【Himmatwala】 |
監督:サージド・カーン Sajid Khan 出演:アジャイ・デーヴガン、タマンナー、パレーシュ・ラワル、マヘーシュ・マンジュレカル、ソーナークシー・シンハー(アイテム・ソング)、ザリーナー・ワハーブ、アディティヤーン・スーマン
トレイラー
ストーリー
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田舎の村ラームナガルの駅に一人の男が降り立った。その名はラヴィ(アジャイ・デーヴガン)。子供の頃、ある出来事から村を逃げ出し、それ以来の帰郷だった。だが、母(ザリーナー・ワハーブ)や妹は村はずれに隠れるようにして、貧しい暮らしをしていた。
すべては村の大地主シェール・シン(マヘーシュ・マンジュレカル)が元凶だった。村を思いのままに支配するシェール・シンは邪魔な存在だったラヴィの父を自殺に追い込んだのだった。幼いながらラヴィはシェール・シンを殺そうとして失敗、村から逃げ出した。
今もなおシェール・シンの絶対的支配が続くラームナガルに立ち入ることは、「勇気ある者(ヒンマットワーラー)」にしかできないことだった。ラヴィは村に入り、シェール・シンへの復讐の機会をうかがう。
そんなとき、ラームナガルにシェール・シンの一人娘レーカー(タマンナー)が帰ってきた。父の性格を受け継ぎ、貧乏人は嫌いというレーカー。最初はラヴィを目の仇にするが・・・。
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ジーテンドラ、シュリーデーヴィー主演で当時大ヒットになった【Himmatwala】(1983)のリメイク。【Housefull】シリーズなどヒットメーカーのサージド・カーン監督で、アジャイ・デーヴガン主演。さらに、オリジナルのヒット曲「Naino Mein Sapna」などを上手く再現していたのもあって、当然ながら期待していました。
しかし、作品としては、正直なところ、かなりがっかりな出来でした。昔の作品をリメイクするのはいいとしても、どのような方向でリメイクするのかがまったくブレたままでした。
まずは時代設定。昔の作品をリメイクする場合、設定はそのままに、時代だけ現代に持ってくるという手があります。たとえば、アミターブ・バッチャン主演【Don】(1978)のリメイク。あら筋や人間関係はオリジナルでも、海外ロケにより舞台が大きく広がり、ハイテクの武器や道具も登場します。出来上がったシャールク・カーン主演の【Don】(2006)はオリジナルを踏襲しつつも、それとは違った個性を持った傑作になりました。これに対し【Himmatwala】は時代設定をオリジナルと同じ(1983年)にしています。それ自体が悪いわけではないですが、かなり作り手の自由度が失われた気がします。
オリジナルを忠実に再現するのか、それとも一種のパロティにするのかも中途半端。サージド・カーン監督のいつものコメディ路線で行くにしては、昔風のメロドラマが重く出過ぎて軽さがありません。オリジナルにあるので仕方ないかもしれませんが、現代のコメディでマジで嫁イジメとかしてどうするの?という気がしました。
神さまの像にお祈りすると、神さまが聞き届け、ピンチから救ってくれたりなど、当時のインド映画では当たり前だったことも、少なくとも同じ形では今は廃れているわけです。それを明らかにパロティとわかる形ではなくやろうとしたら、上手くいくわけありません。
外見的には、アジャイ・デーヴガンやタマンナーは80年代に合ってはいましたが、作品全体は特に80年代をリバイバルさせた感じはありませんでした。
今回は南インド映画のリメイクではありませんが、アクション・シーンなどは明らかにそっち系。さすがに観客も飽きてきているのではないでしょうか。アジャイは【Son of Sardaar】(2012)から連続だし、その間にサルマーンやアクシャイも同じようなのをやっているわけで、少し多すぎます。もちろん、いきなりこのブームが下火になることはないでしょうが、そろそろ淘汰が始まるかもしれません。
音楽
音楽はサージド=ワージド。オリジナルからのカバーが2曲。その他の曲もいろいろとみどころ、話題性があって良かったです。
「Naino Mein Sapna」
このセットの再現は見事。華やかで素敵です。
オリジナルについては
ポポッポーのお気楽インド映画
「カバー・パクり(17)」
http://popoppoo.exblog.jp/18711050/
「Dhoka Dhoka」
「Sheila Ki Jawani」のスニディ・チャウハーンと、「Munni Badnaam Hui」のマムター・シャルマーというアイテム・ソングの名手が夢の共演。
「Thank God It’s Friday」
ソーナークシー・シンハーはアイテム・ガールの新境地?ディスコ・ソングに挑戦です。作品全体にもこんな余裕が欲しかったです。
アジャイ・デーヴガン 生まれ故郷に戻ったラヴィ役
今のボリウッドで一番80年代に似合う人でしょう(80年代からやっていたようにみえますが、デビューは1991年の【Phool Aur Kaante】)。というわけで、キャストとしては最適なのですが、作品としてはいまいち。しかし、作品がヒットしてもフロップ(【Rascals】(2011)とか【Tezz】(2012))になっても淡々として次の作品に向かうところがこの人のいいところ。次に期待しましょう。
タマンナー シェール・シンの娘レーカー役
タミル、テルグ映画のトップ女優タマンナーがついにボリウッドに登場。とはいっても、デビューはヒンディー映画【Chand Sa Roshan Chehra】(2005)です。さすがにそこらの新人には真似できない大物感があるし、ダンスも表情豊かで楽しいです(さすがに踊りをオリジナルのシュリーデーヴィーと比べてはいけません)。また、なんとなく予想はしていましたが、序盤の「性格悪い」部分は特に上手かった。いや、別に深い意味はありません。あと音楽シーンはヘソ出しが多い。南時代の写真を見てもそんなのが多いので、きっとお腹に自信があるのでしょう。
サンジャイ・マンジュレカル 村の支配者シェール・シン役
上手い俳優さんですし、悪役でコメディもという意味では非常にいいのですが、どっち付かずになったという意味で、作品の出来を象徴しています。確かに昔はすごい悪役なのにコメディ・シーンもやってしまうというのは多かったのですが、最近ではそういうのはウケなくなってきているのではないでしょうか。
リメイク
南インド映画のヒンディー・リメイクが花盛りなのに比べ、昔の作品のリメイクでは、先にあげた【Don】などを除き、あまりヒットが出ていない気がします。【Agent Vinod】(2012)(これはリメイクというより名前だけという気も)も大コケしました。近く、80年代のコメディ【Chasme Baddoor】(1981)をダヴィド・ダワン監督がリメイクした【Chasme Buddoor】が公開されます。また、アミターブ・バッチャン主演の出世作【Zanzeer】(1973)をテルグ映画俳優のラーム・チャラン・テージャ、プリヤンカー・チョープラーでリメイクされます。はたしてどうなるのでしょうか。
【Himmatwala】、音楽シーンなど部分的には見るべきものがあるものの、作品としてはいただけません。リメイクだからというわけではないですが、オリジナリティのあるものを作ってやろうと言う気持ちが伝わってきませんでした。どんな監督でもヒットを続けるのは難しいものだと思いました。
【Himmatwala】
80年代風の適度にダサいアジャイを見たい人、トラとじゃれ合うアジャイを見たい人、性格悪い役のタマンナーを見たい人、華やかな音楽シーンを楽しみたい人、お勧めです。