【Finding Fanny】 |
監督:ホーミー・アダジャーニヤー Homi Adajania
出演:アルジュン・カプール、ディーピカー・パードゥコーン、ナスィールッディーン・シャー、パンカジ・カプール、ディンプル・カパーディヤー
トレイラー
ストーリー
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南欧の雰囲気が残るゴアの小さな町。ある日、元声楽家のファーディーことファーディナンド・ピント(ナスィールッディーン・シャー)のところに奇妙な手紙が舞い込んだ。それは47年前、彼自身が恋人の女性ステファニー・フェルナンデス(アンジャリ・パーティール)に結婚を申し込むために書いて投函したものだったが、どういうわけか今になって戻ってきたのだった。ファーディーは想いを伝えられなかった後悔、そして彼女は今どうしているのかを知りたいという好奇心にかられ、ステファニーを捜す旅を思いつき、知り合いのアンジーことアンジェリーナ(ディーピカー・パードゥコーン)に打ち明ける。
アンジーは結婚式当日に新郎(ランヴィール・シン)が死に、若くして未亡人になった女性だった。アンジーはファーディーの計画に共感し、ムンバイから戻ってきたエンジニアのサヴィオ(アルジュン・カプール)を仲間に引き入れ、彼の車を使うことに。さらに旅には偏屈な老婦人ロージー(ディンプル・カパーディヤー)や村に住む変人の芸術家ドン・ペドロ(パンカジ・カプール)が加わり、老若男女5人の奇妙な旅が始まった。果たしてステファニーは見つかるのか?旅の終わりに待っているものは?
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サイフ・アリー・カーン、ディーピカー・パードゥコーンが出演した【Cocktail】(2012)がヒットになったホーミー・アダジャーニヤー監督。ふつうヒットが出た場合、その次はさらに予算がかかった大作に挑むことが多いですが、【Finding Fanny】は、アダジャーニヤー監督がどうしても作りたかった作品だったようです。英語作品にゴア周辺の言語であるコーンカーニー語が混じります(後述)。また、ヒンディー語の吹き替え版も公開されました。
【Finding Fanny】、作品としてはとても変わっています。そもそもインドからしたら異国的なゴアを舞台に美しい映像と音楽で、まるでヨーロッパ映画のようです。そして、これもフランス映画などにありそうなブラック・ユーモア、ナンセンスが全編にわたって散りばめられています。
そもそも、47年前に投函したはずの手紙が今になって戻ってくるという不可思議な出来事から物語が始まります。主人公で語り部のアンジー(ディーピカー)の回想シーンである結婚式のエピソードもナンセンス。ブラックなユーモアは、かわいそうな猫の話やわけわからない外国人、そして結末にいたるまで続きます。
話の中心はファーディーの昔の恋人ステファニーを捜すことですが、といっても血眼になって捜しまわるというわけでもありません。途中に大事件が起きるわけでもなく、驚愕の展開があるわけでもありません。美しいのゴアの風景を背景に、旅の時間はゆったりと流れていきます。そんな中で5人のやり取りを聞いているあいだに、すこしずつ彼らが普段は心の中にしまい込んでいるものが見えてきます。
ゆるいロードムービーとして観るのも良し、美しい風景とアンバランスなブラック・ユーモアを楽しむのも良しの作品です。
音楽
南欧風のバックスコアは非常に素敵です。劇中にダンスシーンはなく、曲はプロモ用です。
「Fanny Re」
「Mahi Ve」
実は上の「Fanny Re」と同じ曲。歌詞もほぼ同じで、サビの2語が置き換えられているだけ。
「Shake Your Bootiya」
ずっと前から旅を続けているような不思議なまとまりをみせる5人です。
ディーピカー・パードゥコーン アンジーことアンジェリーナ役
ナタを持って登場したり、とても庶民的な女性の役です。生身の人間であることが感じられる役でとても良かったです。私としてはお気に入りの役になるでしょう。また、そのせいかどうかわかりませんが、アルジュンとのラブシーンもとても色っぽかったです。ディーピカー自身もとてもやりたかった役のようで、ギャラ設定を低くして、利益が出たときにその一部をもらうという契約にしたそうです。
アルジュン・カプール サヴィオ・ダ・ガマ役
前作【2 States】(2014)での好演で、当初の印象とは違って万能な俳優であることがわかってきたアルジュン。今回も周りをベテラン俳優に囲まれながらも、微妙に鬱屈した青年役を好演。
ナスィールッディーン・シャー ファーディーことフェルディナント・ピント役
いまさらこの人の演技力について言うことはないですが、【Ishqiya】(2010)をほうふつとさせる「かわいいオッチャン」役です。(今回は記憶の中ですが)若い女性を好きになると若返るのでしょうか。
ディンプル・カパーディヤー ロージーことロザリーナ・ユーカリスティカ役
アダジャーニヤー監督作品にはデビュー作の【Being Cyrus】(2005)、【Cocktail】(2012)、今作とすべて出演しています。基本オバチャン役なのですが、時折見せる素晴らしく美人の顔。いいです。
パンカジ・カプール ドン・ペドロ・クレト・コラコ役
今はシャーヒド・カプールの父と言ったほうがいいかもしれません。息子シャーヒドを主演させた【Mausam】(2011)のような真面目な映画を監督してますが、本来はコメディアンで、【Matru Ki Bijlee Ka Mandula】(2013)や今作のようなまったく理解不能な役が向いています。
ゲスト出演のランヴィール・シンには冒頭で「ランヴィール・シンには『短命の』出演に感謝します」という謝辞が捧げられていました。回想のステファニー役はアンジャリ・パーティル。演劇出身の人で【Chakravyuh】(2012)では女ゲリラでした。
【Finding Fanny】は英語の映画ですが、ときおりコーンカニー語が混じります(そこは英語字幕)。コーンカニー語はインド西海岸のコンカン地方で話される言葉で、ゴア州では公用語になっています。おそらくディーピカーはコーンカニー話者だと思われますが、作品中では話していませんでした。
非常に変わり種でなかなか形容が難しいですが、素敵な作品です。ナンセンスがどうしても苦手という人意外ならばきっと楽しめると思います。
【Finding Fanny】
庶民的セクシーなディーピカーを見たい人、かわいいオッチャンが見たい人、ステファニーが見つかるかが気になる人、お勧めです。