【Mere Dad Ki Maruti】 |
監督:アーシマー・チッバル Ashima Chibber 出演:サーキブ・サリーム、レーハー・チャクラヴァルティ、ラーム・カプール、ラヴィ・キッシャン
トレイラー
ストーリー
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チャンディーガルに住むサミール・クッラル(サーキブ・サリーム)は大学生。勉強はそこそこに毎日楽しく遊び暮らす、ごく普通の青年。だが、癇癪持ちの父(ラーム・カプール)にはまったく逆らえない。そんなクッラル家は今、間近に迫ったサミールの姉の結婚式で大忙し。そんなとき、クッラル家にマルチ・スズキの新車が届く。父が、娘婿への結婚祝いとして送るために注文したものだった。
サミールは、あるきっかけから大学一の美女ジャズリーン(レーハー・チャクラヴァルティ)とデートの約束を取り付けた。だが、デートに使う車がない。そこでサミールが思いついたのは家に置いてあるマルチの新車。どうせ結婚式までは使わないと、一晩だけ借り出すことに。
新車のおかけもあって、デートは大成功。無事にジャズリーンを家まで送り届けたあと、友人に自慢しようと夜の街に繰り出す。だが、ディスコを出てくると、なんと車は消えていた!父の怒った顔が目に浮かぶサミール。さあ、どうする?
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ヤシュ・ラージ・フィルムズの若者向けバナー「Y-Films」の第3弾。第1弾の【Luv Ka The End】(2011)は、ネットのモテ男コンテストで勝つために利用されてしまった女の子がその男に仕返しをするという話。第2弾【Mujhse Fraaandship Karoge】(2011)は、主人公の男が高嶺の花の女性に、フェースブックで知り合いのイケメンになりすましてアプローチする話。若者の新しいライフスタイルをテーマにしているところがユニークで興味深いところです。
【Luv Ka The End】(2011)
【Mujhse Fraaandship Karoge】(2011)
「ポポッポーのお気楽インド映画」
【Mujhse Fraaandship Karoge】(2011)
http://popoppoo.exblog.jp/16700503/
今作のタイトル【Mere Dad Ki Maruti】は訳すと「僕の父さんのマルチ」。「マルチ」はインド最大の自動車メーカーの「マルチ・スズキ Maruti Suzuki」のことで、ここではその車を指しています。マルチ・スズキは、日本のスズキ自動車とインドのマルチ社との合弁会社です。今回、制作者がマルチ・スズキに話を持ちかけ、制作費に5千万ルピー、宣伝広告費に2千万ルピーしてもらったそうです。作品の予算が1億ルピーとのことなので、いい商売です。
さて、作品のほうはというと、これが面白い。娯楽作としては上出来です。ストーリーの「家族(恋人)の大切なものを借り出して、なくした(壊した)」というのは、わりとありそうです。お金を持ち出して、ギャンブルに負けてすってしまうとか。しかし、今回はそれが車。どうやったって、ごまかしようがありません。そして、おっかない父親と、迫る結婚式。結局、あてもなく街を探し回ると同時に、なんとかごまかす策がないかと頭をひねります。で、だんだんと話が大きくなっていき、という具合。数日後に迫った結婚式までに車をなんとかしないといけないというのがタイムリミットになって、話のテンポが速く、飽きさせません。登場人物の会話も生き生きしています。ただし、かなり聞きづらいですが。
作品の舞台はパンジャーブ州とハリヤナ州の共通の州都であるチャンディーガル。パンジャーブといえば、派手な結婚式をすることで有名ですが、今回は主人公の姉の結婚式の準備と共に話が進みます。もちろん、主人公はそれどころじゃありませんが。そして、最後は結婚式でエンディングになります。が、そのとき車は?
音楽
パンジャービー音楽が中心。
「Haaay!」
「Punjabiyaan Di Battery」
サーキブ・サリーム 車を失くしたサミール役
デビュー作【Mujhse Fraandship Karoge】でも大学生役だったサーキブ。前作では器用ながらやや小粒かなあと思いましたが、今作では役者としての成長ぶりを見せています。大学生が大学生らしくないボリウッドにあっては、本当の大学生風ができる貴重な存在になりつつあるかもしれません。若者風でまったく貫禄はありませんが、芸達者な感じで、これからもいろいろな役ができそうで楽しみです。ところで、サーキブは姉が【Gangs of Wasseypur】(2012)でデビューしたフマー・クレシー。
姉のフマー・クレシー。姉弟は仲がいいようです。
ラーム・カプール おっかない父テージュ役
「俗物」を絵に描いたような役が上手い人です。もともとテレビが中心でしたが、映画にもちょくちょく顔を出しています。【Udaan】(2010)ではいい人でしたが、【Agent Vinod】(2012)とか、【Ekk Main Ek Tu】(2012)とか、だいたいは悪役かイヤな奴。今回はお得意の俗物の父親役。ところで、今回初めて知ったのですが、ラーム・カプール、ミーラー・ナイール監督の【Monsoon Wedding】(2001)にちょっとだけ出演していたんですね。
【Monsoon Wedding】「Chunari Chunari」
最初に飛び入りする男(1:50~)が・・・!?細い!
http://www.youtube.com/watch?v=RUCiGqAHx4g
レーハー・チャクラヴァルティ 大学一の美女ジャズリーン役
MTVのVJで、テルグ映画【Tuneega Tuneega】(2012)でデビューしています。ルックス的には「評判の美女」でもいいと思いますが、演技はかなり下手。「演技が大げさ」とか「セリフ回しが」とかいう問題ではなく、総合的に演技になってません。本人は「もっと映画をやってみたい」と言っていましたが、もうちょっと演技力付けないと、飾り物としての役しかないような気がします。
アーシマー・チッバルは今作がデビューの女性監督。ボリウッドの女性監督といえば、ファラー・カーンが有名ですが、【Zindagi Na Milegi Dobara】(2011)のゾーヤー・アクタル、【Talaash】(2012)のリーマ・カーグティ、【English Vinglish】(2012)のガウリ・シンデーと優れた女性監督が続々と出てきています。
【Mere Dad Ki Maruti】は、低予算でも、大物は出ていなくても、楽しめる映画は作れるという見本みたいな作品でした。
【Mere Dad Ki Maruti】
「Y-Films」によるボリウッドの新しい試みを確かめたい人、サーキブ君の活躍を見たい人、サーキブ君とフマー姉さんを比べてみたい人、お勧めです。