【Mujhse Fraaandship Karoge】 |
監督:ヌプル・アシュタナ Nupur Ashtana 出演:サーキブ・サリーム、サバー・アーザード、ニシャント・ダヒヤ、ターラー・デスーザ
トレイラー
ストーリー
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ヴィシャール(サーキブ・サリーム)は典型的ないまどきの大学生。さほど女の子にモテるわけでもなく、今日も親友とつるんでネットで遊んでいる。その兄貴分のラーフル(ニシャント・ダヒヤ)はロックスターの人気者。コンサートはファンで一杯になる。
ヴィシャールと同じ大学のプリティー(サバー・アーザード)は男嫌いで有名。回りにはロクな男がいないと思っている。写真部の部長だが、男子の入部をことごとく断るため、部員は女ばかり。プリティーと同居でデザイン学校に通うマルヴィカ(ターラー・デスーザ)はゴージャスな美人。
ある日、コンサートで会ったのがきっかけでラーフルがマルヴィカにフェースブックで友達申請する。さして興味のないマルヴィカがいない隙に、プリティーが申請を受け入れてしまう。ラーフルと知り合いになったとはしゃぐプリティー。しかし、それは、コンサートで一目ぼれしたマルヴィカに近づきたいばかりにラーフルになりすましたヴィシャールだった。お互いに本当の相手を知らないまま、2人はチャットを通じて仲良くなっていく。
大学の25年周年記念の催しで、大学がきっかけで結婚した過去のカップルを取材することになったヴィシャールとプリティー。最初はいがみ合いながらも、意外に気が合う2人。特にプリティーはヴィシャールのことが気になり始める。そしてラーフルとマルヴィカも本当のカップルに。でも、ラーフルは?
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名門プロダクションのヤッシュ・ラージ・フィルムが若者向けバナーとして始めた「Y-Films」。【Mujhse Fraaandship Karoge】(以下、MFKと略)はその第2作目。第1作目のシュラッダー・カプール主演【Luv Ka The End】(2011)が意外にも面白かったので、今回も期待していました。
「Y-Films」の「若者向け」というコンセプトがなぜ珍しいかというと、これまでボリウッド映画には本当の意味で高校生や大学生が主人公となる映画が少なかったからです。一つには、そうしたマーケットが発展していないからなのですが、出てくる大学生といえばこんな人たちでした。
MFKはフェースブックを通じた恋愛モノ。タイトルはフェースブックで友人申請するときのネット用語だそうです(実際どこまで使われているかは知りません)。インターネット、携帯電話、テレビゲームなどのネタが多く含まれています。冒頭ではいきなり「ネカマ(ネットオカマ)」のエピソード。
しかし、こうした新しい設定にも関わらず、MFKはボリウッドのオーソドックスな恋愛モノを踏襲しており、恋愛モノから外れてぶっ飛んでいった第1弾【Luv Ka The End】に比べるとややおとなしめです。
MFKの話のミソである「なりすまし」。これなどは、メディアこそ違えど、サンジャイ・ダット、サルマーン・カーン出演のヒット作【Saajan】(1991)に通じるところがあります。【Saajan】は、サンジャイが書いた詩のファンだという女性(マードゥリー・ディクシト)がやってくるが、サンジャイはサルマーンを作者として応対させる。そして、サルマーンとマードゥリーが恋愛関係に・・・という話。今ならフェースブックでできそうです。
【Saajan】(1991)
むしろ、MFKはそうした「若者向け」の小道具ではなく、登場人物のキャラクター、若手俳優の演技、会話などのフレッシュさが楽しめます。現代の若者を上手く描けているかどうかは、観る人によって意見が分かれるかもしれませんが、少なくとも従来の大人目線からの若者像を打ち破ろうとしていることは分かります。もっとも、会話がフレッシュすぎてヒンディー語が聞き取りにくいところがあったりしますが。
音楽はポップス系で平均的。しかし、エンディングのこの曲は面白いです。
