2010年 01月 15日
【3 Idiots】(2009) |
昨年最高の(そしておそらく歴代最高の)ヒット作ですが、いままで観ることができずにいました。しかし、いまだに新作並みの規模で公開が続いており、これを見逃す手はないと行ってきました。
監督:ラージクマール・ヒラーニー Rajkumar Hirani. 出演:アーミル・カーン、カリーナー・カプール、R・マーダヴァン、シャルマン・ジョーシー、ボーマン・イラーニー、ジャヴェッド・ジャフリー。ラージクマール・ヒラーニー監督は【Munna Bhai M.B.B.S】(2003)、【Rage Raho Munna Bhai】(2006)の監督です。
トレイラー (YouTube)
ストーリー
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久々の再会を果たした大学仲間のファルハン(R・マーダヴァン)とラージュー(シャルマン・ジョーシー)。しかし、そこには仲間3人組のもう1人、ランチョ(アーミル・カーン)の姿はなかった。ランチョがシムラーにいると聞いた2人は友に会うためシムラーに向かう。
時はさかのぼり・・・。工科大学に入学してきたファルハンとラージュー。寮で同室となったランチョはその型破りの発想と行動で、強権的な校長ヴィルー(ボーマン・イラーニー)による学内の支配を次々と打ち破っていった。ランチョはヴィルーの娘のピア(カリーナー・カプール)と恋仲にもなっていたのだが・・・。
シムラーでランチョの家を訪ねたファルハンとラージュー。だがそこでランチョを名乗っていたのは彼らが知るランチョとはまったく別の人物(ジャヴェッド・ジャフリー)。彼はいったい誰だったのか?そして今どこに?
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確かによく出来た作品でした。観た後は十分に満腹といった感じです。もっとも、ここまでのヒットになるほどではない気もしました。
学生生活やキャリア選択といった身近な問題を背景に主人公の3人組の友情を描いた作品で、それぞれ異なる問題を抱える3人が生き生きしているのがこの作品の魅力になっています。また、インドの学生生活がリアルに描かれているのも特徴です。強権的な校長に反抗するという設定は、学校と病院とが異なるとはいえ、ラージクマール・ヒラーニー監督の【Munna Bhai M.B.B.S】と同じです(校長、院長がボーマン・イラーニーというのも同じ)。次々に起きる事件の連続でテンポよく話が進行していきます。
この作品の社会的な背景にはインドの教育問題があります。インドは教育を受けられない人が多数存在するいっぽうで、学生が試験により熾烈な競争にさらされる社会であり、試験の結果はその後の人生に直結します。そのためインドでは成績を苦にした子供の自殺がしばしば報道されています。エリート大学には家族や村の期待を背負って入学し、プレッシャーから精神を病んだり自殺したりする学生が後を絶ちません。また、作品中にも出てきますが、大学では新入生に対するイジメの問題が社会問題にまでなっています。主人公たちが入学する大学はまさにそうした競争社会の縮図といえます。型破りな行動で学内の規律に抵抗するランチョは、インドの教育のありかたに疑問を投げかける存在です。
いつもながら完璧な役作りをしてくるアーミルはもちろんですが、今回は3人組のもう2人、シャルマン・ジョーシーとR・マダヴァンが良かったです。2人は主役も脇役もできますが、今回はでしゃばり過ぎず控えすぎずでアーミルの見事なサポート役でした。そういえば、この3人組は【Rang De Basanti】に揃って出演していました。
回想シーンはおもに学内ですが、2人がランチョを探す現在のシーンはデリーからシムラ、マナーリーの美しい風景が映し出されています。
アーミルの前作【Ghajini】(2008)が緻密な構成だったのに対し、【3 Idiots】は詰め込めるだけ詰め込んだという感じです。それにもかかわらず、まだまだ描き足りないところもありました。例えば、今作品最大の謎になってもおかしくない「ランチョは誰なのか?」は、謎自体はあっさりと解決してしまうし、そのこととと、学生時代のランチョの行動とがどう関わっているのかも明らかではありません。それから「(作品中で)出来すぎ」アーミルについても、これでいいのかなあと思ったりもしました。
俳優陣は文句のつけようがありません。
アーミル・カーン (学内の規律に反抗するランチョ役)
外見は【Ghajini】ほどではないけれど、あいかわらず役作りに凝るアーミルらしいです。意思の強さと純粋さが同居し、さらにちょっとミステリアスというランチョ像が出来上がっています。しかし、高齢学生の自己の記録(【Rang De Basanti】)をまたまた更新ですね。
シャルマン・ジョーシー (家族を養う責任と友情との板ばさみになるラージュー役)
かつてのコメディ専門から、今やしっかりとした演技をする優れた俳優になりました。今回は貧困家庭出身の役。真面目な性格と背負っているものが大きい分、校長からのプレッシャーに最もさらされる役です。
R・マダヴァン
(親の望むエンジニアではなく、密かに写真家になりたいと願っているファルハン役)
軍人(【Rang De Basanti】、【Sikandar】)や頼れる兄貴の役が多いR・マダヴァンですが、今回は気がよく誠実なファルハン役です。物語の語り部にもなっています。
ボーマン・イラーニー (校長ヴィルー役)
ムンナバーイ・シリーズ両方にでているなど、ヒラーニー監督の常連。今回もムンナバーイの院長と同じようなキャラクターでした。ちょっとやりすぎと思うこともしばしば。
カリーナー・カプール (校長の娘ピア役)
今回のカリーナーは出番はそれほど多くはありませんが絶品です。普段はメガネをかけていて、しかもヘルメットをかぶってスクーターに乗ったり、いつものカリーナーに比べると大幅にドレスダウンですが、かえってこちらのほうがいいのかもと思わせる出来でした。こんなカリーナーは【Jab We Met】以来です。カリーナーはあまり肩に力を入れすぎないほうがいいのかなと思いました。アーミルとの踊りのシーンは、コレオも凝っていて面白かったし、なによりカリーナーが楽しそうでした。
「Zoobi Doobi」
これほどのヒットになるのが適当かどうかはともかく、よく出来た作品であることは間違いなく、最初から最後まで楽しめると思います。
【3 Idiots】
インドの典型的な大学生活を見てみたい人、アーミル作品なら間違いないと思う人、ヒット作は信じるという人、メガネのカリーナーに期待という人、お勧めです。
by madanaibolly
| 2010-01-15 04:07
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