2010年 12月 04日
【Phas Gaye Re Obama】 |
監督:スバシュ・カプール Subhash Kapoor 出演:ラジャット・カプール、ネハー・デュピヤー、アモール・グプテー、サンジャイ・ミシュラ
トレイラー
ストーリー
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アメリカでビジネスマンとして成功していたオーム・シャーストリー(ラジャット・カプール)。だが、全世界を襲った金融危機のあおりで会社は倒産、借金を背負い、あと1月以内に返済できなければ家を立ち退かなければならない。最後の手段として、シャーストリーはインドの実家の家屋を売ることで借金を返済することを思いつき、インドへと向かう。
シャーストリーはアメリカ帰りということで実家の村の人々から大歓迎を受けるが、同じく不況で立ち行かなくなった地元のギャングのボス(サンジャイ・ミシュラ)に誘拐される。身代金を払えないシャーストリーは代わりに「アイデア」を提供して協力することになる。やがて、事件は女ギャングのムンニ(ネハー・デュピヤー)や州大臣を巻き込んで拡がっていく。
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基本的な着想はなかなか面白いです。アメリカで失敗してインドに戻ったNRI(非居住インド人)の男が金持ちだと思われて誘拐される。インド人のアメリカへの憧れや誤解への風刺も効いています。しかし、誘拐事件が次第に大事になっていく展開が同じパターンの繰り返しで、ややテンポが悪く感じられました。いっぽう、ラストはスマートにまとめられており、こういった作品にありがちなラストでのがっかり感はまったくありません。
インド人がアメリカに抱く感情はまさに「アンビバレント」。世界中で威張っているアメリカを嫌いながら、アメリカが提供するチャンスには強烈な憧れがあります。もちろん、現代ではどこの国も多かれ少なかれ同じ感情を抱いているのかもしれませんが、古くからの移民はもちろんのことIT技術者から大学にあふれるインド人留学生まで、実際アメリカとの関係が深いインドでは特にそうした複雑な感情が強い気がします。
しかし、多くのインド人には、アメリカについてごくわずかな、しかも偏った知識しかありません。【Phas Gaye Re Obama】はそんなインド人のアメリカ観を風刺しています。アメリカ帰りのシャーストリーを誘拐するのは、テレビでオバマ大統領を見て「これ誰だ?」と言っているような地元のギャング。そしてアメリカ帰りというだけで金持ちだと思い込み、金がないというシャーストリーの話をなかなか信じようとはしません。誘拐犯の一人はアメリカに行くため英語学校(この先生が笑えます)で勉強している男です。さらに、誘拐がビジネスになっているような地域であるにも関わらず(「身代金受け渡し所」が出てきます!)、NRIが誘拐されたとなるととたんに大事件になります。
事件のディテールはさほど良く出来ているわけではないものの、地元ギャングのサンジャイ・ミシュラ、女「ガッバル・シン」のネハー・デュピヤー、野心家の州議会議員のアモール・グプテーまで、次から次へと出てくるボス、ボスのボス、そのまたボスはなかなか個性的でした。
俳優陣はボリウッドの小規模作品ではお馴染みのラジャット・カプール一家が中心
ラジャット・カプール (金持ちと思われ誘拐されるシャーストリー役)
今作は自ら主役のラジャット・カプール。元々ビジネスマンのような印象の人なので、今作の役はピッタリ。もっとも破産したビジネスマンですが。誘拐されて陥ったピンチを頭脳で切り抜けていきます。
サンジャイ・ミシュラ (地元ギャングのボス役)
ちょっとヘンな人の役が多い人です。今作は真面目といえば真面目な田舎のギャング。しかし、アメリカの事などまるで知らないため、アメリカ帰りの主人公を誘拐してもズレたことばかり。結局いつものヘンな人になってます。
ネハー・デュピヤー (女「ガッバル・シン」のムンニ役)
【Action Replayy】ではアイシュワリヤーの友人でキャピキャピした役でしたが、今作はうって変わって女ギャング集団を率いる女「ガッバル・シン」の役。メイクさん、衣装さんが頑張って悪くはないのですが、まだまだ上品で、やや迫力不足。もちろんコメディなので本物のガッバル・シン風が出てきては困るのですが、もう少しブチ切れた感じ(銃を撃ちまくるとか)でも良かったかと思います。ちなみに、率いる女ギャングのメンバーの名前はカリーナー、ラーニー、マードゥリー、プリティー(笑)。
本物?のガッバル・シン 【Sholay】(1975)より
アモール・グプテー (州首相の座を狙う大臣役)
【Kaminey】(2009)で、ギャングから転進した政治家の役で、かなりのアクの強さを発揮していました。今作も政治家役。悪徳政治家が似合います。前にも書きましたが、この人が【Taare Zameen Par】(2007)の脚本を書き、監督中の作品を抱えているとは信じられません。ボリウッドに多い才能ある悪役俳優です。
軽い気持ち観るならば、まあまあの作品。あまり期待し過ぎると外れます。
【Phas Gaye Re Obama】
「オバマはそれほど関係ないじゃないか!」と怒らない人、変身したネハーを見たい人、ラジャット・カプールの映画を応援している人、お勧めです。
by madanaibolly
| 2010-12-04 02:52
| レビュー