホテル「アトランティス・ザ・パーム」。よくぞこんな建物を作ったなというくらいの壮大な建築物ですが、それを背景にステージ・パフォーマンスとは、【Happy New Year】はそれだけでもすごい。でも、もっとすごいのはそんなパフォーマンスに作品一のおバカ・ダンスをもってくるユーモアです。
ファラー・カーン監督いえば、ボリウッドでの幅広い人脈を生かした多彩なゲスト出演で有名です。今作もいろいろありましたが、サプライズでもあるので具体的には明かしません。ヒントだけ。
・今回はアイテム・ガールとしての出演ではありません。
・肉親なので絶対出てくれるし、いじり放題
・この人にダンス習えるなんて!
・ボリウッド屈指の監督と音楽家にこんなことやらせる!?これはホントに「マジですか?」
【Happy New Year】は最初、上映時間が188分となっていました。ところが検閲委員会からの指示で細かなところをいろいろカットし、結局179分となっていました。それでも十分長いですが、3時間は切っています。
【Happy New Year】を観るならば、自分の中の批評家をしばし止めて観たほうがいいでしょう。同じ観るならば楽しまなければ損という作品です。
【Happy New Year】
シャールク・ファンの人、ディーピカー・ファンの人、楽しい映画が好きな人、アビシェークの活躍がどんなだか見たい人、お勧めです。