「Har Saans Mein」
MFKは女優2人に注目。プリティー役のサバー・アーザードとマルヴィカ役のターラー・デスーザ。どちらもMFKが2作目ですが、主役級は初めて。タイプはまるで違いますが、さすがにヤッシュ・ラージ・フィルムが選んだだけあります。なかなか光っていました。今後が楽しみ。
サバー・アーザード 男嫌い?プリティー役
周りからは、男アレルギーと言われるプリティー役のサバー・アーザード。決してすごい美人ではありませんが(ゴメン・・)、非常に表情が豊かで、内側からあふれるエネルギーがあります。ヴィシャールと派手に喧嘩したり、グシャグシャに泣いたりと大活躍でした。
【Halla Bol】(2008)などのモデルとなったストリート演劇で知られる劇作家サフダル・ハーシュミーの姪。デビューはイルファーン・カーン、ラーフル・ボースらが出演の【Dil Kabaddi】(2009)。ラーフル・ボースの教え子ながら、あやうく浮気しそうになる女の子の役。ちょっとの出演でしたが、タージマハル・ホテル前でのデートシーンなど、印象に残っています。
ヤッシュ・ラージ・フィルムには、今回MFK制作のアディティヤー・チョープラーの初監督作品【Diwale Dulhania Le Jayenge】(1995)で、カージョルを出世させたという経歴があります。彼女も決してすごい美人ではないですが(ゴメン・・)、のちに大女優になりました。サバーはカージョルやコンコナー(ゴメン・・)を目指してほしいと思います。
ターラー・デスーザ 誰もが振り向く美人のマルヴィカー役
ゴージャス美人のマルヴィカ―役のターラー・デスーザ、役のとおり、なかなかの美人です。おそらく今作の顔見せとして出演したデビューの【Mere Brother Ki Dulhan】(2011)では、「兄」アリー・ザファルの元カノ役でした。カトリーナと並んで踊る曲では、さすがにカトリーナの貫禄にはかないませんが、踊っても映えます。今回はちょっと損な役回りになってしまいましたが、こちらは本格的ヒロインの可能性があります。あ、それから、声もセクシーです。
サーキブ・サリーム ふつうの大学生、ヴィシャール役
女性陣がこれだけ目立ってしまうと、ちょっと苦しい男性陣。今作がデビューのサーキブ。器用ですが、やや小粒な印象。まだ個性を出しているとは言えず、正直なところ、単独で見ると【Always Kabhi Kabhi】のアリー・ファザル、【Luv Ka The End】のターハー・シャーと区別がつかないと思います。もちろん、まだデビューしたばかりですから、まだまだこれからです。
ニシャント・ダヒヤ ハンサムなロックスターのラーフル役
こちらはハンサムですが、それだけってことになりそう。もっと個性的な役で味が出せるかどうか。
「Y-Films」の挑戦、非常に面白い試みで応援したいですが、少なくとも現状では限界がある気がします。第1弾の【Luv Ka The End】もそうですが、若者を描くといっても、インターネットに代表される若者は都市のみ。都市ではそうした若者の観客層は育っているかもしれませんが、地方では男性の場合、オヤジと若者が分化されておらず、若い女性だけで映画にいける層もほとんどいないのが現状です。また、都市の若者にしても、こうした映画が、たとえばサルマーン作品と競合する場合には後者に行くわけで、若者を独占できるわけではありません。しばらくは観客の動向をにらみながら、手探りが続くでしょう。
メインストリームの作品からみれば、軽薄もいいところの作品。しかし、実験的作品として、フレッシュさを楽しむ、あるいは、もしかすると将来流行るものへの先行投資として楽しむのがいいかもしれません。
【Mujhse Fraaandship Karoge】
「Y-Films」のコンセプトが面白いと思う人、インドの若者のトレンドが知りたい人、有望新人の発掘をしたい人、お勧めです。
おまけ
Fraaadship
【Chance Pe Dance】(2010)でジェネリアが、シャーヒドに「私と友達になりたいの?」
と聞くところで(この発音で)言ってました。インド人はなんか面白く聞こえるようです。