【Ishqiya】 |
今週の新作は【Ishqiya】、【Rann】、【Road to Sangam】の3本。いずれもいわゆるボリウッド・メインストリームからはかけ離れた作品ですが、どれも面白そうです。私自身は踊る作品の支持者ではありますが、こういう作品もあるのだと紹介したい作品群です。
制作:ヴィシャール・バルドワジ、監督:アビシェーク・チョウベー Abishek Chaubhey、出演:ナスィールッディーン・シャー、アルシャド・ワールシー、ヴィディヤー・バーラン
【Omkara】(2006)、【Kaminey】(2009)のヴィシャール・バルドワジが制作、バルドワジのもとでスクリーンプレイを担当していたアビーシェーク・チョウベーが初監督です。いわば弟子にあたる監督のもと、バルドワジ自身は本職である音楽監督を担当しています。
トレイラー
ストーリー
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ボスとのいざこざで逃亡を余儀なくされたカルジャン(ナスィールッディーン・シャー)とバッバン(アルシャド・ワールシー)のギャング2人組。2人は逃亡先としてネパール国境近くの村に旧友を訪ねるが、その友人は死んでおり、家には彼の妻のクリシュナ(ヴィディヤー・バーラン)のみ。奇妙な共同生活が始まるが、2人は謎めいたクリシュナに次第に惹かれていく。そして、ある時クリシュナは2人にある計画を持ちかけた。
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すごく濃密な作品でした。独特の張り詰めた空気が最初から最後まで続き、作品が創り出す世界にどっぷりとつかってしまう感じでした。やはり雰囲気的にはバルドワジの【Omkara】や【Kaminey】に似ていますが、こちらは【Ishqiya】のタイトルどおり、官能性に満ちた作品です。
舞台はネパール国境の町ゴーラクプルに近い村。犯罪が渦巻き、銃が物事を決める村という設定です。実際、ネパール国境付近は偽札、武器、ドラッグなどの密輸に絡んだ犯罪の温床であり、こんな村があっても不思議ではないと思わせます。作品中でも、主役の小物ギャングの2人など簡単にビビッてしまうような悪がはびこっています。こんな危ない設定で、逃亡中のギャング2人組と妖しい未亡人の奇妙な三角関係、何も起きないはずがありません。
独特の妖しく美しい世界を作り出したカメラワークも素晴らしいですが、なんといっても見どころは主役の3人。クリシュナに昔の恋人の面影を見て純粋に恋するナスィールッディーン、欲望丸出しのアルシャド、そしてミステリアスなヴィディヤー・バーラン。ほぼ3人のやりとりだけでストーリーが進行していきますが、まったく飽きさせません。最終盤に少しストーリーがゴチャついて分かりにくくなるところもありますが、この際ストーリーは関係ないと思えてしまいます。
作品の雰囲気づくりは徹底しており、冒頭の「作中人物や設定はフィクションで」という注意書きやインターミッション(インターバルですが)もすべてヒンディーでした。
詩的な映像のラスト・シーン(正確にはラスト2シーン)も素敵です。
宣伝で使われていたクリシュナが酔っ払って踊るシーンは本編にはなかったです。宣伝用だったのでしょうか?それともカットされたのでしょうか?
ヴィシャル・バルドワジが音楽監督の音楽は懐メロ(とても把握できませんが)混じりで、これまた作品の雰囲気を盛り上げています。
ナスィールッディーン・シャー (クリシュナに純粋な想いを寄せるカルージャン役)
ギャング役はナスィールッディーンにはお手のものですが、今回はそれに恋愛が加わります。外見はもちろんギャングですが、クリシュナに近づけばドキドキし、離れれば思い出し、とまるで少年のよう。とてもいい感じです。
アルシャド・ワールシー
クリシュナに欲望の炎を燃やすバッバン役
こちらは対照的に肉欲の塊です。いつものコメディとは違った役ですが、危ない雰囲気がよく出ています。メイクのせいもあるのでしょうが、特に目に注目です。
ヴィディヤー・バーラン (謎めいた未亡人クリシュナ役)
やはりヴィディヤー・バーランは女優根性(そして才能も)あります。【Ishqiya】の中心といえるクリシュナ。ときに思い詰めた表情から突然飛び切りの笑顔を見せたします。そしてカルージャンの純愛とバッバンの欲望の両方に応えてしまう、とにかく美しいとともに謎めいた女性です。そんな難しい役にまさに挑んだヴィディヤー。ふつうの意味での悪役ではないですが、悪役賞を取ってほしいです。
それから、今ボリウッドで一番サリーが似合うのではないかというヴィディヤーがほぼ全編サリーです。地味なサリーばかりですが、ときどきとんでもない色香が漂ってきます。とにかく見てください。
完成度の高い優れた作品です。
【Ishqiya】
作品の濃密な時間に浸りたい人、妖しい魅力満点のヴィディヤを見たい人、真面目に危ないアルシャド、純なナスィールッディーンを見たい人、お勧めです。