【Daawat-e-Ishq】 |
監督:ハビーブ・ファイサル Habib Faisal
出演:アディティヤー・ローイ・カプール、パリニーティ・チョープラー、アヌパム・ケール
トレイラー
ストーリー
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ハイデラバードの靴屋で働くグッルーことグルレーズ(パリニーティ・チョープラー)の夢は靴のデザイナーになり、自分の店を持つこと。だが、現実にはそんな遠い夢よりも、結婚相手が見つかるかどうかが問題だ。何度か見合いもしたが、いつも最後に障害になるのが持参金。相手の求める持参金の額は、裁判所の事務員として働く父の給与と合わせてもとても支払えない。
やけになったグッルーがふとテレビを見ると、持参金がらみの裁判に勝訴した女性のニュースをやっていた。インドでは持参金の要求は法律で禁止されているのだ。グッルーの頭に持参金禁止を利用した詐欺の計画が思い浮かぶ。持参金を要求してきた家族から大金をせしめてやろうというのだ。そして、その金でニューヨークのデザイン学校へ・・・
嫌がる父を説得して仲間に加え、詐欺の舞台として選んだ地ラクナウに向かう。グッルーの花婿募集に応じてきた家族からターゲットに選んだのはコックのターリク(アディティヤ・ローイ・カプール)だった。計画は最初、予定どおりに進んでいたが・・・
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【Ishaqzaade】(2012)のハビーブ・ファイサル監督の新作で、【Aashiqui 2】(2013)でブレークのアディティヤ・ローイ・カプールと、パリニーティ・チョープラーが初共演。パリニーティは【Ishaqzaade】に続いてのファイサル監督作品への出演となります。
作品のテーマは結婚詐欺。今回主演のパリニーティ・チョープラーのデビュー作【Ladies vs Ricky Bahl】(2011)も主演のランヴィール・シンが結婚詐欺師。ちなみに同作ではパリニーティは詐欺の被害者でしたので、今作は作品を越えてのリベンジです。両作は結婚詐欺のターゲットに情が移るという点で共通ですが、詐欺をめぐる筋立ては【Ladies vs Ricky Bahl】のほうが緻密です。【Daawat-e-Ishq】のほうは素人がある意味仕方なく結婚詐欺に乗り出すという設定のため、むしろほのぼのとした感じがありました。
これに関連したテーマが結婚持参金。英語のダウリーやヒンディー語のダヘジが使われますが、要は結婚時に花嫁側から花婿側に送られる婚資のこと。インドではこれが昔から深刻な社会問題です。娘が2人いると家が潰れると言われるほどで、これまた深刻な社会問題になっている嬰児殺し(間引き)にも影響を与えています。作品中ではグッルーがこれから米留学するエンジニアと結婚する話がまとまる寸前で、相手側から留学費用を全額支払うよう求められる場面があります。ダウリーは法律上は、1961年ダウリー禁止法や刑法498A条で禁止されており、違反には罰則が規定されています。今作でグッルーが使うのは刑法498A条の規定です。
もう1つのテーマは料理。詐欺の舞台となるラクナウはアワド料理 (Awadhi cuisine)という料理で有名。そしてターリクは料理人。【Daawat-e-Ishq】のタグが「よだれの出そうなラブストーリー」というのはここからきています。厨房でのラブシーンもあります。ちなみにもう一方の舞台のハイデラバードもビリヤーニなどの料理が有名ですが、そちらは登場しません。
しかし、こうした興味深い題材を揃えているにも関わらず、作品としては何かが欠けている気がしました。まずはグッルーとターリクの関係。元々は詐欺師と被害者の関係ですが、次第に恋愛感情が芽生え、それが作品の後半のストーリーに影響します。ところが2人の関係が後半を説明できるほどに深まった感じがしませんでした。アディティヤの【Aashiqui 2】では主人公2人の愛があの結末(賛否はあるにしても)につながったといえば納得できるし、パリニーティの【Ishaqzaade】(2012)は普通ならあり得ないカップルながら、2人の間の愛情は見えました。ところが【Daawat-e-Ishq】の2人はどう見てもそんな感じがしないままでした。2人も良く演じていたのですが、相性の問題なのでしょうか。
詐欺の手口の細部がはっきりしないこともあります。ダウリー禁止法を使うにしても、金を取るには脅迫するのか、合法的に示談金や損害賠償として取るのか、現実味がありません(素人の犯罪なのでそれでいいと言えばいいのかもしれませんが)。結局、そのどちらともつかない手を使ったため・・・。
料理ももう少ししっかりと取り上げたほうがよかったのではないかと思います。せっかく登場人物がコックで、美味しそうに食べるのが上手いパリニーティが出演しているのに、もったいない気がしました。
設定や題材は面白いし、演技も上々、映像もきれいなのですが、あと一歩詰めが甘いかなという部分が多くあり、全体としてはやや物足りない感じになったのだと思います。
音楽
音楽はサージド-ワージド。
「Daawat-e-Ishq」
店員が踊りだしたり、お盆にヒロインを映し出したり、楽しい曲です。
「Mannat」
「Rangreli」
「colorful one」のタイトルどおり、パリニーティの服がカラフルです。
パリニーティ・チョープラー 結婚できないグルレーズ役
今のボリウッドで「表情女優」のナンバーワンではないかと思います。本当に表情豊かで見ているだけで楽しい女優だと思います。そして特においしそうに食べるシーンなどはとても似合っています。インド服がかわいいです(「Rengreli」の洋服はどうも・・・)。ちょっと化粧が濃いかなと思うところもありましたが、今作のパリニーティは良かったです。
アディティヤ・ローイ・カプール ラクナウのコック、ターリク役
昔、【Action Replayy】(2010) や【Guzaarish】(2010) ではアフロ・ヘアだったのがウソのように髪を短くしてきました。ちょっとおっかない人かと思わせて、実は優しい人だというのが狙いで、そのへんは上手くいったと思います。
アヌパム・ケール グルレーズの父役
偶然なのか、最近アヌパムが出演する作品が立て続けに公開されています。今作では真面目な勤め人を続けてきたせいでウソが苦手なのに詐欺をすることになります。
タイトルの「Daawat-e-Ishq」の「Daawat」には、1. 招待、2. 宴、の2つの意味があります。「愛の招待」か「愛の宴」か。どちらでもいい気がしますが、両方を掛けているのかもしれません。
作りはやや甘いかと思いますが、みどころはそれなりに多い作品。気楽に楽しむのがいいと思います。
【Daawat-e-Ishq】
くるくる変わるパリニーティの表情を楽しみたい人、詐欺映画が好きな人、料理が出てくる映画が好きな人、お勧めです。