【Filmistaan】 |
監督:ニティン・カッカル Nitin Kakkar 出演:シャリーブ・ハーシュミー、イナームルハク、ゴーパル・ダット
トレイラー
ストーリー
**************************************************
ムンバイに住む俳優志望のサニー(シャリーブ・ハーシュミー)は熱狂的なボリウッド映画ファン。映画出演を目指してオーディションを受け続けるも落ちてばかり。ある日、アルバイトとして引き受けた外国からのドキュメンタリー映画撮影隊のアシスタント・ディレクターの仕事でラージャスターンの砂漠地方に行くことに。
だが、途中サニーはインドとパキスタンの国境付近で活動するゲリラに誘拐されてしまう。本当は撮影隊の外国人を狙ったはずが、間違えられたのだった。サニーはパキスタンの農村に連れていかれ、そこで元のターゲットを再度誘拐できるまで、拘束されることになる。
インド映画の影響はサニーが拘束された農村にも及んでいた。村の住人で海賊版のインド映画VCDを商うメフムード(クムード・ミシュラー)が戻ってきてからは、毎夜インド映画上映会が開かれる。インドに戻りたい想いが募りつつも、映画絡みの話では大はしゃぎするサニー。やがて、村人とサニーの間に交流が始まる。それはやがてサニーと彼を捉えているゲリラとの関係に影響を及ぼし始める。
**************************************************
2012年国家映画賞で最優秀ヒンディー語作品賞を受賞した作品。主演のシャリーブ・ハーシュミーは【Jab Tak Hai Jaan】(2012)でシャールク・カーン演じるサマルのロンドンでの同居人役をやっています。ただし、【Filmistaan】は2012年10月の韓国・釜山国際映画祭で上映されているため、こちらのほうが先の出演です。
作品を観ると、どうしてこんなに良く出来ていて面白い作品が2年近くも公開されなかったのかと思います。確かにスターは出演していませんし、舞台も主人公が拘束される農村からほとんど動かないという地味な作品です。しかし、おバカながら愛すべき主人公のキャラクターや国境をも超える映画の力を素直に表現した素晴らしい小品でした。
主人公のサニーは映画バカで俳優としてはまったくダメな、いわば「負け犬」キャラ。誘拐されてパキスタンの農村に拘束されても、特に抵抗したり、反抗したりもしません。村人たちがやっている映画の上映をどうしても観させてくれとゲリラたちに頼む始末。ただし、そんな主人公が一度だけ本気でゲリラたちに盾突く場面があります。やはり映画絡みなのですが、普段がおバカだけに、そのとき主人公が示す映画愛には感動します。さらに、映画などはインドのもたらす悪影響だとして頑なに拒むゲリラたちに対する「武器」となるのもやはり映画です。
実はシリアスなテーマをコメディで上手くくるんだ作品で、映画好きは絶対に楽しめると思います。また、実際のボリウッド作品を使った場面、小ネタもたくさんあって、インド映画好きはさらに楽しめます。
音楽
作品中で音楽はさほど目立ちませんが、楽しい曲があります。
「Uddari」
「Bebaak」
シャリーブ・ハーシュミー 熱狂的インド映画ファンのサニー役
出演履歴によると、【Slumdog Millionaire】(2008)に端役で出演しているそうですが、まったく記憶にありません。【Jab Tak Hai Jaan】(2012)での主人公サマルの友人役はなかなか印象に残っています。しかし、同じころに主役をやっているとは知りませんでした。どちらの作品でもそうでしたが、お人好しの役が上手い人です。まあ、下っ端のギャングなどもできそうですが。
村人がインド映画上映会(といってもラップトップを置いて、直接VCDを再生するというもの)で上映される作品は、現代の古典といえる名作2本。最初の晩は【Kuch Kuch Hota Hai】(1997)。続く晩はサルマーンの出世作【Maine Pyar Kiya】(1989)。このときは肝心の場面でPCかディスクの調子がおかしくなり、音声がなくなってしまいます。そこを主人公のサニーは驚異的な能力で・・・
【Maine Pyar Kiya】(1989)
上のポスターもめちゃめちゃ凝ってます。よく見ると、「タークル・サーブの腕」が飾られています。【Sholay】(1975)を観た人なら意味がわかるはず。
主人公の熱狂的インド映画ファンぶりに笑ってしまうものの、どこかで共感してしまう作品。映画好きは必見です。
【Filmistaan】
極限のMPK、KKHHの上映会の様子を見たい人、熱狂的映画ファンのおバカぶりを笑いたい人、映画好きの熱さに共感したい人、お勧めです。