2010年 02月 28日
【Teen Patti】 |
アミターブ演じる数学者が自分の理論を応用してカジノに挑むというスリラーです。【Gandhi】のベン・キングズレーが出演することも話題になっています。
監督:リーナ・ヤーダヴ Leena Yadav. 出演:アミターブ・バッチャン、ベン・キングズレー、R・マーダヴァン、ライマ・セーン、ドゥルヴ・ガネーシュ Dhuruv Ganesh(新人)、シッダールタ・ケール Siddharth Kher (新人)、ヴァイバヴ・タルワール Vaibhav Talwar (新人)、シュラッダー・カプール Shraddha Kapoor (新人)、ほかにゲスト出演でアジャイ・デーヴガン、ティヌ・アーナンド、シャクティ・カプール、ジャッキー・シュロフ。
監督のリーナ・ヤーダヴはアイシュワリヤ、サンジャイ・ダットが出演した【Shabd】(2005)を撮った女性監督です。今回デビューのシュラッダー・カプールはボリウッドきってのコメディ/悪役俳優シャクティ・カプールの娘です。
トレーラー
ストーリー(重要なネタバレはありません)
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ヴェンカテーシュ・スブラマニヤヤン(アミターブ・バッチャン)は数学者。これまで大きな業績もなく、勤める大学はあと数年で定年というところ。ある日、ヴェンカテーシュは自分の理論をトランプのゲーム「ティーン・パッティ(3枚のカード)」に応用し、その必勝法を見出した。若い同僚のシャンタヌ(R・マーダヴァン)の勧めで、その必勝法を実際のカジノで試してみることに。実験にはビクラム(ドゥルヴ・カネーシュ)、アパルナ(シュラッダー・カプール)ら、教え子数人も加わった。カジノでは大勝し、ヴェンカテーシュの理論の正しさが証明された。しかし、大金を手にした彼らは、ヴェンカテーシュの理論を使ってさらに大金を得ることを望むようになる。やがて、彼らの人間関係にもきしみが。
そして、ヴェンカテーシュに脅迫電話が。メンバーの安全と引き換えに儲けの半分をよこせという。メンバーの誰かの仕業か?それとも?
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インドといえば「数学に強い国」というイメージがあります。0を発見したのはインドだということはよく知られているし、現代ではIT大国で、チェスの世界チャンピオンを輩出するなど、連想を裏付ける要素はたくさんあります。「インド式計算法」などというのが流行ったこともありました。また、数学とギャンブルは切っても切れない関係にあります。ギャンブルの多くの現象は統計学を用いて記述することができます(例えば、ルーレットの赤に賭けて当たる確率は約1/2、正確には18/38[または18/37])。【Teen Patti】はそんなインド、数学、ギャンブルを結びつけたスリラーです。
設定としては魅力的ですが、作品ではそれを生かしきれていませんでした。直接の原因は脚本の弱さですが、その背景には作品の全体的な方向性を定められなかったことがあります。インド映画の娯楽作品にありがちな、娯楽に徹しきれず中途半端にという失敗が【Teen Patti】でも見られます。
前半、ヴェンカテーシュがゲームの必勝法を見つけ、教え子たちとともに危険を背負いながらカジノで勝負するところはまずまず見られます。しかし、後半、金を手にしたことから生じる人間関係のきしみ、メンバー間での仲たがいがだらだらと続き、正直退屈しました。そのため、脅迫者は誰なのか?というせっかくの謎かけも印象の薄いものなりました。最後には学問はどうあるべきかのような学問論まで飛び出します。明らかに余計なものが多すぎです。もっと純粋にスリラーを要素を突き詰めたほうがまとまったものになったでしょう。
数学者の頭の中を映像化するのはそもそも難しいのですが、難解そうな数式をCGで流すという方法が使われています。どこかで見た感じがします。カジノでの勝負シーンは迫力が欠けていました。必勝法がどんなものか明らかでないのは当然としても(実際は存在しないので)、ちょこちょこっと仲間内で合図をして、はい勝ちましたなので面白みがありません。ただ、アジャイ・デーヴガンがテーブルに座ったときだけは雰囲気が違いました。
ところで、彼らがプレーするトランプゲームは「ティーン・パッティ(3枚のカード)」。インドが起源で現在は東南アジアで広く行われているそうです。ルールを知らなくても作品は楽しめますが、3枚のカードでするポーカーと考えればいいでしょう。ペア、スリーカード、同一マーク、連番などの役を作るゲームで、最も高い役を作ったプレイヤーが勝ちというゲームです。手持ちの役とは別に、掛け金を上げていくなかで駆け引きが行われるのもポーカーと同じです。
監督のリーナ・ヤーダヴは、ボリウッドではまだ少ない女性監督です。ほかに、【Om Shanti Om】(2007)のファラー・カーン、【Honeymoon Travel Pvt. Ltd】(2007)のリーマ・カグティ Reema Kagti【Luck By Chance】(2009)のゾーヤー・アクタルなどがすぐに思い浮かびます。今後、アーミル・カーンの奥様のキラン・ラーオが【Dhobi Ghaat】で監督デビューの予定です。
俳優陣、さすがにアミターブとマーダヴァンは格が違いました。新人で固められたその他のチームメンバーは、個々人はそれほど悪いとは言えないものの、全体として重みに欠け、かといって脚本のせいもあり軽快さも見られませんでした。
アミターブ・バッチャン (カジノでの必勝法を見出す数学者ヴェンカテーシュ役)
ちょっとマッド・サイエンティストが入った数学者役で、アミターブにはお似合いの役です。しかし、あまり役としての深みはなかった気がします。
ベン・キングズレー (ケンブリッジ大学の数学教授トラヒテンバーグ役)
イギリスの数学界の大物。ヴェンカテーシュを突然イギリスに呼び出します。ストーリーはヴェンカテーシュが彼に回想するという形をとっています。話題の出演ですが、役としてはゲスト出演程度でした。そのくせ、で、若い頃マジシャンンから数学者に転向したという変わったキャリアを持つ、などという設定だけは凝ってます。
R・マーダヴァン(若き数学教授シャンタヌ役)
【3 Idiots】での好演で人気急上昇のマーダヴァン。今回は【3 Idiots】とは打って変わり、善人か悪人かよくわからない野心家の若手数学教授役でした。
シュラッダー・カプール(ヴェンカテーシュの教え子でチームの紅一点アパルナ役)
シャクティ・カプールの娘のデビューです。というより、こんな娘がいたなんて。なかなか可愛らしく、「近所の女の子」タイプの典型です。今回もふつうの大学生役です。演技も最初としては十分でしょう。童顔で、すぐにグラマラスな役は無理そうですが、今回もカジノではドレス姿、サリー姿など、そこそこ変身できていました。こういった女優さんの需要は増えているので、うまく伸びれば将来楽しみです。ここでは推しておきます。
ゲスト出演のシャクティ・カプールとカジノテーブルを囲むことになったとき、笑った人はちゃんと予習をしてきた人です。
【Teen Patti】
ギャンブルの必勝法を夢見たことがある人、マーダヴァンといえば【3 Idiots】のイメージしかないという人、シュラッダー・カプールを見てみたい人(もしくはシャクティ・カプールのファン)、お勧めです。
by madanaibolly
| 2010-02-28 01:59
| レビュー